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『等価交換の創造無双 〜ジャージ姿の俺、悪意を燃料に最強兵器を創り出す〜』  作者: beck2026
砂漠の国編

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185/189

第185話:大河のギルド長と、査定の均衡

バハル・ズラク支部のギルド長室は、総督府の執務室にも劣らない絢爛豪華な部屋だった。

 磨き上げられた大理石の床、壁に掛けられた数々の高級な魔獣の剥製。その中央にある巨大な黒檀の机の後ろで、この支部の長である金級冒険者、シェイハが深く椅子にもたれかかっていた。

 彼はカイトの提出した『銀級のプレート』と、魔導端末から転送されてきた戦果の写しを交互に見つめ、形の良い眉をひそめた。

「……なるほどな。ガル・ラサームのバルガスが、一発で銀級へ叩き込むわけだ。悪魔族の正規軍二千を、被害ゼロで文字通り蒸発させた、か。俄かには信じがたいが、ギルドの最高暗号通信が嘘を吐くはずもない」

 シェイハは鋭い品定めをするような目で、机の前に立つカイトを見据えた。

 カイトは相変わらず、汚れ一つない漆黒のジャージのポケットに両手を突っ込んだまま、微塵もその威圧に動じる気配はない。

「で、その『怪物の御一行様』が、この大河都市に着くなり、港を牛耳る鉄錨商会を重力魔法でまとめて石畳に圧着し、あろうことか総督府の遅延術式を上書きしてクレーンを完全自動化させた……。お前たち、自分がどれほど恐ろしい不備を仕出かしたか分かっているのか?」

「……否。仕出かしたのは我々ではなく、総督府および鉄錨商会だ」

 カイトは感情の起伏がない声で淡々と答えた。

「……港湾インフラの故意過失による停滞は、都市全体の経済的な血液循環を阻害する。判定。私は社会的な滞留という不備を均質化し、適正値に戻したに過ぎない。銀級の正当な権利に基づき、速やかに総督府への公式監査要求書への署名を要求する」

「ハッ、言うじゃねぇか」

 シェイハは苦笑気味に髪を掻き揚げた。

 大都市のギルド長である彼は、総督バルトロ侯爵の横暴や、港の利権を巡る腐敗を快く思っていなかった。だが、それをつつけば騎士団が動き、ギルドの運営にも支障が出るため、これまでは「大人の均衡」として黙認してきたのだ。

 しかし、目の前のジャージ姿の男は、そんな政治的な駆け引きなど一顧だにせず、ただのバグを修正するかのような冷徹さで利権の根底を爆破してみせた。

「カイト様、この部屋のおじさんも、あの悪い侯爵様とお仲間なんですか? もしそうなら、お家のトイレみたいに綺麗に洗浄しちゃいますか?」

 連結通路から顔を出したリアが、ジャージのフードをパタパタと揺らしながら、冷たい麦茶のボトルを片手に物騒な提案をした。

 キャンピングトレーラーの快適な環境で常に全快状態の彼女の言葉には、冗談抜きの圧力がこもっている。

「ふふ、それもいいわね。ここのギルド長、見た目は綺麗にしているけれど、内に溜まった計算はなかなかに生臭いわ。私の呪いで、少しその頭を調律してあげてもいいのよ?」

 本革のソファで優雅に足を組むエルザが、調律杖の先端をシェイハへと向け、赤い瞳を妖しく明滅させた。

 真祖としての強大な魔力が室内の空気を一瞬で激変させ、金級冒険者であるシェイハの背中に冷たい汗が流れた。

(……化け物め。このジャージの男だけでなく、従えている女の練度も常軌を逸していやがる。バルガスの報告書にあった『単独、または同行者二名での殲滅』は、文字通りの事実か……!)

「……待て待て、お嬢さん方。俺はバルトロの犬になるつもりはねぇよ。むしろ、あの傲慢な侯爵の鼻を明かせるなら、喜んでこの書類にサインしてやるさ」

 シェイハは両手を軽く上げると、机の上の監査要求書に自身の魔力刻印を力強く押し付けた。

 ギルド長としての正当な署名。これで、カイトの行動は「余所者の暴挙」から「ギルドの公式なインフラ監査」へと格上げされた。

「ただし、バルトロ侯爵はすでに中央騎士団を動かしている。港の利権を奪われたとなれば、あの強欲な男は血眼になってお前たちを圧殺しに来るぞ。どうするつもりだ?」

「……問題ない。騎士団という暴力インフラが論理的な対話を拒絶するのであれば、その全構造を破砕し、物理的に均質化するだけだ」

 カイトは署名済みの書類を回収し、無表情のままギルド長室の扉へと歩き出した。

 総督府の悪意、そして裏で糸を引く悪魔族の帝国の隠密工作員が息を潜める大河都市。

 そのすべての包囲網を嘲笑うかのように、カイトたちは次なる不備の源流――総督府の完全なる最適化に向けて、静かに、そして確実に歩みを進めていた。

最後まで読んでいただきありがとうございます!

もしこの「ジャージ管理者の等価交換ファンタジー」を面白いと思ってくださったら、ぜひ評価の「星」やブックマークで応援していただけると、カイトの魔力と作者のモチベーションがリペアされます!

よろしくお願いいたします。

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