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星と羽虫  作者: 病気
第三章
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4. 飛翔





「我ら裁きの三位教団の教義はご存知でしょうか。巷で虫化と呼ばれる現象を神聖な祝福として享受し、世の全ての人々に虫化を齎すことを最終的な到達地とする。私達が瞑想と呼ぶのは、人の身のまま虫人間に近づくための修行です」


 相変わらずの悪ふざけのようなサイケデリックな壁に囲まれた部屋の中央には、トルトイドがすっぽり入るくらいの巨大な壺のようなものが置かれており、そこから全方位に向けて無数の管が伸びている。簡素な敷物の上に背筋を曲げて座る信徒達はその管の先端を自らの口に運び、そこから吐き出される煙を一息も逃すまいとばかりに一心不乱に吸い込み続けていた。だが、大分逃しているようだ。おかげで私はむせてしまったし、両目もちりちりと痛む。


「あれでどうして虫に近づけるんだ?」


 痛む目をよく凝らして見ると、黒光りしている管の一本一本は、すべて虫化した者の四肢のようだと気付いた。確かに虫人間の甲殻化した四肢は内側の筋を除去すればいくらか筒として使える形状なのかもしれないが、本来気体を漏らさず送れるようなものではないはずなので、複数のそれを鉛かなにかの金属で溶接加工しているようだ。芸術作品である。


「中央の壺で焚いているのは灰色カエデの樹液から抽出した一般的な麻薬ですが、虫化末期の者の心臓が一緒に入れられています。虫化を人為的に誘発することは出来ないとされていますが、実際には虫化した者の体を気体の形で取り入れることによってその時期を早めることが出来るのです。現在大陸中で一般的となっている虫人間を火葬する習慣ですが、それが虫化の原因の一端になっているとは、悟りに目覚めていない者たちにとっては皮肉なことです」


 テリリドニジグの者たちがもっと確実な手段で虫化を誘発できることについては言わないほうがいいのだろう。しかし今までの経験から考えると、虫化した者の心臓を利用すると言うのはかなり正解に近いように思える。カルトの儀式も舐めたものじゃない。


「…麻薬は要るの?」


 私は管に繋がれた瞑想者の一人が顔面から床に突っ伏して痙攣しているのを指さした。


「虫人間の持つ攻撃性と人類への憎悪を体験、体得するために必要なことです。私も大分分かってきました!」


 人間の狂気の前では虫人間の殺戮本能が随分と純粋なもののように思えてくる。だからこそ彼らもそれに憧れているのだろうか。順番が逆なような気がしないでもないが。


「トルトイド師は宗教的な悟りとは別に、科学的な熱意に基づいて虫化した者や虫化途中の者の身体を長年研究してきました。あの無敵の肉体は動く虫人間を間近で観察し、生きたまま解剖するという目的のため血の滲む努力の結果手に入れたものだそうです」


 動機はともかくとしてその情熱についてはちょっとだけ尊敬するな。この瞑想とやらも宗教的な意義だけでなく、被験者の特定物質の吸入による変化を観察する目的もあるのだろう。話を聞く限りテリリドニジグの関係者ではなさそうだが、もしそうであればきっと優秀な研究者として重用されただろうし本人も幸せだったろうに。


 結局私は室内には一歩も立ち入らず、そっと扉を閉めた。瞑想以外にもいくつかの修行方法があり、その手段それぞれに部屋が割り当てられているそうだが、もうたくさんである。気が狂う前に、壁に落書きの無い応接室へ戻るべきだ。


「教団の構成員は全部でどのくらい居るんです?」


「ここラカモザにおいては師を含めて四十人です」


「僕は含めてないでしょうね」


「預言者様と監視者は含めません。ただ、師がおっしゃるには、ここは地方の一支部でしかないため、帝国全土においては千人程度居るそうです」


 カルトは信者数を水増しして告げる習性があるので千人というのはハッタリだろうが、別の地方にも構成員がいるということ自体は真実であるかもしれない。


「お茶をお淹れします。ソファでお待ちください」


 ベテルが再び食堂へ行ってしまったので、結局私は一人応接室に残された。茶を持って来るまでの短い隙にでかい奴が帰ってこなければいいが。


 カナベロが言ったとおり、彼らは確かに破滅主義者だった。しかもだいぶ度が過ぎている。先ほどリビングで談笑していた楽しげな若者達も近い将来の破滅を自ら望んで生きているのだ。私もしばしばやけを起こして身を危険に曝すことがあったが、それはあくまで切羽詰った状況でのことだ。笑い合えるような仲間が居る環境で敢えて破滅に向かおうなどという感覚はどうにも理解が難しい。


「お待たせいたしました預言者様」


 すぐに破滅主義者筆頭のベテルが茶を持って戻ってきたが、その両手はカタカタと震えて内容物はカップから零れている。顔面お茶だらけになる経験は無くもないが、私の目の前でぶちまけたりはしないでほしい。


「いただきます。…えっと、尋常じゃなく美味しいですが、これは何のお茶ですか?」


「灰色カエデの葉と樹液から煮出しました。我が教団とっておきの味です」


「…へぇ、なるほど…」


 何か言おうかと思ったが美味しいからまあいいか…。この茶葉が教団の資金源と言われても納得できる。


 二度と飲みたくはないが最高に甘くて美味い灰色カエデ茶を飲んでしばらく待つと、応接室の戸が静かに開いた。咄嗟に身構えたが、そこには身を屈めて入ってくるような大男は居ない。小柄な女性が二人居るばかりだ。


「アイリスじゃないか。やっぱり君が破壊のなんとやらなのかい」


「こっちが聞きたいですよ。起き抜けにいきなりこんな気持ち悪いとこに無理矢理連れてこられて、どういう類の冗談ですか?」


 案の定、もう一人の預言者とやらはアイリスのようだった。向こうも案の定と感じているのか、私の存在に驚く様子も無い。


「同志ニニュイよ。破壊の預言者を無理矢理にお連れしたのか?」


 すべてに死を齎す破壊の預言者とやらは女性が一人で無理矢理連れてこられるレベルの存在らしい。


 ニニュイと呼ばれた、私と同年代であろう若い娘はその丸く大きな目を心持ち細めて、口元を歪ませた。


「え?至極丁寧にお迎えしたけど。ちょっとアイリスさん、誤解招くような言い方やめてくださいよ」


 再びベテルが泡を吹く。


「カァーッ!!なんと馴れ馴れしい言い草だ!あまつさえ預言者様を真名でお呼びするとは」


 名前を尋ねようともしないのは敬意の表れだったのか。人から軽視されることに慣れすぎたのでそんな発想はまったく出てこなかった。


「そういえば名乗る機会を逸していました。失礼しました。僕はヌビク=リフュルシュと言います」


「ひぃ!畏れ多い!畏れ多い!」


 万歳の姿勢で飛び退きひっくり返りそうになっているベテルと対照的に、ニニュイは腰に手を当てて憂鬱そうにため息をつく。


「はぁ…。この人いつもこんな調子で芝居がかってるから真剣に取り合わなくていいですよ。名前を呼んだらいけないなんて決まりも別に存在しないですし。私は触手のひとつ、ニニュイです。ご覧の通り他の人よりは頭が若干正気なので対外的な役割をよく任せられます」


 正気な人間が居たとは驚きだが、自己申告なのでそこまで当てにするべきでもないかもしれない。


「本当に正気ですよ。若干ですけど」


「疑ってませんよ。よろしく、ニニュイ」


 不満げに顔を背けてしまったニニュイにベテルが近付き、こそこそと密談を始めた。話の内容はおおよそ察しが付くので、私はアイリスに向き直る。


「瞑想室はもう見たかい」


「なんですか?見てないですし、見たくもないですね。お酒を出すって言うから付いてきたんですけど…、お茶なんか飲んでたんですか?」


「やっぱり絶対見たほうがいいな。戒めになる」


「あー、戒め。十ある嫌いな言葉の一つですね」


 絶対既に十以上あると思うが、そこに『中毒』あたりも含まれてくれると良い。


 その時突然、室内の空気がピッと張り詰めたような感覚が襲ってきた。私は茶を置き、立ち上がる。隠れ家内に大きな存在感と極めて大きな質量を持った存在が入り込んできた感じだ。それは物音や振動などを伴っていたわけではないのだが、私と同時にベテルも応接室の入り口へとさっと目を向けていた。


 そして、ドア枠どころか、もう少しで天井までその禿頭が届きそうな巨体が姿を現した。不真面目そうな印象だったニニュイさえも即座に、ドアの両脇でベテルと対称になって姿勢を正した。


「よくぞ召喚に応えられた、預言者殿」


 異様なる巨躯を持つ教団のリーダーと思しき男、トルトイドだ。苗字は省略する。


「え、ええ…。ヌビク=リフュルシュです。ええと、何故僕らが預言者ということになったのか、まずは説明を頂きたいです」


 間近で見るとなおのことでかいな。予め身構えていたにもかかわらずやはり多少うろたえてしまった。高さだけでなく幅もでかい。入り口を身体を斜めにして入ってきた。


 隣のアイリスはこのデカブツを初めて見ただろうし、私のように覚悟していたわけでももちろんないだろう。突然の怪物の登場に言葉の一つもなく、ソファの上から立ち上がることすら出来ず嵐の日の家猫のように震え上がっている。罪無き彼女はタダ酒をせびりに来ただけなのに哀れなことだ。


「黒の監視者、カナブーニウェロラッハが三位一体のうち二柱の預言者の到来を告げたのだ。そして、その奇跡の力を引き出す術について手ほどき差し上げることが我らに課せられた使命だ」


 よくカナベロの本名をすらすら言えるな。覚えにくい名前同士シンパシーがあるのだろうか。


「確かに僕もカナベロから、貴方がたがその役割を果たしてくれると聞きました。ただ僕らにその見返りを求めるつもりであれば、何をさせたいのか予め聞いておきたいです。場合によっては期待に沿えません」


 この集団は明らかに人の命を軽んじている。力の覚醒とやらを手伝ってもらった後で、その力を使って人を殺せなどと言われても困る。


 それは当然の意見だと言わんばかりにトルトイドは諸手を広げ、頷いて見せた。


「我らは信徒であり、預言者は物質界における神の意志の顕現だ。信徒は神への奉仕に見返りを求めることはない」


 見た目が怖くて頭もおかしいのになんて敬虔なんだ。神の意志の顕現になってよかった。


「ね、ねえ、ちょっと、どういうことなんですか。なんで貴方だけ状況把握してるんですか。説明してくださいよ」


 アイリスが意味も無いのに足音を殺してかさかさと間近へ忍び寄り、私に耳打ちした。私も彼女に付き合ってひそひそ答える。


「聞くところによると彼らが君の力の使い方を指導してくれるらしい」


「勝手に決めないで下さいよ」


「テリリドニジグに行くまでもなく目的をある程度先に進められるかもしれない。タダみたいだし悪くないと思うんだが」


「勝手に決めないで下さいよ!強くなれるってどのくらいですか?そこの毛無し熊に勝てるくらいですか?」


「聞こえるぞ」


 私達はトルトイドの先導で応接室を後にした。背後からはベテルとニニュイが黙って付いてくる。ベテルは元々だが、ニニュイの表情もまるで死人のようだ。決して幸福そうな様子には見えないが、何故彼女はこの教団に所属しているのだろう。


 私達は瞑想室に立ち入る。内部の状況については私は既にベテルから説明を受けているが、アイリスはぎょっとした様子だ。管に繋がれたまま床で痙攣している者と私を交互に見ながら、あれはどうにかしなくていいのと目で訴えてくる。そうだ、そうだ。もっと動揺しろ。後で君の立場に置き換えてありがたい教訓を話してやる。


 トルトイドが振り向く。ただ振り向いただけなのにいちいち圧を感じる。アイリスが一歩後ずさる。


「この煙は一時的に人間としての自我を沈静させ、本来誰しもに秘められた虫としての意識をより鮮明にする効果がある。預言者殿、力の使い方を学ぶ前にこれをその肉体に取り入れるのだ」


 え…絶対やだ…。


「え…絶対嫌ですよ…」


 私でなくアイリスが言った。

 トルトイドは床で痙攣している者をしげしげと眺めながら頷く。


「ふむ…。まあ、やむを得んか。それでは、同じ材料から煮出した茶を飲んでもらおう。直接煙を吸入するより即効性は無いが、その分副反応も弱く、常飲しなければ中毒性も無い」


 既に一杯飲んでいる。全部吐き出したいな。


「だが、そもそも破壊の預言者殿については既に力の扱い方を心得ているはずだ。茶を飲む必要は無い」


 茶を飲まなくて済んでほっとするかと思いきや、どちらに転んでもやはりアイリスは不満げだ。今回の状況に限ってはその不満も尤もではあるが。


「え?破壊のって私のことですよね?じゃあ私は何のために呼ばれたんですか?来た意味無くないですか?」


 結果論だが意味無くはない。ここでの経験とトラウマは君の節酒計画の一環となった。


「暇なら僕に付き合って一応訓練を受けてみたらどうだい」


「それはやめておきます。帰っていいですか。…ん?そういえば貴方も超能力者だったんですか?」


「そうらしいよ」


 以前アイリスの前で「テリリドニジグに行けば自分も強くなれる気がする」などとその場の勢いで嘯いたが、どうもそれも遠からずだったようだ。あの日の私がただの道化で終わらなくて良かった。


「ふーん…」


 アイリスはここでも何故か不満げだ。何故なのかはまったく分からない。私にずっと道化のままで居てほしいのかもしれない。


「師よ。一つよろしいでしょうか」


 だしぬけにベテルが挙手した。


「申してみよ」


 トルトイドに促され、ぎょろついた目を小刻みに動かしながら、前に出る。


「私の『目』で知覚したところ、破壊の預言者についても力が安定していません。監視者の情報とは一致しませんが、彼女も我らの導きを受けるべきかと思います」


 目だと?先ほどベテル自身が神聖な存在を見極める力とやらを仄めかしていたが、それは狂信徒の思い込みなどではなく、実際のものだったのだろうか。それともトルトイド共々信徒みんなで思い込んでいるだけなのだろうか。


「よもや取り違えたのではあるまいな?」


 トルトイドに睨まれ、ニニュイが竦み上がった。あれに睨まれて心臓が止まって死なないだけ偉い。 


「そっ、そんな!私は申し付けられたとおりに、特徴に合致した方をお連れしました!不死の預言者と同行していて、茶髪で、小柄で、陰気で、口が悪くて常識に欠けて…」


「誰が言ったのそれ。そいつを狩るのが訓練?」


 どうやらニニュイの方は『目』の能力は無い、あるいは、あると思い込んではいないらしい。


「いえ、師よ。彼女が特別強力な能力者であることそれ自体は『目』で知覚しています。これだけ特徴が合致していて間違っているということは考え難いです」


「あんたも合致していると思うの?」


 その後、結局訓練だか講義だかを共に受けることになったアイリスに茶を飲ませるのに小一時間を要した。正気を保てることを証明するために私が追加で三杯ほど飲む羽目になってしまった。もしかしなくとも酒を飲ませるよりよっぽど邪悪なことをしてしまったのではなかろうか。


「うわっ、何これ…。この世のものとは思えないくらい美味しい…腹立つなぁ」


 酒を辞めても代わりに麻薬茶の中毒になってしまわないかだけが心配である。


 二人が十分に茶を飲んだことを確認すると、我々は再び移動した。


 廊下は最初から薄暗かったが、先へ進むごとに設置されている照明の間隔がどんどん伸びていき、それに伴って両側の壁の模様の毒々しい鮮やかさが増していくようだった。いつの間にか、壁だけでなく地面や天井にも模様が表れている。


 進む先は暗闇でその終点が見えず、微妙に下り坂になっているのだろうか、奇妙に足取りが軽くなっていくのを感じた。岩壁を刳り貫いて作った構造物だ。完全に平らでなくともおかしくはない。


「随分長い廊下ですね。どこへ向かってるんですか?」


 私はそう問いかけた。はて、誰に向かって問いかけたのだろう。歩みを進める私の前方には誰も居ない。後ろを振り返ると、アイリスだけが付いて来ていた。最初は他にも誰か居た気がするのだが。


「お、落ちる」


 目が合うと、アイリスがそう声を上げた。

 うわっ、本当だ。落ちる!


 私達はいつの間にか垂直の穴の壁を下方向に向かって歩いていた。

 落下しないように上手く壁を駆けて底を目指さねばならない!


「走るんだ、急げ!」


 同時に駆け出す。

 壁の模様を頼りにするのだ。

 白の上に描かれる赤、青、そしてそれらを全て螺旋に吸い込んでゆく黒…。


 この色彩が混沌だと?

 否!笑わせるな。

 赤は動脈、青は静脈。この上なく整然としている。宇宙の秩序を支配しろ。

 片結びされた二色の血の道を介して聞こえてくる光と見えてくる呼び声、匂い立つ…痛み!


「ははは、なるほど。既に訓練は始まってたんだな!ははは、あははははは!あはあ!」


「ひひっ、ひいひい!これは、これは楽しいなあ。あはははは」


 白は宇宙の原初であり、そこにはまだ意識と自我は存在しない。

 我々はそこに赤という人間を足した。そして冷たき青によって奪う。

 ただ暗黒だけを残して去るのだ――そうか、最後にたどり着く場所…!

 黒、これが力か。梵我ッ!!


 私達は穴の底めがけて互いに追い抜き追い越し我先にと一切の照明のなくなった暗闇に向かって突き進んだ。光が無くなっても立ち止まる必要は無い。愚かな人類が混沌と呼ぶ秩序の宇宙が無限の色彩の絨毯を広げて細胞の根源へと導いてくれる。


「飛べそうな気がする!」


「名案ですね!」


 そうだ。走るのではない。落ちないためには飛べばいい。単純なことだ。物質世界に囚われていてはこんなことにすら気付けなかった。

 メセもこうやって飛んでたのかな。

 そして――オーリス。彼女は一番賢かった。実際に羽を生やしたのだから。


 左腕だ!!


「オーリスさん。そこに居たんだね」


 袖を捲り上げると、私の肘から下の皮膚は指先に至るまで変質し、薄く延ばした宝石のような滑らかな表面で七色の光が青を基調として煌いていた。忘れもしない、あの日見たこの世で最も美しい羽だ。冷たき青。そういや屋根の色と同じだね。


 顔を前方に戻す。眩い外の光が飛び込んでくる。


「出口だ!アイリス、掴まれ!」


「はい!」


 右腕でアイリスを抱え、左腕を天へと突き出し、私は暗黒から光の只中へと飛び出した。孤独の宇宙から人間の世界へと。


 そこは上も下も無い。陽の光差す、ひたすらの快晴の空。

 火照った身体が初冬の風に包まれる。


 私は蝶の羽を羽ばたかせた。

 三人はラカモザの壁の外を飛翔する。


「はははははははははははは」


「あはははははは、ははははは、ははははははははは」





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