7月前半
「はあ……
今月で護衛任務が終わってしまうのか……」
「本当に残念だよねえ……
私もいろんな後輩のサポートができていい経験になってたし」
ダンジョン前にて、愚痴を吐く。
俺は同級生の女子から距離を置かれたが、
松本さんは以前と変わらずに口を聞いてくれるのでありがたい。
……まあこうして2人きりの時は、の話ではあるが。
「あっ、次のパーティーが来たよ
……って、なんかすごい格好してる
ちょっと可愛いかも……」
そこに現れたのは、俺が入れ込んでいる2人だ。
彼女たちは先日注文したドレス装備に身を包んでおり、
アリアは嬉しそうに尻尾を振り、のぞみは恥ずかしそうに耳を丸めている。
肉球天国。一見するとイロモノのようだが、れっきとした全身防具である。
「おお……
2人共、よく似合っているぞ……!
どれ、記念に写真を撮影してやろう」
「えっへへ〜♪
可愛く撮ってくださいね♡」
「それじゃあ撮るだけだな!」
「わたしは撮らなくて結構です」
「アキラ君はこの子たちの前だと本当に活き活きしてるねえ……」
そんな浮かれ男はさておき、
ヒロシは新人発掘任務で所沢市の中学校を訪れていた。
どうせ今日も空振りだろう。いつも通りに終わるはず。
そう思っていたのだが……
「……え、ちょっと!
これは一体、どういうことですか!?」
ヒロシの目の前には丸坊主にされた中学生の男女が5人。
彼らは泣きそうな顔をしており、どう見ても自分の意思で
その髪型にしたのではないことが窺える。
困惑するヒロシに、男性教師は半笑いしながら説明した。
「いやあ、わざわざ足を運んでもらってすまないね
魔法使い共はこちらで炙り出しておいてやったから、
あとはこいつらをそっちで引き取ってくれればいい」
「え、いや、炙り出しって……
そういう勝手なことをされちゃ困りますよ!!」
「勝手なこと……?
いやいや、君の手間を省いてあげてやったんだぞ?
感謝されこそすれ、非難を浴びせられる覚えは無いと思うがね」
だめだ。
この教師には話が通じない。
その口ぶりからして、魔法能力者を嫌う人間なのだ。
“魔物の人権を守る会”……通称、魔人会。
名前からして既にイカれた連中だ。
彼はその反冒険者カルトに属している人間なのだろう。
「……ちなみに、どうやってこの5人を炙り出したんですか?」
5人で済むはずがない。
なにせ、人類の約半分は魔法能力者なのだ。
30人3クラスのこの中学校では、単純計算で45人はいないとおかしい。
「そりゃ、測ったに決まってるだろう?
こいつらは“人間指数”が100を超えていたんだ
つまり、こいつらは人間じゃないってことだ
それなのに堂々と俺らの健全な社会に紛れ込みやがって……
危うくお前らを普通の生徒だと勘違いするところだったぜ」
人間指数……意味がわからない。
彼が手にしている測定器はヒロシが持っている物と同じだ。
つまりそれは、基礎魔力という言葉が置き換えられたものに過ぎない。
どうやら魔人会基準では、魔力100以下なら正常な人間という判定らしい。
「先生はご自身の人間指数を測ったことはありますか?」
「あん? そりゃまあ、あるけど……
ちなみに数値は60だから正常な範囲内だ」
「へえ、60もあるんですか
そいつは羨ましいですねえ
なんせ俺の魔力は1しか無いんで、
魔法ダメージが稼げずに困ってるんですよ
そうかそうか、俺の60倍かあ……」
中学生たちが顔を見合わせて困惑する。
「おい、なに馬鹿なことを言ってるんだ!!
俺は人間指数の話をしてるんだぞ!!
魔法がどうのこうのとかは関係無いだろう!!」
教師は憤慨するが、ヒロシは冷静な態度を崩さずに次の行動へと移る。
「井上君
君の人間指数とやらは、いくつだったか覚えてる?」
「えっ、はい
その……151です」
「おお、すげえな!
7段階評価で7だぞ7!
これは大当たりが来たな!」
「え、大当たり……ですか?」
「ああ、君の魔力はすんごく高い数値なんだ
俺の151倍だぞ? まあ、俺が低すぎるだけだけどな!」
そう言い、ヒロシは井上君に測定器を向けた。
「ほら、151!
君の基礎魔力は151もあるんだぜ!」
「え、その装置……
先生のと同じですよね……?
しかも同じ数値……えっ?」
「ああ、これ?
これは基礎魔力を測定する装置だよ
この基礎魔力ってのは生まれつきのものであって、
生涯変動することのない数値なんだ
たとえ加齢で魔法を使えなくなったとしても、
それはただ魔力の出力ができなくなるだけで……
って、この話はまだ早いよな
とにかく君には立派な冒険者になれる素質がある!
この先どんな進路を選ぶかは君の自由だけど、
もし魔法学園に入学したいのなら推薦しとくぜ!」
中学生たちは再び顔を見合わせる。
「ちなみに先生の数値は……やっぱり60ですね!
ああ、魔力が60もあって本当に羨ましいなあ!!」
「今すぐここから出てけえええええ!!!」
ヒロシは任務における規則を破ってしまったが、お咎めは無かった。
その罰は件の教師に与えられ、彼は3ヶ月の減給処分を受けた。
「──しかし、世の中には理解できない連中がたくさんいるよな
魔人会……本当に存在意義がわからない
魔物を倒す者がいなくなったら、そいつらも困るだろうに……」
「ああ、まったくだ
最近俺が通ってる冒険者キャンプで聞いた話なんだが、
その組織は平輪党の集金装置として発足されたものらしいぜ?
金目当てで結成した古参メンバーはまだしも、
信者たちは本気で『魔物の人権を守りたい』と思ってるそうだ」
「ひゃ〜、頭おかしすぎて反吐が出るぜ!
なぁにが魔物の人権だ!
奴らは人類に仇なす害虫なんだよ!
害虫を守りたいなんて宣う連中も害虫と同類だ!
害虫は駆除するに限る! おれはそう宣言させてもらうぜ!」
「はは、それには僕も同意見だね
そして困ったことに、彼らも同じ意見なんだよね
彼らは冒険者や魔法能力者を害虫と見做しているらしいよ」
「その半数は無自覚の魔法能力者なんだろうな
何が人間指数だ……馬鹿馬鹿しい」
「ちなみに“教祖様”の人間指数は100ジャストらしい
信者曰く、教祖様は完全なる人間なんだそうだ」
「並木とおんなじ数値じゃねえか
あいつが完全なる人間だなんて思いたくねーよ」
「バストも100ならよかったんだけどね」
「正堂君……」
「お前、ブレないよな」
「ある意味尊敬するぜ」
後日、俺たちは重大ニュースを知らされることになる。
「花園美咲訓練官が妊娠した
彼女は出産と育児に専念したいと希望しており、
今学期を以て訓練官の職務から退くことになる」
妊娠……それは本来、とてもおめでたいことだ。
それが愛し合う配偶者との子ならば尚更だろう。
この件について津田剛志訓練官は何を思うのか。
「いや……まだ僕の子だと決まったわけじゃないよ?
花園先生は普段から夜の店で遊んでたみたいだし、
きっと行きずりの関係を持ったホストとかの子じゃないかなあ?
僕はそういう事故が起こらないように気をつけてたよ?」
なんて奴だ。
信用できない。
こんな無責任男が1年生の間では人気の先生だなんて反吐が出る。
今年はボロが出ないように上手く立ち回っていたようだが、
これで全て台無しになったという事実がわかっているのだろうか。
俺たちは去年の出来事を知っている生き証人なのだ。
「……えっ!?
クマちゃん先生ってそういう人だったんですか!?
元教え子の奥さんがいるのに教室で不倫とか……許せませんね!」
「わたし、4組の生徒でよかった……」
俺はありったけの情報を後輩たちに伝えた。
俺だけではない。
友人たちも同じ気持ちであり、
津田剛志がどういう人物であるかを後輩たちに触れ回ったのだ。
「うわ、マジっすか!?
最低だな、あのモジャモジャ野郎!」
「そうですか、あの教室でそんなことが……
ちなみにどの席だったか教えていただけますか?」
その情報は瞬く間に拡散し……
「え〜、ショック〜!」
「まさかそんなことが……」
「やっぱりそうだと思ったんだよ!」
「あいつも辞めちまえよ!」
真実を知った後輩たちは一斉に反旗を翻し……
「さあ、みんな!
今日も楽しいクマちゃん体操が始まるよ!」
「うるせーよエロックマ!」
「何がクマちゃん体操だよ!」
「花ちゃんと夜の体操しやがって!」
津田剛志は、今年も生徒からの信用を失ったのだ。
俺たちはもっと早い段階で教えてやるべきだったと後悔している。
来年はこの後輩たちが上手くやってくれることを願う。
プールにて、今日も2人の後輩が綱渡りに挑む。
バシャーン!
のぞみは7割程度の距離までは安定して進めるようになったが、
どうもそこから先の突破率が低い。
ゴール目前になると気持ちが逸ってしまうのだろう。
バシャーン!
アリアは最も不安定な中央地点で上体のバランスを崩し、
そのまま落下というパターンが多い。
そこさえ突破できれば他は安定するのだが……。
<リリリリ! リリリリ!>
午後6時のアラームが鳴り、2人に訓練終了の合図を出す。
普段ならまだ練習中だが、来週には期末テストがある。
俺たちは冒険者であり高校生だ。学業を疎かにしてはならない。
「さて、今日はこれで終わりだ
いつもより練習量が少ないとはいえ、整理運動はしっかりとな」
そしてアリアはいつも通りマットに横たわり、
のぞみは脚を伸ばすストレッチを始める。
「のぞみも先輩からマッサージ受ければいいのに
私なんかより遥かにテクニシャンだよ?
どうしてそこまで頑なに拒否するかねえ?」
「あんたがいやらしい声を出すからだよ」
「だって本当に気持ちいいんだもん♪
せんぱ〜い、今日もよろしくお願いしま〜す♡」
「ああ、こちらこそよろしく」
「……」
のぞみからの痛い視線に耐えつつ、アリアへのマッサージを終えた。
あとは道具を片付けてシャワーを浴びて飯の支度を……
「あ、先輩
たまには先輩をマッサージしてみたいんですが、いいですか?」
「ん……俺を?
いや、自分でできるから平気だ
それより早く帰って勉強した方がいい
なんなら俺の部屋で勉強会でもするか?」
「え〜、だめですか〜?
いつも気持ち良くしてもらってるお礼がしたいんですけどねえ
それとのぞみを揉んでるうちに私の腕も上達したんで、
その成果を見てもらいたいな〜、と……」
後輩からの感謝の気持ちか……。
ここはひとつ、素直に受け取るべきだろう。
「わかった、やってくれ」
「はーい♪
じゃあ仰向けになってくださいね」
「ん……仰向け?」
どこをマッサージする気だ?
まあ、とりあえず任せてみるか……。
「よいしょっと」
アリアは俺の下腹部よりも下、太腿の付け根辺りに跨り、
にんまりと悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「あっ、その位置は──」
「アリア!! ダメ!!」
そして彼女はそのままペタンと座り込んだのだ。
水着越しに少女の体温が伝わり、つい体が反応してしまう。
それは理性では抑え切れない本能なのだ。仕方ないだろう。
今まではこの状態にならないように平常心を保てていたが、
直接攻撃を喰らってしまってはさすがの俺も耐えられない。
「わっ……すごっ!
本当に硬くなるんだあ♡
しかもどんどん大きくなって……」
「これはまずい……」
「早くそこからどきな!?」
「先輩って、私みたいな女の子にもちゃんと反応するんですね
ちょっと安心しちゃいました……♡」
「その、勘弁してくれ……」
「カメラ回ってるよ!?」
「あ、なんか……
ちょっと運動したくなってきたかも……♡
先輩……心の準備はいいですか?」
「いや、だめだ」
「動きますね」
アリアは腰を前後に揺らし、お互いの下半身が擦れ合う。
「おい、本当にもうやめ……っ!」
「うふふ、先輩の困った顔……可愛い♡」
そして更に、彼女は水着の肩紐を外して挑発してくる。
はしたない……が、それも悪くないと思ってしまう自分が情けない。
この状況を力ずくで解決することはできるが、
このまま流れに身を任せたいという気持ちもある。
「──はい、そこまで!!」
見ると、そこには2人の警備員さんが立っていた。
この女子用プール担当の方々で、どちらも女性だ。
その後ろではのぞみが頬を膨らませながら腕組みをしている。
どうやら彼女が助けを呼びに行ってくれたのだろう。
助かったと思う反面、邪魔をされたという気分にもなる。
なんとも複雑な男心だ。
「アリアちゃん
乗っかるのはいいけど、動いたらNGよ」
「室長!
乗っかった時点でアウトですよ!」
「そうかしら?
自転車のサドルに跨る行為自体はエロくないけど、
それで前後運動をしたらエロいでしょ?」
「相手は生きている人間です!
それも10代の健全な男子ですよ!
やっぱりもっと早く止めるべきでした!」
「アキラ君
ちょっとサイズ測ってもいい?」
「室長!
相手は未成年ですよ!」
「まあ、とにかく……
次はカメラの回ってない所でやんなさい」
「室長!
我々の存在意義ってなんなんですかねえ!?」
基本情報
氏名:落合 賢悟 (おちあい けんご)
性別:男
年齢:28歳 (5月23日生まれ)
身長:172cm
体重:65kg
血液型:AB型
アルカナ:魔術師
属性:無
武器:レプリカリバー (片手剣)
能力評価 (7段階)
P:7
S:7
T:7
F:5
C:9
登録魔法
・ファイヤーボール
・リベリオン
・アイスボール
・アブソリュートゼロ
・サンダーボール
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・バインド
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