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侵入

 

 それは確かに、この海の生き物と人間とは相容れないだろうなと思った。


 漁をするのにこんな遠くまでは来ないんだろうけれども。


 美味しいもんね。


 もう昨日とかの海鮮定食の美味しさを思い出して、よだれが出そう。


 美味しいもんね。


 ここに来る船が、海藻や貝やイカ目当てなのかは知らないけど。




 先生の誘いに従って、再びの、()()()をすることにした。


  黙って待ってんのも、すごく嫌だしね。

 まあ海賊じゃなかったからいいんだけども。


 海賊じゃないからと安心したら、一気に本心が出てきた。


 人いるの、やだな。


  常駐、はしないと思うけどさ。

 こっちの人の感覚もわかんないし。

 上陸されたら、壁あっても結構変わんなくなると思うんだけど、どうだろう。



 先生が、のぞき(と言ってはいるが、保安上わりと魔力持ちがやっている事、らしい)を担当してくれる事になった。


 うちのと合わせるほうが気付かれないからね。


 との事だ。


 この島、イカさん先生の魔力も入っているそうだが、基本は貯まったマナと魔王2人の魔力らしい。

 ゼロから生む、という魔法は、ほぼ魔王の専売特許系なんだとか。


 へぇ~、さすがは生き物の長。


 向こうの世界から引き寄せるんじゃなくて、この海に島を作ったんだもんね。


 じゃあ細かいイメージというか、とりあえず補強として魔力入れとけみたいな感じだったのかな。 白服にまで魔力を注げ、って言ってたもんね。

 私の魔力も入っているんだろうけど、私と毅視子(きみこ)さんの場合は、ただ単に向こうとこっちのマナか魔力かは知らんが、それが混じり合ってるからっていう意味なんだろう。

 混じってるだけでなく、忌見子(きみこ)さんはその魔王特有があっての事だろうが。


 ……なんか考えちゃいけないことに突入しそうだった。

 危深子(きみこ)さんは本当に何やってんだろう。

 私、あの人に(何かは知らんが)吸い取られて死んだりしないかな。

 人じゃないか、魔王か。そのまんまだな。

 魔王だな。

 さすが魔王。



 1人で脱線してると、イカさん先生が説明を続けてくれる。

 元々かかわってるから魔力が馴染みやすいし、魔力を合わせるのも(貝王様と)慣れているし、壁に沿わせるように()()をすれば、さっきよりはバレないから、と。


 なるほど~。


 人がいるの嫌、というちょっとモヤモヤそわそわする心を振り切って、明るく言ってみる。



「さすがイカさん先生、貝王様と仲良し!」



 え~、もうやだなー、ただの腐れ縁だよ~。


 本日は真顔続きだったイカさん先生の顔に、柔らかさが戻る。

 純白の体から反射する光に、赤味が乗る。

 血の気が戻る瞬間ってこんな感じかな?


 ちょっとだけ、喜んでいる感情が流れてきた。




 ふぁん、と音がして、映像が出た。


 今日、一番始めに船を見た時は、船だけがドーン、とデカく出た。

 3D映画ってこんな感じ?っていう風に。

 見た事ないけど。3D映画。

 船だけが目の前に突然現れた、飛び出してきた、みたいだった。


 次の、船の姿が物理的に見えなくなって、出てきた映像は四角かった。

 出てきたって言っても、私がそっちを気にしたからだろうけど。何も関心がない事を引き寄せないだろうから。

 意識してなかったけど、これはなんとなくテレビのイメージが働いたんだろうな、ってわかる。



 イカさん先生の映像、先生がさらっと言った(言ってはいなくてイメージだけど)遠目(の魔法)は丸だった。


 中心にピントがあって、円の輪郭は背景の海と溶け合っている。


 いざやってもらい、見せてもらうと、私が引き寄せた映像より鮮明だった。

 比べると、画素数が違う感じ。



 船は着々と作業していた。

 できるだけ波から離れたところ、少し広がっている砂浜の、かなり森寄りのところに、テントみたいなのを立てている。


 何人かは、森の中に入っていったようだ。



 なんかなー。

 人間が陸以外で生きていけるわけないんだから、砂浜に着くのはしょうがないんだけれども。

 なんかこう……森の中に入られると、勝手に入ってきたー、って感じがするな~。


 どうやって許可取るんだか知らないけど。

 許可取れよー!って気になる。


 所有者、誰になるんだろう?これって。


 でも住んでんのは私なんだからさ。

 向こうから見えてるかもわかんないけどね。




 黙って見ているとそのうちに、何人かが慌てて森から飛び出してきた。

 入った人間全員来たかもしれない。


 何に追われてるんだろう?

 騒いでいるんだけどよくわからない。

 所々、血が出ているのに見える。

 どうした?


 もちろん向こうでも、仲間同士でそう聞いているのだろう。

 ただどうも、わちゃわちゃしているみたいでわからない。

 イカさん先生を見ても、はて?という顔して頭を傾げている。

 端の足も、やっぱり1本ちょんと顔につけている。

 先生もわからないみたいだ。


 考えていたがよくわからないし、どうも騒いでいる本人も、何が起きてるんだかよくわからなかったみたいなので、先生と少し目線で会話して、少し人間たちに寄ってみる。

 1回気づかれたから、気にしてもしょうがないのかもしれないけど、白服にばれるかな?と思って見てみる。

 白服はちょうど、船からおりて小舟に乗るところだった。


 今のうちかな?先生も同じことを考えたみたいで、一番混乱している人に画像が寄る。


 狂ったように暴れ出したんだが、こちらからは見えない小さな虫か何かに怯えているみたいだった。

 ヒルにでもくっつかれたのかな。

 でもそれだったら、まとわりつかれてるみたいな態度しないよね?

 だって体から叩き落とすんだもの。周囲をくるくる確認したりしない。多分。

 ヒルって映画で存在を知っただけで、実物知らないんだよな。

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