60.クラス内トーナメント準決勝シノグvsリョウ
リョウ視点とシノグ視点です。
1、カリバーン●vsスート○
カリバーンにスートが勝つのか、しかも相手の全力をねじ伏せての勝利だからな。
ということは、決勝はスートか。
それにカリバーンのあの神速斬を1度見ていたとはいえ避けられたのが流れを変えたきっかけだろうな。
それに、リンダの技構築を隠すやり方をすかさず真似して自分の技を構築していたからな。
あれをやられると余程警戒していない限りは察知できないし、察知した所でそれを防ぐのは難しいだろう。
そして、極めつけはスニークデス、ミラージュだろう。
カリバーンは何が起きたのかわからなかったみたいだが、スートはまずストルピアとダブートピーア発動後に、スニークデスを発動させると同時に、それを見破られないように自分の幻影をその場に置いておいた。
それにより、カリバーンはスニークデスを使われたと思わないで警戒が甘くなり、今の結果に繋がったわけだ。
相変わらず技の使い方がもの凄く上手くなっていて驚く限りだな。
そして、次は俺の試合だが正直どうしようか迷っているんだよな。
あの成長速度は驚異であり、俺はそれがどこまで行くのかを見てみたい。
けれど、このトーナメントでは制限を掛けて戦うと決めたから、それをどうしようかが悩み所だ。
まあ、既に暫定的な武術大会予選のメンバーには決まっているから、勝ちよりも成長を優先させるか。
シノグがシュウと同じくらい強くなれば更に俺の実力も上がるだろうし、シュウにも良い土産ができる。
俺はなるべく経験を積ませるように戦うことを決めた。
これでどっちが勝つかはわからないが、まあそう簡単に負けるつもりもないからな。
制限を無くす事を決めてシノグとの対戦を待つ。
ゆっくり戦闘開始地点に歩いてくるシノグ、最初に見たときとは比べ物にならない程の生命力と魔力を持っていた。
少なくても、ハーレムメンバーに劣らない位までは上がっていたのを見て、俺との試合後を楽しみに思いながら、向かい合う。
さすがにここまで勝ち上がってきただけあって俺の飛ばすプレッシャーにも耐えられるみたいだな。
「シノグ、君がここまでの実力を持っているとは思わなかった、言っちゃ悪いけど俺の周りの女の子達以外に勝ち上がってくるのはカリバーンくらいしかいないと思っていたんだけど、良い意味で裏切ってくれて良かったよ。」
「リョウ、俺はあんたの実力に憧れていた、だからこそ今こうしてあんたと戦えるのが嬉しくて仕方ない、だけどあんたはこの試合で全力を出さないで戦ってるんだろ?、そこが残念で仕方ないが、まあそれでも勝てなきゃそれに何も言えないからな、勝たせてもらうぜ。」
「ああ、安心しなよ、俺はシノグの成長速度が楽しみだ、だから俺はシノグがどこまで伸びるのか見たいからここからの試合は全力で戦うことにしたよ、簡単にやられるなよ?」
「マジかよ!、それは願ってもみないチャンスだ!、そんじゃ俺は全力を尽くさせてもらう!」
「望むところだ。」
こうして俺とシノグの準備が出来たところで、審判が上がってきた。
《今回は私、リナが審判をやります、もう準備は良いよね、それじゃあ試合開始!》
「ウエイトマジック、レインボー!」
「一の剣、ブラーク!」
展開する100を優に超える7色の魔法、そして二刀流の剣をオーラ状態にさせる。
そして、身体強化で今の身体能力の20倍まで上げる。
そして攻撃を始める。
∨∨∨
「じゃあまずは俺の魔法を防ぐとこからスタートだな。」
おいおい、わかってはいたけどおかしいだろリョウ!
焦りながら魔法を避けていく俺だったが、魔法は全て俺を追尾してくる。
この量を自在に操れんのかよ!
俺は舌打ちしながら剣で魔法を斬り裂きにいった。
そして、魔法に触れた瞬間、俺はすかさず地面への受け流しに変え、魔法の反動で吹き飛ばされた。
そして、その反動を身に受け俺は自分の判断が正しかったことを知った。
なんだよその魔法の威力!
下手な技よりも圧倒的に強いじゃねーかよ!
俺は何度目かわからないほどの舌打ちを繰り返しながら魔法への捌きかたを考える。
リョウの様子を見る限り、まだまだ手加減されているのが目に見えてわかる。
実際、あの魔法を同時に飛ばされたらどうしようもないのだから。
俺は前の試合の時のように、思考速度を時が止まるほど上げていき、リョウの武器強化を真似ていく。
だが、やってみてわかる、これは魔法の同時使用とかそんな物よりも明らかに難しい。
前の試合でスートが使っていたが、それよりも更に完成度が高いようで、込められた生命力や魔力の密度が桁違いだ。
それでも思考速度が上がっているお陰で何とか劣化版だが身に付ける事が出来た。
そして、強化した剣で魔法を斬り裂いてみる。
すると、今度は何とか魔法を真っ二つにする事が出来た。
安心したのも束の間、次々と魔法が飛んでくる。
しかも、俺の強化剣が出来たのに合わせて魔法の物量を上げてくる。
まるで、俺の成長に合わせた訓練をしているかのように。
舐められてるのがわかるが、そんな事に怒りを感じてる場合でもないし、そんな感情を持つはずもない。
なぜなら、今リョウが手を抜いていなければ俺との勝負はとっくに俺の負けで終わっているからだ。
圧倒的な実力差に諦めることなく魔法を次々と斬り裂いていく。
段々と俺の剣速、強化剣の質、動き方が洗練させていく。
それでも一向にリョウとの実力差は埋まる気配はない。
むしろ、実力が上がるにつれてリョウとの実力差を正確に把握できてしまう。
そして、圧倒的な差を実感する。
俺はそんな事実に自然と笑みを浮かべながらリョウの魔法を全て斬り裂いた。
まだまだ上には上がいて、そんな相手が自分を鍛えてくれている。
これほどの環境はそうそうあるものじゃない。
そんな俺の幸運に感謝しながら、魔法を捌いた俺はリョウとの距離を詰める。
そして、思考速度を上げてリョウの一挙手一投足を見逃さないように見ながら攻撃を仕掛けにいく。
だが、リョウに隙や癖のような物が何一つ見つからず、それどころか俺の間合いに入っても動く気配すら見られない。
一撃入れてやる、そう思いリョウに剣を振る。
思考速度が上がっているし、身体強化もしているからそうそう反応できる速度では無いはずだが、リョウはそんな常識を軽く覆す。
俺の剣を人差し指と中指で挟んで止める。
俺はそんなリョウの技量に驚愕しながら剣を抜くために様々な方法を試す。
それでも、全く抜ける気配がない。
「近接戦闘するにはまだまだ技量が足らないな、まあそれでも、その観察力はさすがだな、ちゃんと俺の打たせたい所に剣が来たからな、俺の作った隙が見えたって事だろ、という訳でもっかい出直してこい。」
そういって俺は剣を持ったまま投げられる。
その速度はスートの槍が投げられた時と比にならない程の速度だ。
俺は再び思考速度を上げて、対処法を考える。
そして、リョウの魔法を思い出し、それを自己流にアレンジする。
「逆風、嵐!」
凄まじい風が俺の後方から発生し、投げられたスピードを何とかころし、ダメージなく着地することに成功する。
だが、それで安心できないのは今までの戦いからも予想できた。
リョウの方を見ると再び用意された魔法が俺に飛んでくる。
その数はさっきの倍になっている。
俺はまた一つ一つ斬り裂きながら再びリョウとの距離を詰めていく。
魔法の処理になれた俺は剣が1本なのを忘れるくらいの手数で魔法を捌いた。
そして、再びリョウの間合いに入ると今度のリョウは剣で相手をしてくれるみたいだ。
俺は魔法を捌く事で鍛えた剣でリョウの剣と打ち合う。
事はできなかった。
リョウの剣に触れた瞬間、壁に剣を振ったかのように、全く効果がなく、それどころか軽く防御の為に動かした剣に触れただけで俺ごと再び吹き飛ばされた。
「逆風、嵐!」
風の力で吹き飛ばされた勢いをころした俺だったが、身体能力の差にまたしても衝撃を受けた。
今までも身体能力の差に悩んだ事はあったが、そんな悩みなど無駄だったかのような圧倒的な差があって、改めてリョウという存在の完成度に感動した。
そして、それは希望でもあった。
人族でも極めていけばこれだけの高みに上れるのだとわかったからだ。
だが、今のままでは打ち合うこともままならない。
俺はまず、リョウの身体強化を観察するための時間を稼ぐことにした。
「風炎、炎帝!」
風で炎の勢いを増した炎の塊をリョウへと飛ばす。
もちろん、コントロールなどできるほどまだ魔法をマスターしている訳ではないが、それを補う大きさとエネルギーだ。
そんな俺の一撃を一振りで消し去る。
何となく予測できてはいたが、相変わらずの出鱈目さにため息を吐きながら、再び魔法を放っていく。
「光と闇の集合体、ブラックホール!、風土炎水、オーロラ!」
二種類の魔法をリョウへとぶつける。
これだけでも、普通の相手なら受けることも相殺することも出来ないくらいの破壊力を持っているのだが、リョウには意味がないみたいだ。
「イーブン!」
リョウの魔法で2つの魔法はあっという間に相殺され、ゆっくりと近づいてくる。
だが、時間稼ぎは何とか成功して、身体強化の効率と質を上げて、前よりも圧倒的に強化できた。
そして、リョウへと1歩踏み出す。
今までと比べ物にならない程の速度でリョウとの距離が縮まっていき、リョウと剣を合わす。
リョウの剣とぶつかったが、さっきのように吹き飛ばされる事はなかった。
それでも、まだ剣をぶつけ合うとダメージはあるのだが、耐えられるくらいのレベルになっただけ儲けものだろう。
「相変わらず短時間の間にものすごい勢いで成長するな、俺の動きをどんどん吸収していくのを見ると面白いな、さてこれでようやく剣同士で戦えるな、じゃ俺の動きにちゃんと着いてこいよ?」
そういってカリバーンに勝るとも劣らない程の速度で剣を振ってくるリョウ。
思考速度を上げて何とか反応できるが、あれに剣をぶつけ合うのはまだ出来なそうだ。
だが、避けてばっかりではいられないため、身体強化の効率を更に上げていき、そこから自己流の感覚を足していく。
すると、思考速度と対応して身体が徐々に反応するようになってきた。
そして、歯車が今までよりも更にきっちりはまる感覚が身体に伝わり、俺の思考速度と身体の反応が同期した。
そして、時が止まるほどの時間の中でリョウへと攻撃を仕掛ける。
ここは俺の世界であり、リョウも反応していないから、俺の思考速度に追い付けないだろうと思っていたのだが、リョウは俺の一撃をあっさりと防ぐ。
「その思考速度と処理速度は素晴らしいな、まあまだ俺の領域までは来てないらしいけどな。」
そういって俺の攻撃を次々と捌いていくリョウ。
俺の一刀流は同じくらいの相手なら二刀流でも問題なく戦えるが、格上となれば手数が圧倒的に足りない上に、簡単に押し込まれていく。
それでもまだ諦める訳にはいかず、少しずつ動きに対応していく。
けれど、そこで俺は気づく。
これだけ俺の実力も上がり、ものすごい速度で成長しているにも関わらず、リョウとの差が詰まることはなく、むしろリョウとの差がどんどん広がっていっている。
これは、実力を正確に理解できてきて、リョウとの差を実感したあの時と違い、そこから更にリョウとの差が拡がっていることの証明だった。
その事実に驚愕を隠せない俺は、段々と剣筋が鈍っていってしまう。
あれだけ強いのに俺よりも更に速い速度で成長するのかよ!
それに心が折れそうになる俺だったが、そんな俺にリョウは声をかけてくる。
「何となくシノグが絶望するのもわかるが、本来俺と戦うなら、これだけ善戦することも出来ないんだぞ?、俺がどんなに手を抜いた所で戦えない奴は俺と戦えない、それに比べてシノグは、確かに俺に劣っているかもしれないが、それでも俺とここまで戦えるんだよ、ならそこに自信を持ってこれから俺を超えるための何かを見つけろ、多分シノグにはそれが出来るはずだ、だから折れるな。」
その言葉に俺はリョウを信頼する人達の気持ちがわかった。
圧倒的な実力を持ちながらもきちんと周りの事もみてくれて、考えてくれる。
そんなリョウだからこそ、目指したいと思える。
俺は先程折れかけた心が強固に繋がるのがわかった。
そして、それを見たリョウは笑顔で俺をみて首筋に剣を突き付ける。
それは俺が見ることも反応することもできなかった。
《そこまで!、勝者リョウ!》
俺は新たな目標を胸にトーナメントを終えた。
更新遅くなってすいません。
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