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名と役割のはざまで~覇道総裁中華財閥ロマンス~  作者: Furi0804
第1章 出会い

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第1章(1)触れられない距離——新婚初夜

###第1章 登場人物


李昊天り・はおてぃえん

龍騰グループの3代目。覇道総裁と評判のやり手。一方、李家の当主として一族の血やしがらみに抑圧されて生きてきた。そのトラウマで「人を幸せにできない男」と思い込み、感情を閉ざす。 株価防衛戦を経てネットで「ガバナンス魔術師」とバズる。

ヒロイン

名家の三女として生まれた。留学経験あり、それなりに恋愛もしたが「結婚と恋愛は別」と覇道総裁の妻になった。 両親の仲が冷え切っており、あたたかい家庭への憧れがある。 優しいが他人に踏み込むことも、踏み込ませることもない。 昊天のトラウマに気づきながらも、静かに信じて待つ強さを持つ。

昊明はおみん

昊天より2歳年下のいとこ(父の妹の子) チャラい見た目・口調だが、根は情に厚い。 昊天とはスイスのボーディングスクールで一緒に青春を過ごした。常に「昊天兄さん」呼び。 龍騰ではリスク管理担当。昊天と対立する叔父派の監視が裏の役割。3人の子がいるイクメン。

菲菲ふぃふぃ

昊天の秘書兼ボディガード。冷静沈着、武道の達人。実は昊天が好き。 昊天の結婚を機に思いを完全封印し、あるじとして仕え続けることを決めるが、心は揺れる。

小猫しゃおまお

妻のお付きメイド。妻の実家の使用人で、結婚まで姉妹のように近しい関係だった。しかし、身の回りに人を増やしたくないという昊天の意向で、新居には着いていかなかった。

水蘭すいらん

昊明の妻。年上女房で昊明を尻に敷く。 昊天がスイスのボーディングスクールに送られる前、上海のインターで同級生だった。昊明とは幼なじみから恋愛に発展して結婚した。3児(長女、長男、次男)の母。 昊明とともに昊天夫婦の味方。さばさばした美人で情が深い。


——新婚初夜 


###妻視点


結婚式が終わった日の夜、

タワーマンションの最上階に入ったとき、

妻はふと息を呑んだ。


華やかな披露宴とは違い、

ここは静かすぎた。

まるで“始まり”というより、

“審判の前の、息を潜めるような夜”だった。


控えめな照明が、

新居の廊下を淡く照らす。


夫——昊天は、一言も話さなかった。

外では完璧な総裁。

けれど、玄関を閉じた瞬間から、

どこか硬くて冷たい空気に変わった。

妻は勇気を振り絞り、微笑んだ。


「……これから、よろしくお願いします。

昊天さんと、良い家庭が築けたら……」


言い切る前に、

昊天は歩き出した。

返事はなかった。


寝室に入ったとき、

妻は心の奥がひどくざわついた。

パーティーのドレスがまだ肌に残るような感覚。


“初夜”という言葉が胸を刺す。

政略結婚。

覚悟していた。

昊天がどう出るか分からない。

支配的に迫られるのかもしれないし、

儀式のように淡々と終わらせるのかもしれない。


だから、

彼が寝室の扉に手をかけた瞬間、

息が止まった。

昊天は振り返った。


彼女を一瞥し、

短く言った。


「……寝ろ。」


それだけ言い残し、

書斎へ歩き去った。


ドアが閉まる音が、

やけに大きく響いた。


妻は立ち尽くした。


「……あれ?」


胸が、すとん、と落ちた。


拒まれたのか。

守られたのか。

どちらも正しくて、どちらも違うような気がした。


(私……魅力がないのかな)

そう思った瞬間、

喉の奥が熱くなった。


---


###昊天視点


向こうの書斎では、

昊天が机に両手をつき、

深く頭を垂れていた。


初夜。

妻。


触れたら壊してしまう。

望まれない未来を押し付けてしまう。


「……無理だ。」


声が震えた。

自分のほうがよほど弱い。

彼は、

愛された記憶がない。


だから——

妻に手を伸ばすことのほうが、

暴力のように思えた。

(俺では……人を幸せにできない)

その呪いは、

この日も昊天の胸を締め付けた。


妻は寝室のベッドに腰を下ろし、

指先を握りしめた。

涙は出ない。

泣いたところで何も変わらないと知っている。

それでも——

心の奥で小さく、声がした。

(どうして……何も言ってくれないの)

(どうして……私を見てくれないの)


答えはない。

ただ、

隣の書斎から聞こえる気配だけが

昊天が“生きている”証だった。


妻はゆっくりシーツに横たわり、

暗闇に向かってそっと呟いた。


「……おやすみなさい、昊天さん」


返事はない。

夜が、深く静かに落ちていく。

夫婦になった最初の夜。

ふたりの距離は、

もっとも遠かった。



そして——

その距離が溶けていく未来など、

このとき誰も知らない。

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