表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強公女の身代わり結婚  作者: 御桜真
第三章 破壊と調和と誓いの結婚式
49/49

48.初恋の顛末2

「本日はお疲れでしょう。どうぞゆっくりお休みください」

 ルヴィンはエレノアを甘やかしすぎる。壊れ物のように扱われるのになれておらず、とてもこそばゆいし、対処に困る。


 いつでも強いエレノアは、人の心配をしこそすれ、自分がこのように扱われるのに慣れていない。

 なんだか弱い人間になったようで変な気もする。


 わが夫は、幼少期から命を脅かされ、過酷な状況にいたにもかかわらず、人道的で己の立場の確立よりも、妻の健康を案じることのできる誠実な人間だった。

 何よりも妻を優先する人物を身近に知っているが、あれはやりすぎなので、横においておく。


 普通の男ならどうなのであろうか。初恋の姫を妻に迎え入れ、待ち望んだその初夜に、こうしてあっさりと身を引くものだろうか。

 あまり普通の概念が身近にいないので、判断に困る。


 ただルヴィンは生真面目で堅物であり、何より本当にアデラインを思っているようだった。

 感動的ではある。


「それでは、私はそちらのソファで休みます。何かあれば、すぐおっしゃってください」

 ルヴィンは穏やかに微笑み、立ち上がる。

 それから幾分か逡巡し、そっと身をかがめた。遠慮がちに近づき、エレノアの額に口づけを落とす。


 そのまま離れていこうとするのを、エレノアは慌ててルヴィンの袖を掴んだ。

 腕を掴もうとしたが、力が入りすぎて変に疑われては困る。


「ルヴィン殿……ルヴィン、どうか、こちらにいてくださいませんか」

 エレノアはなんとかルヴィンを引き留めた。


 とっさに出た言葉だが、懇願するような様子に、ルヴィンは面食らったようだった。思いがけず少年のような戸惑った表情でエレノアを見る。


 思いがけずまっすぐな目に、エレノアは、つい目をそらした。

 なんとかアデラインらしく、はしたなくも下品にもならないよう、思案する。


「朝、侍女が来たときに夫がソファにいては、いらぬ誤解をうけます」

 絞り出すような言葉が、恥じらいに聞こえれば良いのだが。


「ですが……」

「それに、不安でならないのです」

 言葉を選び、逡巡しながらの声を、どう思ったか。ルヴィンは微笑んだ。さっきまでとは違う、少しやわらかな笑みだった。


「では、おそばにおります」

 暖かな体温が、そばによりそった。間近な赤い瞳が、穏やかに告げる。決してエレノアに触れることなく、ルヴィンは微笑んだ。

「ゆっくりお休みください」



 ルヴィンに背を向けて横たわり、エレノアは一人頭を抱える。

 本来、ルヴィンはとても思いやりのある男だと感動するところだろうが、もっと直情的な方が扱いが楽な気がする。


 すでに停戦は成立し、婚儀もあげた。

 だがこの状態では、いつでも離婚ができてしまう。何のためにクリフォードをソードマスターに仕立て上げたのか。


 白い結婚では意味が無い。

 ルヴィンやアデラインを陥れたい誰かに気づかれ、白い結婚を指摘されて、この結婚も停戦もなかったことにと言われてしまえば、一気に状勢不穏になる。

 エレノアの正体がバレてしまった場合を考えても、関係を持ってしまった方がどうにか切り抜けやすい。


 アデラインが拒んだとか、悪者にされ責任を追及される可能性もあった。それを考え、ルヴィンは部屋を後にしないのだろうが。


 エレノアは髪をぐしゃぐしゃとかきまわし、大きくため息をついた。

 ルヴィンだって、アデラインとの関係を強固にした方が、皇太子としての立場を固められるはずだった。


 やはり、あそこで倒れたのは不正解だった。

 それともやはり、帝都へ向かう旅の途中で、関係を持っておくべきだったか。


 げんなりしていたクリフォードの顔が思い浮かぶ。だが、もしアデラインが誘惑しても、ルヴィンがこの調子ならば失敗に終わっただろう。

 そこで気まずくなってしまっては、ますます既成事実から遠ざかっていたかもしれない。


 深謀遠慮はひどくめんどくさい。

 初恋をこじらせた男もめんどくさい。


 これから機会などいくらでもあるはずだが。そう楽観視できる気がしない。

 前途多難の結婚生活のうちに、この男との関係が上積みされ、エレノアはげんなりした。


ブックマーク、評価、リアクション、誤字報告などなどいつもありがとうございます。


ここで第一部いったん幕となりまして、しばらく更新お休みいただきます。

脳筋公女とこじらせ皇太子の、ふたりの関係は進展するのか、

お待ちいただけますと幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ