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エピローグ1

「なんだろう、あれ・・・」


 魔王領から人類諸国連合に向かう貨客船の甲板の上。

 港に接岸された船に続々と乗船してくる人間の兵士の集団を見ながら作治はぼんやりとそんなことを呟いた。

 金属製の鎧のみを身に着け、ヘルメットをかぶっていない。

 そのせいで顔や髪の毛がはっきりとわかる。どうやら男性だけでなく、女性も多くいるようだ。

 皆一様に甲冑の上からエプロンのような布きれをかぶっている。

 不意に頬に冷気を感じた。


「うおっ!」


 パッショリがよく冷えたコーラの瓶を押し当ててきたのだ。とりあえず受け取る。


「あ、ありがとう・・・」


「揃いのサーコートを身に着けていますね。ということは冒険者ではなく正規遠征軍の兵士なのでしょう」


「軍隊の兵士?」


「裁判所に行きましたらね、この二枚の書類にサインをするように魔王に言われました」


 言って、パッショリは書類を見せた。と、いうものの、作治はこの国の、この世界の言語など読めるはずもない。


「なんて書いてあるの?」


「一つはサクさん、貴方を無実の罪でとらえたことを謝罪し、放免に同意する書類。もう一つは正規遠征軍の兵200名の恩赦に同意する書類」


「魔王軍に掴まっていた人間の兵隊を解放してくれるってことでしょ?いい書類じゃないか」


「サクさん。貴方の故郷のニホンという国はどうだか知りませんが、魔王領には刑事補償というのが憲法で規定されているのです」


「憲法で?」


「逮捕、拘禁された者が無罪になった場合、国家はその分賠償金を払わねばならないという法です」


「へぇー。じゃあ僕はどのくらいお金が貰えるのかな?」


「ですから、賠償金の代わりなんですよ。一度死刑の判決だしたけど、人間の捕虜200人帰してやるからお前ら文句言うな、と」


「・・・なんだか凄く損した気分だ」


 作治はコーラを飲んで溜息をついた。


「ところで、アミーラさん知らない?」


「夜伽のお相手ならわたくしがして差し上げますわ」


 下着姿のスィートピーが甲板に現れ、作治達に近付いてきた。

 なお甲板上には蜥蜴や蛙の頭をした船員達が作業をしているが、こちらに近付かないように、あるいはさっきまですぐそばで作業した者が船内に降り始めていたりする。


「何なんですかその恰好・・・」


「あら?わたくしは貴男の家畜になったのですからいつでも貴男の求めに応じれるようにしておかねばならなくて?」


 厄介な女性である。


「とりあえず下着姿で歩かれるのは猥褻物陳列罪になりますから何かお召し物」


「目玉潰されたいのですか?クソ弁護士?わたくしの見目麗しい肢体を干渉なさって良いのはサク様だけですわよ」


 目を潰されるのは嫌なので、パッショリはスィートピーから視線を逸らした。


「サクさん。貴方から彼女に何か言ってあげてください」


「えーと、じゃあラティルスさん」


「ふ、ラティルスとは世間を欺く仮の名前。鮮血連理草スィートピー・ブラッディエナこそがわたくしの真実の名前ですわ・・・」


 金髪ツインドリルは、紫色のガーターストッキングのみを身に着けたまま、左足で何か商品が入っているであろう木箱を踏み、右手で顔を覆い、左腕を突き出し、決めポーズを取っている。

紫のガータベルトと長手袋とストッキングだけの姿で。


「えーと、じゃあ鮮血連理草スィートピー・ブラッディエナさん」


「ふっ、ようやくわたくしの真実の名前を呼んでくれましたわね・・・」


「下着姿は不味いんで、それ以外の物をくれませんかね?」


「フ、どうやらわたくし達エンプーサの真の力の末端を貴男にお見せしないといけなくなってしまったようですわね・・・」


「末端も何も下着以外のですね」


 パッチン。


 鮮血連理草スィートピー・ブラッディエナは指二本を鳴らした。

 すると紫色のブラジャーが紫色のブレストプレートに、紫色のTバッグが同じ形状の金属製のタンガに、紫色の長手袋がヴァンプレイスに、紫色のストッキングがグリーブになった。


「フ、女騎士が大好物だなんてサク様も所詮オーク未満の下種人間に過ぎないのですわ!ああ!これからわたくしはこの虫けら以下の魔法学科の劣等生様に種付けされてしまうんですのね!!」


「パッショリさん。船の出向まで時間がありそうですし、一度下船してアミーラさん探しに行こうか?」


「そうしましょうかサクさん」


「ああ!どうしてわたくしを無視するんですのっ!!?」

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