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普通学科の劣等生(旧題魔法文明滅亡一万年後)  作者: 虹色水晶
第七章 悪夢の中へ、悪夢の中へ、逝ってみたいと思いませんよ
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俺TUEEをおしつける奴は多いが、他人とってそれは悪夢でしかない(4)

「しかし呪いというのはそんなに強力な物なのか?しかも魔術で防げないなんて・・・」


「当然です!」


 パッショリが夢の中に造られた廃墟の中、隅々まで響き渡る大声で断言する。


「例えば婚姻届け!これはまさしく呪い!永遠に妻を幸せにするという呪いの十字架を背負わされ、数十年に渡って家族を支える奴隷として炎天下の元労働を強いられるのです!」



「はぁ」


「そして老後に待ち受けるのは離婚届!用済みとばかり定年退職した夫に妻は容赦なく紙切れ一枚を突きつけ財産と可愛い孫を奪って去っていくのです!!正に呪い!!これぞ死の宣告!!逃れる術はありません!!!」


「オーホホホッ!どう?恐ろしいでしょう!?怖いでしょう?!呪いというのはかけられたが最後、どんな魔術をもってしても討ち払う事などできないのよっ!!さぁ、受け止めなさい、わたくしの死の抱擁をっ!!!」


 ぱらぱらぱらっ


 酷く、軽い音だった。

 額。豊かな胸。腹。右腕。左手。右ひざ。左ふくらはぎを撃ちぬかれ、鮮血連理草スィートピー・ブラッディエナは地面に落下した。

 その名の通り、大地のキャンパスに鮮血の連理草が広がっていく。


「夢の中とはいえ、能力は封印させたわけではないな。ちゃんとエンプーサとしての妾の力が振るえるではないか」


 ベルギー製P-90、によく似た銃の弾倉を交換しながらアミーラは言った。


「アハハハハ、そういえば貴女もわたくしと同じエンプーサでしたわね?ならそれくらいのことが出来るのは当然でしたわね」


 膝も曲げず、肘も曲げず、腰も動かさず、足のつま先から頭の天辺まで一本の御柱が打ち立てられるように真っ直ぐに立ち上がる。

 そして彼女の全身が、筋肉が、膨れ上がる。

 腓腹筋が膨らみ、ハイヒールが砕け散る。

 腹筋が膨張し、コルセットごとウェディングドレスが破れていく。

 背筋が伸び、彼女の身長は三人の見ている目の前で身長10メートルほどの巨躯になった。


「め、女型の巨人だ・・・」


「知っておるのかサク!?」


「あれによく似たものを僕は『知って』いる。だけど女形の巨人と大きく異なる部分がある」


「具体的にどこら辺が違うのですか?」


鮮血連理草スィートピー・ブラッディエナは・・・なんか、ビキニアーマーっぽいのをつけてる」


 女形の巨人と化した鮮血連理草スィートピー・ブラッディエナは腕に金属製の肘からヴァンプレイス(肘上から手の甲あたりを歩保護する腕防具)とグリーブ(膝から下の部分のみを金属で保護し、太ももは露わになった脚部防具)。

 頭部は金色のツインドリルの根元に蝶をあしらった髪飾りが二つ。

 胴体は胸を保護するようにホルターネック状のブレストプレート(胸を保護する防具)。

 腰から鎖状の金具に吊るされたやはり蝶をあしらった金属板が、臀部の下半分を保護・・・しているのだろう。


「ふむ。どうやらあのチョウチョ模様の鎧は下着が変化した物らしいな。巨人化する際に下着が金属と化し、乳房と秘部を覆うようになっておるのだ」


「これはもう女形の巨人じゃない。女形の鎧の巨人だ。即ち、女形の巨人と鎧の巨人が合わさり最強に見得る!」


「女形の鎧の巨人?!そんな相手とどうやって戦えばいいんですか?!!」


「通常の巨人ならば弱点はある。首の後ろのうなじの部分だ」


「うなじ?」


 パッショリは女形の鎧の(ビキニアーマーの)巨人と化した鮮血連理草スィートピー・ブラッディエナの頭を見上げた。


「なら話は簡単ですね。飛行魔法を使うか、銃で首の後ろを狙って、攻撃すればいい」


「おいおい。仮に首のうなじを切れば一撃で仕留められるとして、あのデカ女の身に着けている鎧をよおくみろ」


「鎧?」


 パッショリは半裸の女形巨人を改めて見上げる。

 両腕の肩から肘まで、太もも。へそ周りの腹直筋や。鎖骨に繋がる胸鎖乳突筋や大胸筋が露出している。


「ビキニアーマーですよ?剣闘奴隷が着るような見栄えだけの防具としての役目を果たす効果は期待できない代物です。簡単に倒せそうに見えますが?」


「胸のホルターネック状の防具が問題なんだ。首の後ろで交差するように吊り上げるようにブラジャー状の防具を引き上げ、固定している。これでは首の後ろからうなじをそいで一撃必殺なんて無理だ!」


「そ、そうか!あの一見無意味に見えるビキニアーマーは女形巨人の弱点である首後ろのうなじを常に保護する完璧な防具なんですね!なんておそろしい!」


「じゃが、どうして。何故だ。貴様が魔術を使っている形跡はないぞ。なぜそんなにも巨大な体になったのだ?」


 アミーラのその質問に、鮮血連理草スィートピー・ブラッディエナは優しく答えた。怖いくらいに。


「決まっていますわ。ここはわたくしの夢の世界。わたくしが、『この程度ならできそう』と思えばそれは出来ることなのですわ。そうそう。これをお返しておきますね」


 スイカの種を吐き出すように、巨女は口から何かの粒を吐き出す。アミーラはそれを拾ってみる。唾液にまみれたそれは、先ほどP-90似自動拳銃で叩き込んだはずの5.7ミリ弾だった。


「体を10倍にすれば生命力も10倍。そして受けるダメージは十分の一。単純なことですわ。そして」


 地震が起きた。あるいは近くに爆弾が落ちた。そう作治は勘違いした。

 崩れたビルの破片の間を転がされ、全身に細かい傷を造る。

 力任せに鮮血連理草スィートピー・ブラッディエナが地面をぶん殴ったのだろう。


「フフ。スピードは十倍。とはいかなかったようですわね」


 違う。地面を殴ったのではない。鮮血連理草スィートピー・ブラッディエナは何かを掴んでいる。


「が、サクさ・・・アミ・・・た、たす」


「のれ!!」


 アミーラがP-90もどきで水着のような鎧に覆われていない部分を狙って銃弾を撃ち込む。

 相手は身長十メートルのビキニ女だ。皮膚の部分のみを狙って撃つなど鉛筆を直立させるよりも容易い。

 だが。


「フフ。防御力も十倍になってしまったようですわね」


 身長10メートルの女型巨人は1カートリッジ分の銃弾を素肌で受け止めてから満足気に微笑んだ。


「では、腕力の方はどうなってしまっのかしら?」


 鮮血連理草スィートピー・ブラッディエナは。

 パッショリを握った右のてのひらにわずかに、ほんのわずかだけ。力を込めた。

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