6話 お菓子好きな彼女
「それはミルクティーです」
彼女が指さしていたものはそれだった。
「ミルクティー?」
「そう、ミルクティー」
その名の通り、ミルクの入った紅茶なのだが、ミルクティーを今どき知らない人などいるのだろうか?
妙な姿の彼女がもし日本に旅行に来ていたとしたら、少しは納得がいくのだが
「飲んでみますか? 僕が奢りますよ。」
さっきの寛大な心へのお礼として、奢ってあげよう。
「よろしいのですか?」
ストレートティーのように深い彼女の目は一層輝きを増して顔を覗き込んでくる
激しい運動後のような圧迫感が急に現れた。
やばい、こんな綺麗な人にみられた事なんて、
こんな事が現実にあるのか?
こんな至近距離で見つめられた事なんてないか僕には、女性が近くにいるだけでもドキドキするのに、そんな顔されたら
落ち着け落ち着け、一旦深呼吸だ
最悪の初対面からのこれだ。
もしこれ以上何か奇妙な行動を取ればさらに引かれて目覚ましビンタが僕の顔をお見舞いするだろう。
それに世間も許してはくれない
「勿論です。 好きなのを入れてください。」
近くに積まれている籠を持って手渡す。
僕のなけなしのお金がちょっと減るだけだ。
全然問題ない
そう思っていたのだが、彼女は僕の予想しない動きを見せた。
「じゃあこれと、これ! これも欲しい あれも!」
ミルクティーを奢るよと言ったつもりなのだが、これはどういうことだ?
全種類のミルクティーを籠に入れたのはまだいいだろう。
でも菓子、氷菓系のものも大量に籠に積まれていく光景が見える。
気がつくとコンビニでは絶対見れない業務用スーパーのような山積みのお菓子が見えた。
「あ、あわわ…」
僕の青ざめた表情を見て、彼女は問いかけてきた。
「奢って頂けますか?」
うるうるとしたその上目遣い
僕の心臓は破裂した
「お会計1万6800です」
これからは安易に奢るなんて言わないようにしよう。
僕は旅立つ諭吉に手を振りながら、帰ってきた野口さんを出迎える。
ふとお菓子の入った大きな袋を手に持ってルンルンな彼女の顔を見ると、「ありがとうございます」と帰ってきた。
ズギューン
「どういたしまして」
「またですか?その声、はははっ」
財布をしまい、封筒を手に僕らはコンビニをあとにした。
外はさらに冷え込んで、水道が凍りそうな気温になっていた。
ふと時計をみると、3時50分と書かれていた。
僕の青ざめた様子を見て彼女が問いかけてきた。
「もしかして、もう時間がないです?」
「うん、4時半にお母さんが起きちゃうからそれまでに帰らないとなんだ」
「そうなんですね と悲しそうな顔をしてうつむく。」
「コンビニでこれだけ時間を使ったの初めてだったよ。貴重な時間をありがとうね」
僕は彼女にお礼した。
「いえいえ、私もいろいろありがとうございました。」
お互いが互いに礼をする。
僕が失礼しますと走りだそうとしたとき、彼女に飛び止められた。
「あの、もしよかったらこれ、使ってください。」
それは色々な優待券が入った小さなポーチだった
見えるだけでもかなりの枚数がある。
「もらったはいいのですがあまり外に出ない性分なので、使ってくれたらうれしいです。」
「ポーチごと貰って下さい」
「本当にいいの?ありがとう」
「では、失礼します」
彼女はぺこりと頭を下げ、僕の家の反対側に走って言ってしまった
結局名前聞いてないや
そう思ったが、またどこかで会える気がする
これもまた一興
僕は緑の刺繍が入ったポーチをしまい、その場を後にした。




