【閑話】四人は一人のために 『サラ』
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「失礼するわ」
唐突に、少女が執務室に入ってきた。
・・・控室には補佐官が居たはずで、面会予定は無かったはずだが。
「・・・何か、用かな?」
「売り込みに来ましたの」
金髪に黒目、そして人形のように精密さを感じる顔。
最近話題の少女とはまた違った意味で、密かに話題になっている少女だ。
「売り込み、というのは君自身のことをかな?」
「ええ、もちろん」
そういうと、両手を広げて微笑んだ。
つまり、この国の王弟であり外務大臣である私の執務室に、入り込めるという実力を示したというわけか。
うん、中々やるねぇ。
「何故か聞いても?」
私がそう聞くと、彼女は先程までの余裕の笑みが消え、悔しそうに唇を噛んだ。
執務塔の警備を潜り抜け、大胆にも私の元へ忍び込んできた人間とは思えない、余裕のない顔だ。
「私には」
彼女が深呼吸をする。
そうして懺悔をするかのように、語りだす。
「彼の様に、あの子を助ける魔導の才はない」
「彼女の様に、他家を鎮める権威もない」
「あの人の様に、あの子を守れる力もない」
もちろん、と暗い目で続ける。
その目の先には私は写っておらず、遠く未来を見つめているかのようだ。
「時間さえあれば、制限を掛けなければ、実現してみせる」
ふうん?
つまり、時間さえかければ、魔導の申し子たる彼の『知力』にも、三大領地を有する公爵家の『影響力』にも、王国最強の騎士の『武力』にも、匹敵することが出来る、と?
これだけを聞いていれば、とんだ誇大妄想だと笑い話になりそうだけどね。
しかし、公爵家の一件を聞くと、あながち笑い飛ばすことも出来ない。
「けれど、今回には間に合わない、圧倒的に、時間が足りない。・・・これほど、自分が無力だと思ったことはないわ」
・・・その言葉を聞いたら、公爵家のあいつが憤死しそうだ。
思わず吹き出しそうになる、のをじろりと睨まれた。おやおや、怖い怖い。
「だから、あの子が全力でやりたいことがあるなら、私も全力で今出来ることをするまでよ」
挑むように、けれど冷静に、彼女は、サラ・ウェール伯爵令嬢は、私に宣言する。
「そして、貴方の職場が、一番私の能力を発揮できる」
「・・・そして、今後の布石にするのかな?」
ニヤリと笑うと、彼女も人を喰らいそうな顔で、ニヤリと笑う。
うん、返答はないが、正解の一つだろうね。
彼女のような人間が、一つの行動に一つの意味で終わらせるわけがない。
「さあ、どうされますか?王弟殿下」
あぁ、なんて面白いんだろうか。
返答しようとすると、外でバタバタと慌ただしい足音が聞こえる。・・・ようやく気づいたか。
第一補佐官であるロイスが駆け込んでくる。
「で、殿下ぁ!申し訳ありません!侵入者をって君は!??」
「あら、もう気づかれてしまいました?残念」
「よく言うよ」
どうせ私に危害を加えないという意思表示だろう?
単身乗り込んでおいて、まったくいい度胸だ。
「ん??もしや、採用希望の方ですか?」
「はい。どうぞ、よろしくお願いしますわ。ロイス補佐官様」
・・・この状況で『採用希望』だと思えるとは。いい判断だ、第一補佐官よ。
侵入を許した件で減俸してやろうと思っていたが、それはよしてやろう。
そうだな、と呟いて少し考える。
今回の一件、兄上は『たとえ奴らが何処にいようとも、徹底抗戦の構えで行く』と宣言した。
となると、他国での武力行使をすることになり、ドラゴンの名を騙った、ある意味迂遠な今までの政策から一転して、我が国の兵力を他国に示す、という訳だ。
・・・・うん、荒れそうな気しかしないな!
そうなると、各国への対応諸々、大いに人手が欲しい。
「うち、厳しい上に、こき使われるよ?」
「殿下!折角の希望者が帰ってしまうようなことを言わないで下さい!!!」
「いえ、問題ありませんわ、ロイス補佐官様。殿下、私を使いこなせるとお思いですか?」
自信たっぷりに言う彼女。を見て、一安心するロイス。
・・・今、明らかに君の上司が貶されてると思うんだけど?・・・やっぱり減俸にしてやろうかな。
それにしても、確か彼女は、少し前に自分を『無力』だと言っていたはず。
これは、うん、外交官向きだね。いい人材が飛び込んできたようだ。
やはり、笑い声が漏れてしまうのを抑えられない。が、抑える必要はなさそうだ。
目の前の彼女も、素晴らしい笑顔なのだからね!
「じゃあ、その自信満々の実力を、早速見せてもらおうかな?」
「えぇ、もちろん。但し、つまらない仕事を押し付けて、判断されないでくださいね?外務大臣閣下」
これはこれは、仕事が捗りそうだね。なんて頼もしい!!
・・・おい、ロイス。お前は先輩になるんだから、『やばい増えた』なんて青い顔をするんじゃない。
やっぱり減俸だ。ロイス、減俸確定、だね。
「では、『堕ちた英雄』への資金援助等の関与について、証拠集めに行くよ」
「えぇ!!殿下、いくらなんでも最初から外回りで、しかもかなり危険な仕事じゃ・・・」
ロイスが、サラを庇ってか、苦言を呈する。
サラの方は、どうなのかな?そう思って、目線をやる。
案の定、不敵な笑みは崩れていなかった。
「既に関わったであろう人物を掌握済み、建物の内部構造も把握済み、ですわ」
「それはそれは。じゃあ後は主犯の炙り出しと、血判状の入手、かな」
「で、あれば、ネクロ補佐官のお力を借りれば、可能かと」
「うん、ソレで行こうか」
「・・・あー、大丈夫そうですねー。サラさん」
何故か遠い目をするロイス。まあ、細かい事は気にしない気にしない。
君に期待してるのは、各部署の緩衝だから、ね?
「じゃあ、今回も留守番、よろしく。ロイス」
さあて、思い上がった奴らを、懲らしめに行くとするか。
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※王弟殿下視点でした。
・王弟殿下:この後サラとネクロ補佐官を率いて、八カ国会議を開いて、主犯国をボッコボコにします。
・主人公:騎士団長と修行中




