第157話:砂海のオアシスと、新たな拠点
数日間に及ぶ砂漠越えの末、四輪駆動車のフロントガラスの向こうに、ようやく石造りの堅牢な城壁が見えてきた。
大砂海の過酷な環境に耐え続ける辺境の要衝、商業都市『ガル・ラサーム』だ。
カイトは魔石エンジンの出力を絞り、車の速度を落としながら街の大きな鉄門をくぐった。
道中の過酷な環境や魔獣の襲撃を、等価交換で得た最低限の道具と初級魔法だけで切り抜けてきたため、手元の資金や魔導結晶の残高は、この街へ辿り着くための計算通り、綺麗に底を突きかけていた。
「……判定。目的地への到着を確認。……これより、当面の活動資金の確保、および情報収集のため、この街のギルドへと向かう」
カイトは車をギルド指定の馬車置き場へと滑り込ませ、静かにブレーキを引き抜いた。
漆黒のジャージの自動洗浄機能のおかげで、彼の身なりは相変わらず新品同様に整っているが、長時間の運転による疲労は確実に蓄積している。
「やっと……やっとまともな建物がある場所に着いたのね。カイト、まずは日陰のある宿屋を探しなさい。私の肌が本当に限界よ」
後部座席から降りてきたエルザが、調律杖を日傘代わりにしながら、恨めしそうな声を上げる。
「カイト様、見てください! 街の人がみんな、私たちの車を不思議そうに見ていますよ!」
助手席から元気よく飛び出したリアが、周囲の視線に気づいて耳をピコピコと動かした。
砂漠を馬もなしに爆音を立てて走る鉄の塊など、この街の住民にとっては未知の存在でしかない。
カイトは周囲の喧騒を無視し、目の前にある頑丈な木製の扉――冒険者ギルド『砂の牙』の看板が掲げられた建物へと足を進めた。
「……行くぞ。ここでしばらく、この土地の『不備』を片付けながら、ギルドとしての評価を積み上げる」
扉を開けると、中は砂漠の熱気を遮るようにひんやりとしており、地元の荒くれ者たちの視線が一斉にカイトの漆黒のジャージへと集まった。
カイトたちの、この街での地道な下積みの日々が、静かに幕を開けようとしていた。
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