第42話「監督たちの夜――過去と今がつながる時」
夜の事務所。
神原匠は、倉庫の奥に眠っていた“旧型の現場監視カメラ”と格闘していた。
「この現場、実は5年前にも着工直前までいって、止まった経緯がある。
そのときの“記録”が、これに残ってるはずなんだ」
高槻が古い記録用PCを立ち上げる。
「ですが、この形式……もう再生できるソフトが見当たりません。下手すると壊れてますよ」
匠は静かにスマホを取り出した。
「エル、頼めるか?」
《はい。光属性と解析魔法の併用で、記録媒体の“読み出し”を試みます》
匠は深呼吸し、指先に光を灯す。
「《映せ、過去の刻》……っ!」
USBポートから走る光の粒子が、ノイズ混じりの画面を“少しずつ”修復していく。
ぼんやりと浮かび上がった映像。
そこには、見知らぬ現場監督が立っていた。
姿勢はよく、背中は武藤所長にどこか似ている。
「……この柱は、明らかに“異界の仕様”だ。構造力学が通じない。
施工は可能だが、意味はない。これは“呼び水”としての建築だ」
音声記録まで残っていた。
「記録しておく。この建物は、どこか別の世界へつながるよう設計されている」
匠と高槻は無言で顔を見合わせる。
「これ、完全に……」
「“最初の魔導施工”だな。前の監督も、何かに気づいていた」
エルが続ける。
《この記録にある構造物、現場の“西側ユーティリティスペース”と一致します。
今は倉庫になっていますが、実は……》
匠は立ち上がる。
「行くぞ。今なら誰もいない。魔法で“封印”を開ける」
深夜の西側スペース。
床には封印のような魔導刻印が刻まれていた。
匠は静かに詠唱を始めた。
「《風よ、流れを解け 火よ、道を照らせ》」
風魔法で刻印のチリを吹き飛ばし、火魔法で線を炙り出す。
さらに光魔法で“図形の構成”を解析していく。
《封印、解除可能です》
「……解除」
刻印が静かに光を失い、パキン、と音を立てて砕けた。
奥から現れたのは――
“異界文字で書かれた、もう一冊の施工計画書”。




