表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/46

第二十七章 夏休みの終わりに(1)

 あの日から何度となく、夏美に白状させようと試みたが「知らない」と言われるだけで、何も分からないままだった。そして、夏休みも終盤となり、残ったのは宿題の山だった。




「後二日しかないのに、これだけの宿題が終わる分けないじゃん!」




 散々遊んだツケなのだから、仕方の無い事だ。




「とにかく、形だけでも終わらせなくちゃしょうがないでしょ!」




 京香がテーブルにひじを付いて、鉛筆をもて遊ぶ。




「終わってるヤツに写させてもらえればなぁ」




 瑛子のアイデアを聞いて、夏美が「ナイスだよ!」と叫んだ。




「ねぇ、夏美! 藤田だったら終わってるでしょ。写させてもらおうよ」


「一馬?」


「うんうん」




 瑛子が頷く。それを聞いている京香が「また、馬鹿なことを」と冷たい視線を向けているが、二人は気づいていないようだ。




「無理だよ。一馬は頭、固いから」


「それでもさぁ、彼女のためなら見せてくれるんじゃないかなぁ」


「夏休み早々に宿題やれって、来たけど。やらなかったから、自業自得だって笑って終わるね」




「後悔先に立たずだね」と肩をすぼめる夏美だが、これも毎年恒例となっているのだ、いい加減学習して欲しいというものだ。




「そういえばさぁ、夏美の夏はどうなったわけ?」




 瑛子が訳の分からない事を言い出した。




「夏美の夏は、春夏秋冬の夏だよ」




 何を今更といわんばかりに夏美が答える。




「それは知ってるから!」


「そうじゃないよ! 藤田とラブラブしたのかなぁって」




 相変わらず、この手の話になると瑛子が嬉しそうにニヤケルから不気味だ。




「また、その話し……?」




 またかと言うように夏美が眉をひそめる。それもそのはず、あの日以来しつこく聞かれ過ぎている。




「絶対に何かあったでしょ!」


「あるわけないって、夏美と藤田だよ」




 もういい加減にしなよと言うように、京香が鉛筆を鼻の下に挟んだ。




「だって、あんなところで消えるのは、絶対におかしいって」




 完全に疑って掛かっているのは、瑛子自身の経験と重ねているからだろう。




「いくら夏美だって、経験すればもう少し女の子っぽくなってるでしょ。この状態の夏美を見てどこが女の子っぽいのよ?」




 という夏美を見れば、両腕を頭の後ろで組み、踏ん反りかけるように窓の外を眺めて、相変わらずぼんやりしているのだ。




「そういえばそうだね……」




 瑛子が腕組みをして夏美を見ながら、深いため息を吐いた。




「夏って、残酷だよね」




 何を思ったのか、夏美が呟いた。




「なんだってぇ?」




 夏美にしては詩的なセリフに、思わず京香が聞き返した。




「なにがあった! やっぱり、何かあったでしょ?!」




と身を乗り出す瑛子。




「短い命のセミが玄関にころがっていたのよ。虫だけに虫の息だったけど。そのセミにたかるアリ達を見ていたら、ガリバーのようだなって……残酷だよね」




 テーブルの上のケイタイを指で弾きながらため息をついた。京香と瑛子が目を合わせて、首をひねる。




「夏美、その話し支離滅裂だよ。暑さで頭がショートしちゃった?」




 京香がじっと夏美を覗き込む。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ