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隠れオタクの覚醒  作者: 雲花エマ
27/32

十四

 勇一たちが海でワイワイやっていた頃、石田家の双子の麻奈の部屋では亜未と麻奈による会議が行われていた。

 議題は『兄について』だ。

 何故、そんな会議をしているのかというと石田家の開かずの間を見てしまったからだ。その開かずの間の主は亜未と麻奈の兄であり、石田家の長男である勇一だ。

 勇一が何故、自分の部屋を隠し続けてきたのかがこの前の一件で明るみに出た。

 彼は『隠れオタク』だったのである。

 彼は自分が『オタク』だと胸を張って言えないでいた。

 ひたすら隠し続けてきたのである。

 みゆきちゃんが開けたそんな部屋の中にはきちっと本棚に並べられた漫画から始まり、アニメのキャラクターソングがあり、これまたきれいに並べられたフィギュアがぎっちり並べられているのである。

 その部屋は双子の未知なる世界だった。

 双子の知らない兄がそこには居たのだ。

「兄にあんな趣味があったなんてね……」

「でも、ゆうにぃはゆうにぃだよ? 亜未ちゃん」

「そうだけど……」

 麻奈は『オタクの勇一』を素直に受け入れられたが、亜未は素直に受け入れられないでいた。

 そんな亜未に麻奈は言った。

「今、ゆうにぃいないからゆうにぃの部屋一緒に行ってゆうにぃを理解しよ?」

 それを聞いた亜未はすぐさま嫌な顔をした。

 その顔を見た麻奈は亜未の腕を掴み、勇一の部屋に行くべく麻奈の部屋を後にした――。

 あの事件以来、勇一は自分の部屋に鍵をするのを止めた。

 そのおかげで嫌がる亜未を連れた麻奈は簡単に勇一の部屋に入ることができた。

「うわ~、やっぱりすごいねー」

「帰るー!」

 亜未は麻奈に囚われた腕を必死に離そうとしていた。

「亜未ちゃん。そんなことしたって無駄だからね。絶対、ゆうにぃのこと理解してもらうんだから!」

 そう言った麻奈は勇一がきれいに並べた本棚の中から適当に一冊の漫画を取り出した。

「はい、これ」

 麻奈はその漫画を亜未に渡し、言った。

「この本棚の漫画全部読んでもらうからね」

「何言ってんの!」

 亜未は理解不能状態になりそうになりながらも麻奈が選んだ漫画をペラペラめくった。

 亜未はその漫画の最後のページに「三巻に続く」と書いてあるのを発見した。

「それができないって言うんならう~ん……その漫画の一巻から最終巻まで読んでもらうからね!」

「これ? まだまだ続きそうなんですけど……」

「つべこべ言わないでさっさと最初から読むの!」

「はい」

 亜未は嫌々ながらその漫画『ローテーション喫茶一』を読むことにした。

(麻奈は一度決めたらその通りにしないと怒るからなー……)

 自分のことは棚に上げる亜未だった――。

 数時間が経った。

 麻奈の部屋で漫画を読んでいた亜未が言った。

「これでおしまい! と」

 亜未は勇一の部屋にある『ローテーション喫茶』を全部読み終えた。

「おもしろかった?」

 双子用のノートパソコンで遊んでいる麻奈が訊いた。

「まあまあかな……それよりさ、『小泉大輝』について調べてよ」

 亜未はパソコンをしている麻奈に言った。

「うん。ちょっと待ってね……『こいずみ だいき』ね?」

「そうそう」

「……少しだけど出てきたよ」

 麻奈は亜未に席を譲った。

「どれどれ……こいずみだいきのデビュー作……すみ? じゅん? ……ねー、これ何て読むの?」

 麻奈はいつものように言った。

「読んであげようか?」

「お願いします!」

 麻奈はまたパソコンの前に座った。

「ほんと、漢字ダメだよねーあみちゃんは。えーっと……小泉大輝デビュー作『純潔ろーど』……二作目が『今日はチョメチョメの日』で現在連載されているのが『ローテーション喫茶』なんだってよ? ……性別は不明みたいだね……でも、男の人みたい。あっ! 『村崎永遠むらさきとわ』っていう漫画家さんに『ライバルはもちろん小泉大輝さんですよ』ってラジオで言われたらしいよ?」

「その『むらさきとわ』っていう人、どんな人なの?」

「さー? ……男の人みたい」

「ふ~ん、そうなんだ」

 勇一が海から石田家に帰って来る日まで双子は『勇一について』というより、『勇一が買った漫画を描いた人について』調べた。

 そして、双子は勇一を少しだけ理解した気になっていた。

 勇一が海から帰って来るとあの事件以来、勇一に無言をだった双子が今までと変わらずに「兄よ、実験体になれ!」と言って来た。

 これは変だ! と思った勇一は一応、双子に尋ねてみた。

「どうして、急に話しかけてくるんだ?」

 その答えを亜未が言った。

「それはな、実験体になれるのがこの石田家には兄しかいないだろ?」

「え? あっ、そうって、もしかして……」

「ふ、ふ、ふ……兄を確保ぉー!」

「ラジャー!」

「ちょ、ちょっとー! ギャー!!!!!!」

 こうして、いつもの石田家の兄妹に戻っていったのであった。

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