五
勇一は部活を終え、部活疲れの残っている体に活を入れ、学校を後にした。
みゆきちゃんと一緒に登下校するのはまだまだ先になりそうだ。
勇一は家に帰る途中にあるスーパーで晩ご飯の買出しをしようと思ったが疲れているので止めた。
晩ご飯は冷蔵庫の中にあるもので適当に作ることに決めた。
勇一が家に入ろうとしてドアを開けた。
それと同時に双子は待っていた玄関で息の合ったハモリで言った。
「おっっそ~い! 今、何時だと思ってるのー!」
「母さんみたいなこと言うなよ……こっちだっていろいろとあるんだ。仕方ないだろ!」
「ほ~、逆ギレですか?」
「なっ、なんだよ。亜未……」
「……ふ、ふふふふふふ。」
「あみちゃん、こぁ~いよ~。何、する気~?」
「あのね……」
「別に何も考えてないだろ、亜未のことだから。早くそこを退け。晩ご飯作れないだろ?」
「あみちゃ~ん、どうする?」
「……あっ、そうだ! ひらめいた!」
「何をひらめいたんだ? まったく、亜美のひらめくものは全部危険なことばかりなんだから、実行には移すなよ! って……なんで、麻奈もいないだよ……」
勇一が話している間に双子は台所へと向かっていた。
「あみちゃん、あみちゃん! 何をひらめいたの?」
「ふふふふふふふ。ロ・シ・ア・ン・ルーレット!」
「おもしろそう! 麻奈もやるっ!」
「よーし、じゃあ麻奈はパンとか持ってきて!」
「亜未は中に入れるもの持ってくる!」
「はっ、了解でありますっ! 隊長~!」
亜未と麻奈は『ロシアン・ルーレット』の分担作業を始めた。
四十分後、亜未・麻奈作『ロシアン・ルーレット』は完成した。
勇一は亜未の『ひらめき』を止めることをしなかった。
止めれば最後、『実験体、はっけ~んっ!』と言って勇一を苦しめることは確実だったからだ。
止めはしなかったものの亜未の『ひらめき』は気になるが、勇一はさっさと自分の部屋へ行き、自分の世界へダイビングすることに決めた。
勇一は四十分という時間を有効に使っていた。
自分の世界にダイビングしたり、ダイビングから帰ってきたらみゆきちゃんからメールが来ていたりとまさに天国にいるかのような時間を楽しんでいた。
まさか四十分後に自分が地獄に落ちるなどその時の勇一には考えもしなかっただろう――。
(もう、四十分も経つのか……)
そんなことを考えていると急にお腹が減ってきた。
よく四十分も我慢したと自画自賛しながら部屋を出ようとした時、下から双子の怪しい笑い声を聞いた。
「う・ふ・ふ~! 『ロシアン・ルーレット』かんせ~い!」
その笑い声に勇一は良くないことが今まさに起ころうとしていることを直感した。
「寒っ!」
勇一は部屋を出たくはなかったが空腹には勝てず、『地獄のパーティー』へと向かったのだった――。
テーブルにあったものは見た目は普通のおいしそうなご飯だった。
だが、違うものが一つだけあった。
それは『ご飯の匂い』だ。
「何か変な匂いがするぞ? ここの部屋……」
勇一の第一声はこの後に待っているフィナーレへの幕開けとなったのだった。
「ふふ、兄よ。まずはこれを食せ!!」
「いや、いい。断る。」
「ならば、力付くで食べさせるのみ! 麻奈!」
「あいあいサ~、船長~!」
「な、なにをするんだ~!」
双子は声をそろえて言った。
「お口をあ~んしてくださ~い!」
勇一は無理やり『双子作 ロシアン・ルーレット』を食べさせられた。
「ギャ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!!!」
勇一は次の瞬間、悪魔からの招待状をもらいそうになってしまった……。
――亜未は言った。
「だらしない男だったの~」
麻奈は言った。
「だいじょ~ぶ~? ゆうにぃ~!」
……意識が地獄から帰ってきた勇一は言った。
「だぶん、だい、じょ……ぶ……」
バタっっ。
勇一は倒れた。
その次の日の学校はみゆきちゃんに会うんだということだけを目標に学校へと出発したのは良かったのだがまだまだ学校は見えてきそうにない。
途中で何度か悪魔の使者に会った。
会うたびに『みゆきちゃんパワー』でなんとか正気を保っていた。
やっとのことで教室に着くとそこには大天使『みゆきちゃん』が待っていた。
みゆきちゃんが心配そうな顔をして勇一に話し掛けてきた。
「大丈夫? 顔が真っ青だよ?」
「大丈夫、平気だよ」
「本当?」
「うん」
「なら、良いけど……気分悪かったら何か言ってね! 私、保健室連れてくからね! これでも一応保健委員の一人だし……」
「ありがとう、みゆきちゃん」
「元気出してね、勇一くん」
「うん!」
(あぁ~、今日ホントに来て良かったー!)
幸せオーラでほんのちょっとだけ元気になった勇一であった。
勇一はその日の帰宅後、『双子作 ロシアン・ルーレット』の効果によって三日間寝込むことになったのだった。
そんな勇一のためにみゆきちゃんは三日間ノートを二冊持参して授業を受けたのであった。
三日後、元気に復活し、学校に来た勇一はみゆきちゃんから心のこもったノートをもらい、一日中ルンルン気分で過ごすことができた。