俺TUEEをおしつける奴は多いが、他人とってそれは悪夢でしかない(3)
「なるほど。道理で妙な感覚だと思ったわ」
アミーラは地面と空を見ながらそう言った。
「妙な感覚って?」
作治は魔法を扱う事もできなけば武術の経験もない。ただ単に生暖かく、変な匂いがするくらいにしか感じられない。
「前からも後ろかも、右からも左からも、それだけでなく地面の下。ついでに空の妙な模様な雲の上からもラティルスの」
状況を説明しようとするアミーラに対し、中空で椅子に座るような『カッコヨサソウナぽーず』で、座りながら名前の訂正を要求する人物が存在し続ける。
「鮮血連理草」
「・・・ラティルスの」
「鮮血連理草」
「・・・ラティルスの」
「次に言ったら貴女から殺しますわよ?」
「鮮血連理草の魔力を波動を感じるであろう?つまりこの世界は文字通り、ラテ・・・鮮血連理草を中心に回っておるのだ」
「いやいや。前後左右もラテ・・・鮮血連理草で、世界の中心もそうってわけがわからないよ」
「サク。お主無限ループする階段とか、無限ループする通路とかの魔法の罠に出会ったことないか?」
「無限ループ?そういえば時々そういうのあるな」
「ここは鮮血連理草が魔力で造りだした空間だ。即ち中心にいるのが鮮血連理草であり、故に前に行くと後ろから、右に行くと左から、仮に地面に穴を掘って下に落ちれば上から降ってくる。何しろ無限ループの中心は鮮血連理草なのだからな」
「ということは彼女を倒さない限りこの世界から出ることは不可能ってことか」
「なかなか鋭いですわ。でも違うところがありますわ。これは魔法ではなくってよ」
鮮血連理草は自分が造りだした無限空間について、アミーラの解説をきいていたが、少々足りない部分があるので補足してやることにした。
「ほう?魔法ではないと申すか?」
「だってさっき貴女が説明したでしょう?魔法だったら術式を見ればどんなものか、強力なものであれば遠く離れた場所にいても気づかれてしまう。でも、魔法でなければどうかしら?」
「魔法でなければなんだというのだ?」
「これは呪いですわ」
「呪い?」
「呪いをかける対象の体液が付着した物体を用いて儀式をおこないますの。すると御覧の通り。貴方方をわたくしが御用意した夢のような世界に御招待できますのよ」
「夢?つまりここはお前の夢の中だっていうのか?」
作治が問いかける。
「ええ。ですからこの世界にはわたくしより強い者は誰も存在しない。常日頃から睡眠時間を削り、食事の時間も惜しんで修行に励み、経験を積もうとも、この世界に来た瞬間、その力をわたくしと同程度の強さまで下げられる」
「エナジードレインの一種か。じゃあお前の能力は自分より格上の相手であればあるほど、有効ってことか?」
「ええ。サク。貴方が魔法学科の劣等生という事で確実な手段を取らせて頂きました。これで貴方が人知れず真夜中に絶えず努力し、鍛錬に励んでいようとも、今の実力はわたくし以下ですわ」
作治は思った。
ごめん。名探偵コナンの映画見るとき以外夜11時まで起きてたことないわー。
「なあ。ここは夢の世界だとしたら、この世界で死んだら現実世界の僕たちはどうなるんだ?」
作治の質問に、敵である鮮血連理草は懇切丁寧に答えてくれた。
「フフフ。ですから貴方方をこの夢の世界にご招待いたしましたのよ。世の中には銃や刃物で殺された瞬間、自己再生魔法で蘇る不死公様のようなお方もいらっしゃいますの。ですから、貴方がもしもそのような魔術が使えたとしても無力化できるように致しましたのよ」
「な、どういうことだ?!」
「貴方方が夢の中にいる、という事は現実世界の皆さんの肉体は眠っているという事ですわ。
そして夢の中で死ぬと同時に現実世界の肉体は心筋梗塞で死ぬ。心筋梗塞は病死ですから、自己再生魔法の対象にならない。もっとも、貴方方が完全なる不死の術を習得していればお話は別ですけど」




