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11話

 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※




 黒いのの消滅を確認して、ダドラに降りてもらい漸く地上へ生還する。


 あっ、もうちょっと優しく降りてダドラ・・・。

 私の内臓のどれかが飛び出そうだから。


 そんな私に、近くに居た少年辺境伯が駆け寄る。



「ルルリーア嬢!!だ、だいじょうぶですかっ!?」

「・・だいじょうぶ、では、ない・・・」



 ダドラの上から、落ちるようにして降りる私。

 そして忌々しい魔法の鎖も消す。ここは忘れない。絶対、忘れない。


 ああ死ぬかと思った。もうこんな冒険活劇は御免被りたい。

 ・・・そんな目で見ても、駄目だからなぁぁぁ!ダドラァァァ!!



「っ!??ルルリーア嬢!!」「へ?」



 焦ったように叫ぶ少年辺境伯。


 なに??私今、すごく気持ち悪いもうお腹いっぱいなん---ヒュン。

 ・・・・・・・え?


 後頭部の辺りを、質量を持った何かが、通り過ぎた。

 そして、遅れて強風が巻き起こり髪が乱れる。


 恐る恐る後ろを見ると、ゆらゆらさせている、ダドラの尻尾が。



「駄、駄ドラァァァ!!おまっ、駄ドラァァァ!!」

「キュルッ!」



 いや、『褒めて!』じゃないからぁぁぁ!!

 その尻尾が当たったら私の頭、パーンってなるからぁぁぁ!!!


 ダドラへ詰め寄る私を落ち着かせてくれた少年辺境伯から、細い針のような黒い奴をダドラがはたき落としてくれた(虫みたいだな)と聞いて反省した。


 まだ残ってたのか、例の黒いグニャグニャ、の欠片。

 ・・・うっ、詰め寄ってごめん、ダドラ。いつも通り、遊んでたのかと思ってたよ・・・。


 そして、ありがとうダドラ。

 今日は一杯助けてもらって、感謝感激なんだけど。・・・なんだけど??


 その貴方の尻尾、重くて危ないからね??当たったら私簡単に死んじゃうからね??

 私には気をつけて接して下さい、お願いしますよぉぉぉ!!??ダドラさん!!!!



「完全に相殺しきれなかったか。再考の余地あり、だな」

「・・・理論上は連鎖的に作用するはずだったんですが。ごめんな、ルルリーアちゃん」

「詰めの解釈が甘かったってことね。早速情報を研究室に持ち帰りたい」


「み、皆さん!!冷静すぎじゃ、ないですかっ!??」



 漸く合流した大人組が、今の現象を検証する。


 そうだそうだ!!言ってやってよ少年辺境伯サマァァァ!!!

 私としてはその黒いのは見えてなかったから、ダドラの尻尾の恐怖しか解らない。

 けど、あとちょっとで私に刺さりそうで、危なかったらしいし!!


 猛抗議すると、私のギリギリ近くで例の魔法陣を展開してた、と。

 ・・・・それならそうと、早く言ってよぉぉぉ!!!ありがとうございますぅぅぅ!!!



「・・・・グルゥ・・・」

「??ダドラ??どうした??」



 突然唸り始めたダドラに手を伸ばしたけど、すっと身を引かれる。


 ・・・こんなの、初めてだ。

 私が撫でようとすると、いつも嬉しそうにして----


 ふわりと、ダドラが飛び上がる。私から離れるように。


 ---ダドラ??なんで、え、どうして??



「グルゥゥゥゥッ!!!」



 ---宙へ浮いて身体を丸めたダドラに、あの黒い奴が、巻きついた。



「---っ!!!???」



 黒に侵食されて苦しそうに唸るダドラを、呆然と眺めるしか無かった。

 後ろで魔術師団長たちが慌てて何かをしているみたいだったけど、遠い出来事のようで現実味がない。


 ああ、どうしよう。ダドラが、どうしよう、あの黒いのから、私をかばって、そんなの。



 ---ダドラが居なくなったら、嫌だ。



 完全に、黒がダドラを覆う。



 ・・・わかってた。帰って欲しいとか思ったり言ったりしたけど、本当は私も楽しかった。

 ダドラと一緒に居て、凄く楽しかったんだ。


 蜂蜜を美味しそうに舐めるダドラも、待てをされて悲しそうなダドラも、騎士団長の殺気に怯えるダドラも、蝶を追いかけて楽しそうなダドラも、鱗を撫でると嬉しそうにするダドラも。


 もう私の人生の、一部になっちゃってたんだ。



 手が細かく震えて冷えて、まるで他人の手みたいに感覚が薄れていく。

 知らずに海にはいったみたいで、足元のスカートが濡れて纏わりついて酷く歩きにくい。


 それでも構わず、少しでもダドラに近づけるように、足を動かす。


 ---ああ、嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ。もう誰かを失くすのは、いやだ。


 両手を、黒く包まれたダドラの方へ、差し出す。

 ・・・神様でも悪魔でも、誰でもいいから、どうか聞いて。


 なんでもいい、私の何を奪ってもいい。何をもがれてもいい。

 だから、お願いどうか。



「ダドラを、返して」



 左手が焼け付くような感覚の後、光を放った。

 骨まで響くようなその痛みに、歯を食いしばる。


 ・・・このくらいの痛みで、怯むわけ、ないでしょ。


 更に高く、ダドラへ届くようにと、腕を伸ばす。

 これでダドラが戻るなら、むしろ安い。---ああ、私の腕が千切れたって、構うものか。


 それなのに、何かが届いているはずなのに、ダドラを包んだ黒が徐々に小さくなる。


 ---なんで、どうして。


 折れそうになる心を叱咤して、遠くなる意識を必死で引き止める。

 そうしている間も、力がどんどん抜けて、正直立っているのもやっとだ。

 ・・・でも、ここで倒れたら、二度とダドラに会えない、気がする。


 ---ああ、何が足りないっていうの、私は何を絞り出せばいいの、そうか私のいのち----ぽとん。


 掲げた両手に、軽い衝撃が走る。



 ・・・・・・・・・・・・え?なにか、え、落ちて、きた。



「キュウ?」

「・・・・・・・・・・・・・・だどら???」



 私の両手に、小さいドラゴンが、すっぽり嵌まっている。



 ・・・・・・・・ダドラァァァァ!!えっ、無事っていうか、ちいさっ、えええええぇええええっ!!???


 鱗が薄茶と黒の斑になってるし、小さいし、コレ本当にダドラ???

 腕の中の小さいドラゴンを、ひっくり返し縦に横にして調べる。ついでに全身を撫で回す。



「キュウ!!」



 ある意味無体を働いていると言うのに、この嬉しそうな鳴き声。この尻尾の振り方。


 ---ダドラ、だ。小さいけど、ダドラだ。



「ダ、ダドラァァァァァ、ァァ・・あ」



 ダドラが無事で元気そう、ああよかった。

 そのことに安心したら、なんだか身体の力が、抜けて・・・・?



「キュルゥ!?」



 慌てたようなダドラの声が聞こえて、遠くの方で、ばしゃりと水音がして。


 やだなぁ、ダドラ。

 もう黒いのも居ないんだから、慌てなくても、いいんだよ。



 ・・・・あー、口の中が、しょっぱい、ような・・・・。




 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※




 気がついたら、ベットの上でした。


 何か首が痛いなと思ったら、ダドラが枕を占領した所為で、私の頭が落とされたからみたいだ。

 ・・・・この、ダドラめ・・・無事じゃないかもう、ダドラめ・・・。



「ルルリーア!!起きたっ!!団長!!ルルリーアが起きた!!!」

「・・・ああそうだな、って痛てぇな!!叩くなっ!ミシェル!!」

「よ、よがったぁぁぁ・・・ルルリーアちゃん・・・よがったぁぁぁ!!」

「ルルッ、ルル、リーアじょうぅぅ!!ぶじ、で、ご無事でぇぇぇ!!」


「・・・ぉぉぅ、あ、ありがとうございます皆様。ご心配をお掛けして???」


「「「「ほんとうにっ!!!!」」」」「・・・・すみません??」



 息がぴったりだな、いつの間にこの四人仲良くなったんだ?


 魔術師団長の襟首を締めていたミシェルさんが、はっと何かに気づいたかのように手を放した。

 ・・・むせちゃってるけど、大丈夫か?魔術師団長。



「起きたのは確認したんだから、男は部屋から出るっ!」


「いや、でもドラゴンが」「団長、心配は最後までしましょう?」

「はっ!そうでしたっ!!紳士なのに女性の寝室に居るなんてっ!!」「今更ですねー」



 軽やかにツッコミをいれるレナルドさん、頼もしすぎる。

 ・・・でも鼻水出てるよ。


 私の視線に気づいてハンカチで拭きつつ、ダドラを食い入る様に見る魔術師団長と、顔を真っ赤にして固まる少年辺境伯を抱えて部屋を出るレナルドさん。頼りになりすぎる。


 騒がしい三人が部屋を出て、パタンと扉が閉まると、がしりとミシェルさんが私の両頬を掴んだ。

 ・・・・えーっと、これは、怒られる、的な???



「・・・あの時、最後のあれ、何しようとしたかわかってる?」

「え、えーっとなんだったか、なー??」


「生命を魔力に、代えようとしてた」

「うっ・・・」



 有耶無耶にしようとしたけど、ミシェルさんはずばりと切り込んできた。


 へー、いやぁーあれそうだったのかー知らなかったなー??


 ・・・いや本当に知らなかったよ。

 確かに最後の方、なんかぼんやり考えてたような、ような・・・。


 ---あれ?命を魔力に変える??そんな高等魔術っぽいこと、私出来たっけ??


 ぐっとミシェルさんの手に力が篭もる。

 頬がぁぁ!!指が、めり込んでぇぇ!!!!



「ごめん。あんな偉そうなこと言ったのに、守れなくて」



 真っ直ぐ、私の目を見て謝るミシェルさん。綺麗な赤褐色と目が合う。


 ・・・あの短時間で、黒いのの対策を整えて消す方法を実行して。

 そんな凄いことした人に、謝られるのは申し訳ないと思う。


 でも、心から真剣に言うミシェルさんに、返す言葉は一つだ。



「ひゃい」

「・・・ぷっ」



 ・・・『はい』って真面目に返した筈なのに、頬潰されてるせいで間抜けな声になったよぉぉぉ!!??


 目尻に涙を滲ませながら笑うミシェルさん。

 そ、そんなに笑わないでくれっ!!これミシェルさんのせいなんだからね!!??


 一頻り笑った後、ミシェルさんの目が怪しく輝き始めた。



「さて、謝ったことだし。二度とあんな真似をしないよう、ルルリーアの隅から隅まで徹底的にかいぼ・・調べ尽くすわよ」

「ひょ、ひょっとまってくらはい!!かいっ、っっったぁ!?」



 潰されてるから内頬噛んじゃったよ!!

 じゃなくて、ミシェルさん、いま、解剖って言いかけたぁぁぁ!!



「ルルリーア嬢っ!!!生きてるかっ!!!??」



 バーンと勢い良く扉が開かれて筋肉変・・じゃなかった、筋肉前辺境伯が入ってきた。

 ・・・あの、ここ、淑女の、寝室・・・。



「父上っ!そんな、女性の寝室にっ!!」

「おい、おっさん!!折角ドラゴンが寝てんのに騒がしくしてんじゃねぇよ!」

「・・・団長、そこなんですか、いや知ってましたけど」



 あれ?部屋から出た筈の、三人までまた入ってきたよ??

 いやでもこれでミシェルさんも引き下がって・・・くれないぃぃいぃ!!??


 漸く頬から離れたミシェルさんの手が、私の服を脱がそうとしてくるのを必死で防ぐ。

 その手の勢いは緩めず、ミシェルさんは顔だけ彼らへ振り返る。



「ちょっと!!今から隅々までルルリーアを調べるんだから、みんなココから出て」

「すっ、すみっずみっ!!??そ、そんな破廉恥なっ!??」

「おい、それは俺も混ぜろ」

「変態なんですか団長。・・・結果だけ教えてミシェル」

「おおっ!筋肉自慢かっ!?私も混ざろうっ!!」



 つっこみが、追いつかないぃぃぃぃぃ!??

 一番頼りにしてたレナルドさんが裏切ったせいだぁぁ!!!


 少年辺境伯!お願いだから、真っ赤になって硬直してないで助けてぇぇ!!!

 それか無い服を更に脱ごうとしてる、自分の父親を止めてぇぇぇ!!!


 ・・・・ああもう、折角あの状況から生還したっていうのに。なんだこの状況は。



 ----私の事は、ホオッテオイテェェェェ!!!オウチ、オウチカエルカラァァァァ!!




 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

※見るも八卦見ぬも八卦!!あれ?何だか短いな、いや短くないよ裏設定だよ!!

・枕から落ちた頭:

 ルルリーアの側から離れないダドラを放置したため、ダドラ近付く→ルルリーア鱗が当たって痛い移動→近付く→移動・・・を繰り返して、最終的に枕から落ちたという。ダドラは寝落ちしました。←イマココ


・再びのミシェルさん:

 謝りながらも頬を潰してたのは、『そんなことない』とかを言わせないためだったけど、その心配なかったわ。この子やっぱり面白い、かいぼ・・・分解・・・調べたい!!←イマココ


・実は壊れた少年辺境伯のハンマーさん:

 辺境伯に代々伝わる家宝。製作者制作年代共に不明。凄い代物で、持ち主の魔力に応じてハンマー部分で触れたモノ(持ち主次第では空間も可)の全て、エネルギー(質量でも可)を反射するやつでした。つまり光も完全反射出来るよ!凄い!!ハンマー自体物体というよりも・・え?尺が足りないって?結果を言うと、そんなハンマーも黒いのに当たりすぎて粉々になったよ!←イマココ

 (あっこれ次話で出す予定だった、けどまあいいか!)


・ルルリーア:

 皆自由すぎるからほんと私生還したばかりだから、お願いだからモウカエラセテェェェェェ!!!←イマココ

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