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『等価交換の創造無双 〜ジャージ姿の俺、悪意を燃料に最強兵器を創り出す〜』  作者: beck2026
第2章:管理者の実地研修(フィールドワーク)

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第142話:最深部の錆と、職人の領域

緑色の魔導石の鍵が回ると同時に、目の前の重厚な石扉がズズズと音を立てて左右に分かれた。

 途端に、生温かく湿った空気が三人の顔をなでる。

 

 通路の壁には、世界樹の太い根が脈動するように這っていた。だが、その表面には緑の光はなく、まるで古びた鉄パイプのように赤黒い「錆」のような物質がびっしりとこびりついている。

「……うわぁ、何ですかこれ。なんだか変な匂いもします……」

 リアが鼻をひくつかせ、ジャージの袖で口元を覆った。彼女の鋭い嗅覚には、この場所がどれほど長期間放置されていたかが、痛いほど伝わっているようだった。

「……判定。魔力の不純物が結晶化し、根の表面を覆っている。人間の街で言うところの、下水管の詰まりと同じだな。……エルフどもは数千年間、一度もここを掃除していない」

 カイトは躊躇ちゅうちょなく、その不気味な通路へと足を踏み入れた。

 漆黒のジャージの「環境適応」機能が働き、周囲の不快な湿気や臭気を瞬時に遮断していく。

「数千年も放置されてたら、そりゃ大樹も悲鳴を上げるわよ。……ねえカイト、これ、本当に私たちの手作業でどうにかできるの?」

 エルザが調律杖の先で、壁の赤黒い錆を恐る恐るつつく。

 カツン、と硬い金属音が響いた。ただの汚れではなく、完全に石のように凝固している。

「……等価交換の基本は、元素の把握だ。……どれほど硬化していようが、元は魔力の残滓ざんしと大樹の分泌液が混ざった有機物に過ぎない」

 カイトは通路の突き当たりにある、巨大な球体の前に辿り着いた。

 それこそが、里の全域に魔力を送り出す心臓部――世界樹の『命の核』だった。

 だが、その美しいはずの核は、今や赤黒い錆の地層に完全に埋もれ、不規則にドクン……ドクン……と苦しげな脈動を繰り返している。

「よし、作業を始めるぞ。……二人とも、手筈通りに動け」

 カイトは頭の中で所持金から対価を支払い、必要な構成元素を強くイメージした。

 ジャージのポケットから取り出したのは、現代の職人が使うような、頑丈なスチール製の「ワイヤーブラシ」と「スクレーパー(削りヘラ)」、そして高濃度の「酸性洗浄液」が入ったボトルだった。

「何よその道具、相変わらず見たこともない妙な形ね……。で、私は何をすればいいの?」

 エルザがボトルを受け取り、怪訝けげんそうな顔をする。

「……エルザ、その洗浄液を錆のひどい部分にピンポイントで少量ずつけ。大樹の組織を傷つけないよう、魔力で液体の範囲をコントロールしろ。……リアは、液が馴染なじんで柔らかくなった箇所を、そのヘラで力任せに削り落とせ」

「了解です、カイト様! ……これ、結構力が要りそうですね。ふんっ!」

 リアは身体強化の魔力をまとい、スクレーパーを両手で握って、壁の錆に突き立てた。

 ガリッ! と激しい音が響き、洗浄液でもろくなった赤黒い塊が、ボロついた剥製はくせいのように剥がれ落ちていく。

「……よし、いい出力だ。仕上げは俺がやる」

 カイトは剥き出しになった大樹の本来の皮膚へ向けて、ワイヤーブラシを強く押し当てた。

 シュッ、シュッ、と規則正しい金属摩擦の音が、薄暗い最深部に響き渡る。

 彼がブラシを動かすたびに、こびりついていた数千年の怠慢が削り取られ、その下から、エルフの王宮のものよりも遥かに清らかな、透き通ったエメラルドグリーンの光が溢れ出し始めた。

「……っ、凄い……! 魔力の流れが、一気に軽くなっていくのが分かるわ!」

 エルザが驚きの声を上げる。彼女の呪われた魔力回路さえも、この場所が浄化されることで、心なしか痛みが和らいでいく感覚を覚えていた。

 カイトは額に大粒の汗を滲ませながらも、無表情のままブラシを動かし続けた。

 魔法による一瞬の奇跡ではない。

 地道で、退屈で、しかし最も確実な「職人の手作業」が、数千年の呪縛を少しずつ、確実に削り落としていく。

最後まで読んでいただきありがとうございます!

もしこの「ジャージ管理者の等価交換ファンタジー」を面白いと思ってくださったら、ぜひ評価の「星」やブックマークで応援していただけると、カイトの魔力と作者のモチベーションがリペアされます!

よろしくお願いいたします。

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