21.ドーマ先生
リョウ視点です。
「先生どうしたんですか?、もしかしてさっきのはまずかったですか?、でもさっきのは正当防衛ですよね?」
{えっと、さっきの件はこちらも止める事が出来ずにすいませんでした、でも呼び止めた理由は違う理由です、あなたの魔法は私の求めているものに限りなく近いものでした、それにそちらの獣人族の方も魔法を使っていました、それについて聞きたいのです!}
うわー、想像はしてたけど何か面倒な事に巻き込まれそうな予感。
俺は苦笑しそうになるのを何とか抑え、質問に応える。
「俺は先生の授業を受ける前にもう少し恵まれたスキルを手に入れていたので、先生の授業のおかげでより魔法について理解が深まりました、それがおそらく先生の求める魔法の理想にたまたま近くなったんだと思います、彼女が魔法を使えるようになったのは、彼女の努力と俺の魔法観がたまたま噛み合ったからですよ。」
{その魔法観を教えてほしいのです!、それはもしかしたら魔法の本来の歴史を蘇らせる事に繋がるかもしれません!}
「うーん、教えるのは構わないのですが、条件を付けてもいいですか?」
{私ができる範囲ならいいですよ?}
「それでは、俺が教える代わりに金クラスの仲間の地位の向上に協力してください、俺たちは次の武術大会の予選をトップ通過するつもりです、その時に俺たちを認めない人達も出てくるかもしれないので、その人達の説得をお願いします。」
{わかりました、どこまで出来るかはわかりませんが協力しましょう!、それではあなたの魔法観を教えてください!}
こうして俺は今まで俺が得てきた魔法の知識の解釈を伝えた。
俺の話を聞いて、目に鱗といった感じの雰囲気だったが、誰でもすぐに俺のやり方を受け入れて使えるようになるわけではないだろう。
長く魔法を使ってきた人ほど、俺のやり方はその根本から変えるものであるため、切り替えが難しいのだ。
しかし、この先生がどれだけの発言力を持っているか分からないから、今回のは保険くらいの思いでいよう。
それに俺の魔法のノウハウが他に伝わった所で俺には何ら問題はない。
俺はそれを同じクラスのメンバー達にも伝えているし、彼らのスペックは全体的にパッと見てきた他のクラスのメンバーに勝るとも劣らないとのだった。
それに相手は俺たちの事を舐めている。
これだけの条件がつけば、彼らの頑張り次第だが負ける心配はないと思っている。
1ヶ月後の予選はトップになるのは絶対条件だ。
そこに到達して俺たちは初めて周りの評価を変えるための足掛かりとなるのだ。
その後にどうなるかはまだわからないが、いつかは全クラスが互いに交流を持ち、互いに高め合える関係を作れればいいと思っている。
そんな事を考えていた俺に先生が話しかけてくる。
{なるほど、確かにあなたの魔法観は今の魔法観と大きく異なっていますし、私の理想そのものですね、これで私もあなたと同じように使えるようになれればより深く魔法を理解できます、ご協力ありがとうございます、よろしければ名前を教えていただけますか?}
「そう言ってもらえて俺も説明した甲斐がありました、俺の名前はリョウ=テンジンです、また機会があればよろしくお願いします。」
{私はミサ=マホムです、リョウくんとの約束はしっかり果たしますね、それでは気が向いたらまたこの授業を受けてくださいね。}
そういってようやく俺たちを開放してくれたミサさんに見送られながら体育館を後にした。
「ルイ、この後は何か予定があるか?」
《うーん、このあとは決めてないよー、リョウはどっか行きたいとこあるのー?》
「他の授業も見てみたいな、どんな感じなのか。」
《じゃあ、リョウのやってみたい授業を片っ端から回って行こーう!》
そういってルイは俺に授業の日程表を見せてきた。
え、なにこれ、こんなんあるならみんな教えてよ!?
俺は心の中で叫びながらも日程表に目を通していた。
そして、面白そうな授業を見つける。
「俺この魔力研究ってやつ行ってみたい!」
《いいよー、ただその授業先生が特殊な人で未だに受講許可がおりた生徒がいないって有名なんだよー!》
それって授業を開設してる意味あるのかな?
俺はそんな疑問を持ちながら教室へと向かう。
というか、ビックリしたのはその先生の教室が金クラスのある校舎にあったからだ。
しかもそこは普通の教室だったはずなのだが、入ってみるとそこはかなり広い研究所だった。
え、なんで部屋変わってんの!?
俺とルイの驚きをよそに部屋の主が俺たちに声を掛けてくる。
{あれ?、もしかして君たち僕の授業を受けに来たのかい?、随分物好きなんだね、まあいいや、じゃあ適正テストするよ、魔力を使って何かやってみてよ。}
そういってこちらを見定めようとする視線を向けてきた先生。
白衣を着てメガネを掛けたやせ形の高身長、顔が無駄にイケメンな事を除けばどこの研究所にでもいそうな雰囲気を持っていた。
目に魔力を集中させているみたいで、どうやら魔力の流れを見ているようだ。
さて、何を見せれば良い反応を見られるか考える。
ルイなら多分、普通に魔法使うだけでも受かる気がするな。
となると、俺が魔法を使うのはやめておくか。
それで相手の興味を引く魔力を使った何かって言われたら、道具生成しかないよな。
ただ、何を作るかなんだよな。
何を作ってもそこそこ反応は返ってくるはずだから、今後使いそうな物がいいからな。
そういえば、リンダに渡した自在剣は割と面白そうな装備だったな。
決めた、自在剣を作ろう。
俺が悩んでる間にルイは即決で魔法を使うことにしたようだ。
今回のは前のと違って攻撃的な感じがないが、結構な魔力を使ってるな。
しかも、俺に当てようとしてきてる。
属性は無属性か。
俺は苦笑を浮かべながら、ルイの魔法の完成を待った。
《伝われー、幸せよ、ハピネス!》
そうして受けた魔法はリラックスと似たような感覚だったが、同時に何でもできるかのような高揚感も感じる。
これはすごい魔法だな。
疲労回復と精神の強化を同時に行えるから、わりとどこでも使えそうだな。
先生の方も、ルイが魔法を使える事と見たことのない魔法にテンションが上がってるようだった。
{素晴らしいよ君!、君の魔法は世の中の魔法に革命を起こすかもしれない!、うん合格だ!、授業の参加を認めよう!、名前を聞かせてもらっていいかな?、あ、ちなみに知ってるかもだけど、僕はドーマ=サイエンだよ!}
《ドーマ先生ありがとうございます、ただまだまだ私はここにいるリョウの足元にも及びませんよー!》
そういって俺に期待の目を向けてくるドーマ先生。
というかルイは変にハードル上げるなよ!?
何かやりづらくなるだろ!?
そういって視線を向けると、テヘっという効果音が付きそうな表情と仕草を俺に向けていた。
かわいかったので俺は何も言えなかった。
今度は俺の番なので、気持ちを切り替えて意識を集中させて、魔力でイメージを再現して生命力で具現化させ、効果付きの魔力を込める。
思い通りに動かせるコントロール、武器の性質を変化させるマジックチェンジ、自動修理のリペア、刃を鋭くするキーン。
最後に逆境を覆す意志を込めて完成。
完成した自在剣は、フリスネイドで俺の魔力の込められた伸縮自在の剣の芯に7つの刃が触れれば斬れるくらいに鋭い状態で取り付けられ、先端は剣のようになっている。
それを身体と一体化させる。
一部始終を見ていたドーマ先生は興奮と驚きでテンションがおかしくなっていた。
{すごい!、素晴らしい!、ファンタスティック!、君は僕の想像が追い付かないほどに遥か先を行っている!、しかもその魔力も技術も全てが異常で規格外だ!、今日ほど楽しい日はないよ!、新たな発見をこの目で見られたのだから!、さて君の名前を教えてくれないか!、君には僕の授業というか研究を手伝ってほしい!、むしろこちらが頼みたいくらいだ!!}
「俺はリョウ=テンジンといいます、先生の研究とはなんなんですか?」
{リョウか、いい名前だね!、僕の研究は魔力の可能性の探求だ!、みんなの持っている魔力でいったい何ができるのかを見つけていくものだ!、今まで着た生徒達はアホみたいに魔法を打つだけだったから授業もとい研究を許可しなかった、だがリョウとルイは違う、それぞれ魔力を自分で自由に操っている、僕はそんな人材を求めていたんだよ!、それで協力してくれるかな?}
「とても面白い研究ですね!、提案があります、俺は金クラスなんですが、クラスメイト達も魔力を自由に操れます、どうです?、うちのクラスのメンバーも参加させませんか?」
{これは面白い提案だね、金クラスといえば他のクラスから見下されていて見所がないと思っていたのだが、その話はホントかな?、もしそうならこちらからお願いしたいとこだね!}
「それでは、この校舎側の体育館に行きましょうか、実際に見てもらうのが1番ですからね!」
よし、これが上手くいけば先生の知識と他の誰も受けられなかった授業を金クラスが受けられたっていう評価も手に入る。
それに、俺もこの研究には興味がある。
俺の(魔力創造)には俺の想像できない使い方があるのかもしれない。
それを見つける手がかりにもなるだろうし、スキルは経験で覚えるものだから、いつか俺と同じ事をできるようになる人達も出てくるかもしれない。
これはその第一歩だ。
俺はそんな事を考えながらルイとドーマ先生と共に体育館へと向かった。
次回更新は5/18です。
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