白猫の宅配便
スキー講習があった事で、今年は実家に帰り損ねてしまった。
約2週間の食っちゃ寝生活が・・・。地元の友人との遊びが・・・。
なんて、考えている余裕が全くないのは確かだ。
スキー場への往復の交通費、スキーのレンタル代、その他食事代・・・。
まったくもって金がない・・・・。
どれくらい金がないかと言えば、財布に入っている全財産、282円。
・・・日々の食事がホットケーキもどきのみになってしまっている。
これは、去年工藤さんに勧められて、結局行けなかった宅配便の日雇いバイトをするしかないな・・。
携帯に電話番号を入れてスタンバイ・・・。13時ちょうどに電話を掛ける・・・。
・・話し中・・。話し中・・。
繋がった!!
これで、何とか、日銭を稼ぐ準備が出来た・・・・。
大学付近の駅から、厚林駅までは230円。
前回はバスに乗り損ねたが、今回は乗らない訳にはいかない。本当に死活問題なんだ。
厚林駅へは18時には到着した。今回は18時30分集合だったし・・・・。
お?それらしい男たちが5人ほど集まっている。
18時25分にバスが来た。白猫とかなんとか書いてあると思ったんだけど、何の表記もないマイクロバスだ。
全員が無言でバスに乗り込む・・・・。
何だか、炭鉱に送り込まれる作業員のような感じだ・・・。この無言の時間が耐えがたい・・・。
15分ほどバスに揺られていると、よく見かける白猫マークの工場のような場所へとたどり着いた。
狭い入口から入り、2階へ。ここでもまだ全員が無言だ・・・。
2階に着くと階段脇の部屋へ入っていく。
「はい、皆さんお疲れ様です。点呼を取ります・・・。」
ここで初めて社員さんが声を掛けてきた。
バスに乗っていた20名程の男たちがそれぞれ名前を呼ばれ、身元の確認を行っていく・・・。
「え~。本日、初めての方、いらっしゃいますか?」
「あ、はい!」
手をあげたのは俺一人。皆さん常連さんなんだね。
「では、仕事の説明をしますので、一緒に来てください。他の御名さんは、先程の容姿に書かれていた場所で、それぞれ業務に映ってくださいね。では、お願いします。」
「「「う~っす。」」」
「では、え~と、麝香さん、こちらへどうぞ。」
「はい。」
俺だけ社員さんに連れられて階段を降りる。
「ここが集配所です。あそこから、トラックで荷物が運ばれて来ます。この、金属のカートの中に、あんな風に荷物が詰め込まれていますので、このベルトコンベアに乗せて行ってください。」
一辺が120㎝ほどのカートが、いたる所に並んでいた。高さは2mほどか・・・。
「ちょっとやってみますね?」
社員さんがゴム付き手袋を装着し、段ボールをベルトコンベアに乗せていく。
「こんな感じ。簡単でしょ?」
「ええ、他に、気を付ける事はありますか?」
「ん~・・・。ないですね。あ、荷物は投げないように、気を付けて降ろしてくださいね?」
「分かりました。」
「じゃ、お願いしますね。」
社員さんはそのまま去って行ってしまった。
この単純作業で、12000円か・・・。楽勝だな・・・。
俺はカートから無心で荷物を降ろし始めた。
「重!!」
小さな段ボールだったが、かなりの重さだ・・・。
ジャガイモ?・・・こっちはミカン?
なんでこんな物を送るのだ?近場で買えよ!
急に、とても良い匂いがしてきた・・・。
コレか・・・。ラフランス。良い匂いだな・・・。
「これもか?」
カートの中に、黒くて大きな何かが積まれている・・・。
ゴルフクラブ・・・・。意外と重いやんけ。
暫くして、辺りにチャイムが鳴り響いた。
「休憩です!休憩です!」
みんながぞろぞろと、先程の会議室に戻っていく・・・。
宅配便の達人たちは、おにぎりやサンドイッチを持ってきている・・・。ま、俺は食えるもん何て持ってないけどな!
45分間の休憩は、宅配便の方たちが用意してくれた暖かいお茶のみで過ごした。
・・・あと4時間・・。意外と・・・。かなりきついな。
作業だけなら大したことないのだが、トラックの排気ガスを吸いながらの重労働はかなりつらい・・。
更に無心で作業を続ける・・・。外が少しずつ明るくなってきた・・・。
チラチラと粉雪が降り出す・・・。
集配所は、全体の半分以上がトラックの出入口のため、外で働いているのとまったく同じだった。
動けば熱いし、止まれば寒い・・・。
これは、きついわ・・・。




