表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
進め!魔法学園  作者: 木こる
2年目
69/150

7月後半

今年も補習確定の生徒が大量に生み出された。


1年生で補習を免れたのはたったの3人。

2組からは七瀬圭介。

4組からは高崎亞里亞と立花希望。


2年生は去年とほぼ同じメンバーが生き残り、

赤点組はまた同じ過ちを犯してしまったのだ。


「みんな……馬鹿なのか?

 補習を受けるのは嫌なんだろ?

 夏休みを満喫したかったんだろ?

 どうして勉強しなかったんだ……?」


「うわ、女に現を抜かしてる奴から馬鹿って言われた!」


「まあ、また全教科満点を取ったバケモンからすりゃあ、

 おれたちが馬鹿に見えたって仕方ねえよ

 ……それにしてもグリムよぉ

 すっかり優等生(そっち)側の人間になりやがって……この裏切り者めが」


「フハハハハ! 悪いな、諸君!

 優等生の俺は夏休みを満喫させてもらうぞ!」


「はは、随分とご機嫌だねえ

 どこか旅行にでも出掛けるのかい?」


「ん〜、いや

 旅行とはちょっと違うな……

 いい機会だし、例の冒険者キャンプで過ごそうと思ってるんだ

 あそこには熟練の冒険者がたくさんいるし、色々と刺激になると思ってさ」


「かぁ〜っ!!

 学習のためのキャンプかよ!

 発言まで優等生になりやがって!

 お前、一体どうしちゃったんだよ!」


「フハハハハ!

 俺はもう昔の俺ではない!

 悔しいのならば、貴様らもこの高みへと這い上がってこい!」


「くっそ〜」




……さて、とうとうこの時が来てしまった。


最後の護衛任務。


俺が入れ込んでいる後輩2名はスケジュールを調整し、

その担当が俺になるように合わせてくれた。

彼女たちの気遣いがなんともありがたい。


「それじゃ今日もよろしくお願いします!」

「……よろしくお願いします」


2人は共にフリフリのドレス衣装に身を包み、

俺の目に潤いを与えてくれる。大変素晴らしい。


「おい、甲斐晃

 ちょっと俺と代わってくんねえか?」


「ふざけるなよ、一条

 これは俺に与えられた任務なんだ

 邪魔するというのなら容赦はしないぞ」


「チッ……

 このロリコン野郎が……」


「ハーレム野郎には言われたくないな」


「てめえだって両手に花状態だろうが」


一条の恨み節はさておき、俺たちはダンジョンへと突入した。




まずはスライム。

絶対に衣装を汚したくない彼女らは遠距離から手裏剣を連射。

1、2、3、4、5発。

どちらがトドメを刺したにせよ、完封することができた。



続いて馬人間。

まずはアリアが前へ出て囮となり、

彼女の周囲をぐるぐると走らせることに成功。

そしてタイミングを見計らって鎖鎌を振り回し、

その鎖をのぞみの方へと放り投げ、2人がかりでピンと張る。


ズガシャアァッ!!


見事、鎖に足を取られた馬人間は豪快に転倒し、

立ち上がれない体勢のまま手裏剣の集中砲火を浴びて死滅した。



第2層で最初に出会ったのはシャドウ。

だが、やはりその魔物は光に反応して一目散に逃げてしまった。



コボルトの群れに向かって矢が放たれる。

のぞみが持っているのは、長さ1mの新品の吹き筒だ。

ダメージは微々たるものだが、敵を1匹ずつ釣り出すには充分だ。


「うりゃ!」


アリアはコボルトの脳天に棍棒を叩きつける。

のぞみは敵の釣り出し&完全防御に徹しており、

2人パーティーでもしっかりと役割分担ができていて偉いと思う。



ローパー。

彼女たちにとって一番の天敵だ。

こいつは獲物を捕らえて引っ張るという行動しかしてこないが、

他の魔物との連携で厄介になるタイプの魔物なのだ。


「ちょっ、引っ張られる……!

 だめっ……このままじゃ汚されちゃう!

 先輩!! のぞみ!! 早く助けて!!」


「俺には見ていることしかできない……」

「ねえアリア、今どんな気分?」


「のぞみ!! なんで嬉しそうなの!?」



全身粘液まみれのアリアがのぞみに抱きつく。


「んぎゃああ!!

 服が汚れる!!」


「へっへっへー♪

 もう手遅れでぇーす!

 さっきすぐに助けてくれなかったお返しだー!」


ローパーの魔の手から逃れられなかったアリアからは悪臭が漂う。

そしてその悪臭はのぞみへと伝染し、2人とも酷い状態だ。

ただどちらも全身ベトベトになっており、

どこか歪んだエロスを感じさせる光景ではあった。


「アキラ先輩も見てただけだよ!?」


「いや、それはほら……

 これから2人は先輩の手を借りずに活動しなきゃならないし、

 自分たちの力だけで対処できるのか見届けたかったんだ

 他に魔物はいなかったし、危険性は無かった」


「……とか言ってるよ?

 どうする、のぞみー?」


「アキラ先輩も汚れちゃえ!」

「だよねえ〜……えいっ!」


「あっ、こら!」


酷い悪臭のする2人から抱きつかれ、

最後の護衛でとんでもない思い出が出来てしまった。


両手に花……ラフレシアの臭いがする。






──夏休み3日目。

他の生徒たちが補習を受けている中、

俺たちは芸術棟の音楽室で遊んでいた。


ギター、高崎亞里亞!

<じゃら〜ん>


ベース、甲斐晃!

<ドゥンドゥン>


ドラム、立花希望!

<タカタカ、シャーン>


全員素人なので演奏技術は全く無い。

初心者にはドレミファソラシドすら難しい。

だがそれが楽しい。

下手なりに他のメンバーと音が重なり合った時なんかは特にだ。


「音楽には不思議な力がある

 俺の同級生では栗林と進道がギターを嗜んでいて、

 どちらも魔法の扱いが上手なんだ

 過去の先輩方の経歴を調べてみたが、

 制御力の数値が高い人はほとんど音楽の趣味がある人だった

 音楽と魔法には、なんらかの関連性があるように思える」


「へえ〜、それは興味深い話ですねえ

 ちなみに先輩は好きな音楽ジャンルとかありますか?

 私は歌詞のわからない洋楽をランダムに再生してますけど」


「好きな音楽か……

 親父がジャズのレコードをたくさん持っていて、

 実家に帰る度にそれを聴いて心を落ち着けているな」


「ほうほう、ジャズとは渋い趣味ですねえ

 のぞみは好きなアーティストとかいるー?」


「バド・パウエル」

「え、誰?」


「“クレオパトラの夢”か?」

「はい、お気に入りです」

「あ、ジャズの人?」


「あとビル・エヴァンスとか」

「へえ、ピアノ系が好きなのか」

「2人はジャズが好きなのね」


「俺は最近、マイルス・デイヴィスを聴いてるんだ」

「わたし、“エアジン”から入ったんですよ」

「私も話に入れればいいんだけどね」


「たまにバディ・リッチのドラムソロ観てます」

「ああ、俺もインターネットで観たことがあるぞ」


「疎外感……!」




その日は訓練を休み、俺たちは夕方のうちに仮眠を取っておいた。

目を覚ましたのは午前1時。いい頃合いだ。

顔を洗い、軽く準備を済ませてから待ち合わせの場所へと足を運ぶ。


午前1時30分。


「いや〜、久々に見ましたが……

 やっぱり夜の校舎って不気味ですよね〜」


「結局わたしも巻き込まれてしまった……」


俺たちは学園七不思議の1つ、“呪いの人形の怪”に挑もうとしていた。

まあ、リリコが始めたいたずらに誰かが便乗しているだけなんだが。

今日はその犯人を捕まえようという企画だ。


あれから学園職員さんに確認を取ってみたが、

身長180cm以上の女性職員はいないとのことだった。

どうも彼らはこの不可解な現象を楽しんでいる節があり、

あの部屋を片付けようというつもりは無いようだ。


ちなみに残り6つの不思議は存在しない。



今回は一切の明かりを点けずに目的地へと進んだ。

犯人に警戒されては困るからだ。

アリアはがっしりと俺の左腕にしがみつき、

のぞみは右腕の袖をちょこんと摘んでいる。可愛い。


やってきたのは4階の空き教室。

初めは30体だった人形は今や45体まで増殖しており、

幽霊を信じていない俺でもその異様さを少しは理解できる。


「前回より3体増えているから、3回来たんだな

 何が目的なんだか知らんが、一発で捕まえられるといいな」


そう言って教室の後ろにいる人形の位置を動かし、

3人で座れるスペースを作る。

床に段ボールを広げ、更に大きめの段ボールを組み立てて3人で被る。

その簡易小屋には覗き穴を空けており、そこから外の様子を窺える。


「ああ……壁と屋根があるだけでかなり恐怖が薄れますね

 それに密室に3人という状況もすごくアリかなと……

 ここならカメラもありませんし、何しても安心ですね」


「セクハラ禁止!!」


先日のプールでの出来事を思い出す。

今なら何をしても安心……

ここにカメラは無い……


「……いや、ビデオカメラを回しているからだめだ

 犯人はいつ来るかわからない 常に警戒は怠らないでくれ」


「あらら、残念」


「……」



犯人はいつ来るかわからないとは言ったものの、

おそらく前回と同じく午前2時15分頃だろうと予想している。

それまでの時間ただ座っているだけなのもアレなので、

アリアはスマホでゲームをしていた。


「……なんだか全然楽しそうな顔をしてないな?」


「ああ、これですか?

 まあすっかり飽きちゃってるんで面白くはないですね

 初日からやってるんで、惰性で続けてるだけです

 今はデイリーミッション消化中ってとこですね」


「ゲームというのは楽しむためにあるんじゃないのか?」


「まあそうですけど……

 どんな風にサービス終了するのかを見届けたいですし、

 これもある意味ゲームを楽しんでると言えませんかね?」


「ふむ、楽しみ方も人それぞれというわけか」



のぞみの方を見ると彼女はうつらうつらと舟を漕いでおり、

どうも夕方に上手く仮眠できなかったであろうことが窺える。

しばらくその様子を温かい目で観察していると、

彼女はとうとう眠りに落ち、俺の腕の中へと飛び込んできた。


「……ひゃっ!?

 ご、ごめんなさい!!」


「いや、謝る必要なんて無い

 さあもう一度こっちへ来るんだ

 俺を抱き枕にして安眠するがよい」


「セクハラ禁止!!」




午後2時10分。


「そろそろだな……」


犯人が今日来るという保証は無いが、

とりあえずあと5分というところで緊張が走る。

アリアはビデオカメラが正常に機能しているか再度チェックし、

のぞみは俺の袖を掴んでプルプルと震えている。可愛い。


「幽霊って魔法効くんですかね?

 もし先輩の腕力が通用しない場合、

 私たちで倒すしかないですし……」


「俺は幽霊なんて信じちゃいないが、

 もし仮にそういう性質の相手なら君たちが頼りだな

 実はダンジョンの第3層にも同じような魔物がいるんだ」


「おお、先輩から頼りにされて光栄です」


「ちょっ、アリア……

 そういうの今になって確認するの!?

 あと5分切ってるこのタイミングで!?」


「のぞみ怖がりすぎぃ〜」


「あんたたちが図太いの!!」



11分。



12分。




13分。




<ビィー!! ビィー!! ビィー!!>




「うぎゃあああああ!!」

「いやあああああっ!!」


突然のアラーム音に驚き、両サイドから美少女2人がしがみついてくる。


これはチャンスだ。

俺は2人の肩を優しくさすり、自然な流れで頭を撫でてやる。


そして彼女らは音の発生源が俺のズボンのポケットだとわかると、

2人してそのアイテムを取り出そうとゴソゴソし始めた。

くすぐったいやら、恥ずかしいやら。


「いや、自分で取り出せる……っと、手遅れか」


俺は2人から手渡されたスマホを操作し、

そのけたたましいアラームを解除した。


「……驚かせてすまない

 これは緊急召集の合図なんだ

 悪いが、今すぐタワーに向かわないといけない

 犯人確保はまた今度にしよう 今日はこれで撤収だ」


「せっかくあとちょっとだったんですけどねえ

 まあ仕方ありませんね」


「今すぐ帰りましょう!!

 さあ早く!!」


俺たちは校舎から立ち去った。




それにしても、前回よりもアラームの音量が大きかった気がする。

もしかしたら緊急事態の度合いによって音量が変わるのか?

そんな不安を抱えながら、俺はタワーへと急いだ。




そして、悪い予感は的中してしまった。




「さいたま市にある冒険者キャンプで火災が起きた

 ティルナノーグ大宮という場所だ

 奇跡的に大雨が降ってくれたおかげで鎮火済みだが、

 現地のダンジョンから大量の魔物が流出して混乱状態らしい」


「えっ、ティルナノーグ大宮って……」

「グリムが寝泊まりしてるとこだよな!?」

「それに丸山君や向井君もいるって聞いてるよ……」


「栗林とはまだ連絡が取れていない

 ……が、交戦中で忙しいだけかもしれない

 悲観せず、今自分たちにできることをしろ

 落合先生、黒岩透、進道、並木、野村、松本

 以上の者はヘリに乗って現場へ急行しろ

 残りは車で移動する……10分後に出発だ、急げ」


先発隊に選ばれたのは魔法能力の高いメンバーだ。

物理攻撃の通用しない魔物がいるものと思われる。

現地には大勢の冒険者がいるが、そのほとんどは高齢者だ。

彼らは魔法を使うことができない。


ついさっきまで後輩たちと遊んで浮かれていたが、

ここから先はそういった雑念は捨てなければならない。


今は戦う時だ。

基本情報

氏名:津田 剛志 (つだ つよし)

性別:男

年齢:41歳 (11月11日生まれ)

身長:188cm

体重:118kg

血液型:O型

アルカナ:皇帝

属性:炎

武器:なし

アクセサリー:お守り(極薄)


能力評価 (7段階)

P:8

S:8

T:6

F:3

C:0

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ