2話
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----我が家・王都別宅
さてさて、ココまでは順調だな。
サラは逐一変動を教えてくれるし。
ソラン君は魔法石用意してくれてるし。
父様母様兄様に早速家族会議で『囮になります』と報告したら、意外なことに誰も倒れなかった。
・・・全員に額を叩かれたけど。
思い出してニヤニヤしながら、ソラン君に言われた通り家で大人しくしている私ルルリーアでございます。
「お嬢様」
「どうしたの?マーニャ」
来るべき決戦に向けて、英気を養いつつ紅茶を飲んでる私だよ?
「アイリーン・ディラヴェル様が、いらしております」
「ぶっふぅゥゥゥううう!!!」
おおおおお!!??アイリーン様だとぉぉぉ!!??
・・・約束してたっけ??いやいや、今、公爵家令嬢を私に近づける訳ないよね、私は約束してないぞ??
「失礼しますわ」
そうマーニャに案内されて、静々と部屋に入るアイリーン様。
・・・・最後に会ったときは、サラの子分になってたからな。
令嬢っぽいアイリーン様凄い違和感がある。
「えぇぇと、お座りになって下さい。・・・・・アイリーン様?」
「・・・・・・・・・・」
マーニャが下がると、俯いて立ち尽くすアイリーン様。
おーい、大丈夫かなー???
「・・・・ソランに、魔法石、頼んだって聞いた・・・」
「え、えぇ、まあ、そうですね」
ソラン君の定期報告か・・・。
相変わらずアイリーン様大好きだなソラン君。
と、ぐわっと顔を上げるアイリーン様。の顔が涙でグチャグチャだ。
・・・これは囮のことも、聞いたな。
別に口止めしたわけじゃないから、まあいいけれども。
「わた、わたし!まだ、ルルリーアさんと、ともだちに、なってないぃぃいい!!」
「・・・これどうぞ」
段々と令嬢に相応しくない顔になってきたので、ハンカチを手渡す。
いやいや、まだ帰ってこないって決まったわけじゃないからね?
不吉なこと言わんでね??アイリーン様よ。
「・・・・貴族たちの間で、ひぐっ・・不穏な動き、が、あるの・・・」
ああそれは。
恐らく、『竜脈』の活性化から、最近魔物たちの動きがより活発になってきた、らしいからかな(サラ情報)
近々、ソレに乗じて国内を荒らそうとする貴族たちがでるだろう(サラ予測)
「ルル、リーアさん、が、ずびっ・・帰ってきたとき、ちゃんと、むかえるからぁぁぁ!」
それは、国内の貴族たちを抑えてくれるってことかな、アイリーン様。
確かに、現在最大派閥のディラヴェル公爵家であれば出来るだろう。
・・・うーん、でも、ねぇ。
「・・・それって、その代わりに、友達になれってことですか?」
意地の悪い言い方だけど、私のためだけにそうされても困るしなぁ。
いやだって、公爵家、静観してるって聞いてるよ?(サラ情報)
その指針を、変えちゃうってことだよ?いいの?アイリーン様よ。
「違いますぅぅぅ!なって欲しいけど、無理矢理なって欲しいわけじゃなくてぇぇ、それにっルメールもやっぱり好きだし、争ってほしくないし、戦争反対だしぃぃ!!ラブアンドピースぅぅぅ!!!平和の象徴白い鳩大好きィィィ!!!!」
「・・・落ち着け、とりあえず落ち着け。アイリーン様よ」
ら、らぶあ・・??ん??え?なんだなんだ?
え??ハト??なんでハト出てきた、アイリーン様。
またあれか?『にほん』の単語か??
「・・・ぁぁあああ!何言いたいかわからなくなってきたぁぁぁ!!」
叫ぶアイリーン様を見て、なんか、気抜けちゃったな。
おお、私緊張してたんだな、と初めて理解った。
整えられた髪をグシャグシャにして、頭を抱えるアイリーン様。
・・・うん、存分に残念な感じだな。くふふ、ちょっと笑っちゃったよ。
すると、アイリーン様は、キッと無駄な決め顔でこちらを指差す。
・・・うん、顔グチャグチャだけど。
ちょっ、おいおい、鼻水たらさない、それは乙女として駄目でしょうがぁぁ!!
「と、とにかくぅぅ!ルルリーアさんに、絶対に、友だちになってもらうんだからぁ!!」
そう言い捨てると、こちらの返答も聞かずに走り去った。
嵐のようだね、アイリーン様。言い逃げか、言い逃げだね。
というより、結局何をいいたかったか、わからんかったな。
強いて言えば、友達予告宣言??
・・・・思えば、卒業パーティで最初に会った時とは、アイリーン様の印象が随分変わったな。
アイリーン様って、押しが弱くて殿方を侍らせて、困ったふりして密かに喜んでる、みたいな令嬢だと思ってた。
でも、実際は全然違って、友達を作ろうと必死で空回りして。
『いせかい』の記憶持ってるのに、サラに詰め寄られて泣きながら子分みたいになってて。
・・・あ、押しが弱いのは、印象通りか。
それにしても、友だちになってもらう、だって?
おいおい、まったく、残念アイリーン様よ。
友達ってのは、知らない間になってるもんだよ?
ニヤけながら、私は美味しく紅茶を頂いた。
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----王都・騎士団鍛錬場
さあて、ここが難関だ。
鍛錬場を横切って、初めて入る騎士執務塔へと足を踏み入れる。
私はあの顔見知りになった騎士様に、ただ『騎士団長を・・』と言っただけだ。
なのに、何故か団長執務室へ案内されております。
ほんと、なんでだろうね?まったくわからないなぁぁ!!??
それにしてもそこかしこで、『ヨメ』とか『ヨメ』とか『ヨメ』とかざわめいてるけど、何のことだろうね?騎士様方ぁぁ???
ワタシ、ワカラナイヨ???
周囲の視線と声を全力で無視して、何故かウキウキしている目の前の騎士様についていく。
「いやぁ!最近見ないから、心配してましたよ!!・・・ここの所、慌ただしいですからね」
「・・・はぁ」
何を心配してたんだ何を。
淑女を鍛錬場で見かけないのは、当然でしょうが。
しかし、やっぱり騎士様たちにも影響があったか。
・・・・まったくあいつらめ、人騒がせなやつらだ。
「さあさあ着きましたよ!・・・あぁ、その、同席、しましょうか?」
・・・なぜに、騎士様が、モジモジしてるんだ?
おいおいおいおい、まさかのまさかぁ??変な誤解、してませんよねぇぇぇ!??
こ、ここは、ちゃんと目的をぉぉぉ!!
「って野暮でしたねぇ!いやぁ、年は取りたくない!ささっ!あとは若い二人で・・・」
「え、ちょっ、ええぇぇえええ!!!」
パタン
「・・・・・・」
「・・・・・・」
ほ・う・り・こ・ま・れ・たぁぁぁ!!!
ちょっとぉぉ、あれないのぉぉ!??
『団長、来客です』『誰だ?通せ』みたいなやり取りぃぃぃ!!!
お陰様で、あの鉄仮面騎士団長が、ぽかーんですよ!私もぽかーんですよぉぉぉ!!??
「・・・御機嫌よう、ルルリーア嬢」
「・・・ご、ごきげんよう、騎士団長」
き、気まずいっ!
そんな気まずい空気の中、騎士団長は書類を脇において、来客用らしきソファへ私をエスコートしてくれた。ありがとうございます。
・・・うーむ、これで殺気をぶつけてこなければ、紳士なのに。
ん?いや、待てよ?貴族同士って普通こうなんじゃないのか?
最近会ってる紳士がみんな頭掴んだり叩いたりしてくるから、基準がおかしくなってるぞ??
「それで、どうかしたのか?」
・・・はっ!そうだった!!
何故か改めて自分のことを思い返してしまって、言い様のない何かを感じてしまった。
のは置いておいて!ココに来た目的を果たさねば!
「例の『龍』騒動のことなのですが」
「・・・っ、そう、だったな。『救国の聖女』、ぶふっ、だったな」
「・・・それではなく」
一番触れられたくない単語を、言うなぁぁ!!そして笑うなぁぁ!!
くっ!でも反論できないのが痛いぃぃ!!
そうだ!こういうことは、ひと思いに言ってしまったほうが、後が楽なんだ!!
「私囮になるので『堕ちた英雄』一味に囚われたら、助けに来て欲しいです。あとついでに攻撃を避ける訓練もして欲しいです」
「・・・・・・」
無言で騎士団長に見つめられる。
くっ!こ、此れに耐えねば!!!
「それは、私に、ルルリーア嬢が拐われるのを見過ごせ、と?」
「はいそうです」
「そして敵陣に乗り込んでこい、と?」
「うっ、はい・・そうです」
「・・・その上、この忙しい中訓練をしろ、と?」
「あっ、そこは出来たらで・・・はいそうですお願いしますぅぅ!」
はぁ、と溜息をつく騎士団長。
先程まで、ピシリとしていた姿勢を崩して、肘掛けにもたれて頬杖を付く。
「・・・騎士には?」
「な、なりません!」
「・・・嫁には?」
「なりません!!!!」
「随分と我儘だな。ルルリーア嬢」
じろりと騎士団長に睨まれる。
・・・おお!!ほ、ほんとにそうですね!!返す言葉もございません!!
でも!!あいつに一撃食らわせてやりたいのですよ!
でも!!囮とは言え生きて帰りたい私なのですよ!
それに老いたとはいえ、相手は大陸中を剣一つで守っていた『大陸の守護者』にして『堕ちた英雄』。
真正面から立ち向かってくれと言える相手が、騎士団長以外他に思い浮かばなかったんですゥゥ!!
そして、自分に正直に、生きていきたいのです!!
・・・・うわあ、私我儘ぁ!!
「・・・そうまでして、囮にこだわる理由は?」
「あー、一発ぶん殴りたい野郎が、一味におりましてですね・・・」
まあ、一味の探索とかなんとかあるけど、私の本命はそこです。
「・・・・男か」
えっ。
ちょ、えぇぇえええ!!!??
そ、そこなの???ってその言い方なんか誤解を生むからやめてぇぇ!!
・・・そして、なんでちょっと不機嫌な感じになるの、なんかこう、居たたまれなくむず痒くなるから、やめてぇぇ!!騎士団長閣下ァァ!!
むず痒さに耐えきれず、頭を抱える私。むっつりと黙り込む騎士団長。
だ、誰か、たすけてぇぇ!!
バタンッ!
「や、やっぱりその、若い男女が密室に二人きりはよくないというか、団長が襲っちゃってお嬢さんに嫌われたら嫁がっ!!俺団長に半殺しにされる覚悟で、ヒィィィ!!!!!」
天の助けのように舞い降りた騎士様!
だったのに、騎士団長の殺気を受けて、目にも留まらぬ速さの後退で残念だよ!騎士様!!
でもありがとう!!!
・・・・だがしかし、後でじっくりとその妄想について正すからね??
二人っきりにしたの騎士様だからね???
そんな騎士様に見向きもせず、騎士団長は崩していた姿勢を正す。
「わかった。その我儘、全部叶えよう」
思わず背筋が伸びる。
わ、わーい。お願いした身でありながら、文句なぞ言えないのですけど、威圧感がぁぁぁ!!
殺気が無くなってるだけマシなのか?
「その代わり、万が一にも傷一つ負わぬよう、鍛えるぞ」
ぐぁぁ!!満面の笑顔が凶悪すぎて私瀕死寸前だよ!!
あああ!騎士様の気配すらなくなったよ!!
徐々に威圧感が増して指先がひりつくけど、私の我儘だからね!よし受けて立つぜ!!!
お、お世話になりますぅぅぅぅ!!!騎士団長閣下ぁぁぁ!!!
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「まったく、ルルリーア嬢め、わしに遠慮しおって・・・」
クッションを抱えていじけつつも鍛錬場を見下ろす、我が国の国王陛下。・・・国王陛下だ。
ここは私の、宰相執務室なのだが・・・。
鍛錬場がよく見える、と仰せになり、陛下はここで寛いでおられる。
眼下には、『竜騎士の花嫁』『救国の聖女』と華々しい称号を持つはずの令嬢が、土まみれになりながら、我が国最強の騎士の剣・・らしきものを避けている。
・・・もちろん手加減はされているが。
『ひぃぃ!ま、まだまだぁぁ!!』とか『根性で避けろ』とか聞こえてくるが、私は知らない。
ああもちろん、一切知らない。
「わし、仲良くなってたと思ってたのにのう・・・一言くらい・・・」
「よろしいので?陛下」
いじけ続ける陛下を無視して、単刀直入に伺う。
たとえそうは見えなくとも、あれほどに影響力のある令嬢だ。
ましてや、忌々しい彼奴らめをおびき寄せるには、格好の存在だ。
だから、囮になどせず、牢に閉じ込め迎え撃ったほうが得策ではないだろうか。
そう思い進言するが、陛下は緩やかに首を振る。
そして、悲しげな顔をした。
「わしらはの、ルルリーア嬢に借りがあるのじゃよ」
そう陛下に言われ、私の脳裏に浮かぶのは、5年前におきた痛ましい事件だ。
やつらは目的をはたすための陽動として、各地で惨事を起こした。
多数の民を殺害し、多数の民の心に傷を負わせて。
そして、その被害者のひとりが、ルルリーア嬢だ。
「五年前のあの時、惨事を防げなんだことと、彼奴らめを取り逃がしたことが、のう」
陛下は悔しげにいういうと、椅子に乱暴に座る。
ふう、と溜息をつくと、外の景色を、柔らかい目でみる。
「それに、わしはのう、あの子はあの子の、思うままに、行かせたいだけなんじゃ」
そう言い切る陛下の存在を大きく感じる。
・・・この懐の深さに魅せられ、陛下の元に下る人間は多い。かく言う私もその一人だが。
「なに、彼奴らのことだ。龍紋を得なんだも、次の手をうってくるじゃろ。いやもううっているかもしれんの」
まあ、確かに、現在、『地脈』が乱れ、それに当てられた魔物たちの増加が次々と報告されている。
この分だと、近いうちに大量の魔物が、それもより強力となった魔物が、我が国へ襲い掛かってくるだろう。
「ならば、彼奴ら自身を叩くのが一番手っ取り早い。・・・そしてその企みごと、叩き潰してくれるわ。五年前の礼に、の」
にやりと凄む陛下につられて、私も笑う。
そうでしたな、我が国の民が傷つけられて、黙っておられる陛下ではございませんでしたね。
・・・まあ、私も気持ちは同じ、ですが。
「失礼致します!陛下っ宰相閣下っ」
「・・・報告を」
「はっ。第一、第二補給部隊並びに国境防衛隊の準備、完了致しました!」
そう言う彼は、ココにいるべき役職ではないのだろう。
明らかに緊張しすぎた伝令騎士だ。
まったく、ライオネルの奴め、手間を省いて部下に直接報告させたな。
・・・騎士団の長たるものが示しがつかん。
「了解した。引き続き準備に当たってくれ」
「はっ、了解致しましたっ」
王の前であるというのに、飛ぶような速さで退出する騎士。
・・・まあ今は小言を言っている場合ではないか。
「さぁ、大人は大人で、準備でもしようかの」
「はっ」
ではさっそくと、『防衛戦における各種人員配置、及び補給部隊の編成と物資について』の資料を、どさりと取り出すと、陛下はあからさまに拗ねた顔をした。
「それ、ライオネルに任せられんかの?」
「出来ません。各部門との包括的採決をして頂く必要がありますので。陛下」
はぁ、とため息を洩らしつつも、素晴らしい勢いで片付けていく陛下。
戦が始まろうとしているのに、その姿を見て、私は満足気に笑みを浮かべた。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※よってらっしゃいみてらっしゃい。蛇足的な裏設定ですよ?
※裏設定
・神官様(『ご乱心じゃ』と叫んだ人)
長く神に仕えるおじいちゃん神官。神官長がドラゴンマニアであることは気づいておらず、何事にも柔和な笑みを崩さない彼を慕うものは多い。が、命を賭けて誓うという誓約を、神官長が若い娘に無理矢理させようとしているのを見て、混乱。もしや精神撹乱の魔法でもかけられたのかっ!?←イマココ
・魔術師様(『今のうちに早く』と叫んだ人)
魔術師団長とドラゴン情報は慎重に扱わなければならないため、団内で苛烈な押し付け合いの末、ドラゴン情報係になってしまった彼(彼女募集中)。なのに気にせずドラゴンの話をほいほいする主人公を見てハラハラしていたが、ついに団長が、誰も中を見たことがないと噂の部屋に連れ込もうとしていたので、思わず飛び出したけど、この猛獣どうしようっ!!←イマココ
・主人公
よし!準備は整ってきたぜ!!ばっちりかかってこいやぁぁ!って騎士団長ぉぉ!!も、もうちょっと手加減してぇぇぇ!!←イマココ




