先生に質問
さぁ、皆さん、お腹へってきましたね。
今日のご飯は何でしょう?
違いますよ、ちゃんとこの村……この島の探検に行くんです。
村って言っちゃったよ。
私1人なのに。1人村。
そういうのあるのかな?
過疎化で人口が減ったから、ぐらいしかないよね、そういうの。
まさにポツンと一○家。
いや、建物は私の家(カーサフクダ、これも私の持ち物ではない)以外にあったけども。
……増えてくんじゃないよね?
階段を降りきり、さあ歩こうとしたら、イカさん先生がいた。
カーサフクダとファーストカーサフクダの間の空間、陸に乗り上げてはいないけれども、そこから見えるところ。
この島は、パッと見は平地だったけれども、丸く見えていた。気がする。高い視点からじゃないから、ただの印象だが。
カーサフクダが一番島の端っこなのだ。
平行するようにファーストカーサフクダがあって、こちらの方が陸の内側。
そしてその周囲には土地がなく海が広がっているだけだから、島の突端。
要は周囲は海だからだね。
ヤッホーというように足を振っていた。
海の中でも足振って、ヤッホーとか、ハーイ!とか久しぶり〜とかやるのかしら。
人間っぽい。
ポ過ぎる。
だから伝わりやすいんだけれども。
……っていうか、私が起きたらわかるのかな?
とりあえず「おはようございます」とイカさん先生に近寄っていく。
普通は「こんにちは」っていうところなのかな、と思ったけども。
携帯で時間見たら、普通に昼だったしね。
お日様の位置も高いしね。
でもついつい言ってしまう。
職場でも、何時から出勤しようと一番初めに来た時の挨拶は「おはよございます」と決まっていたから。
……お客様に言ってしまって困るんだよな。
今日は先生は、海鮮類を持ってきていないみたいだ。
私が、悪くするから、出来ないから、って騒いだからかな。
でも凄くありがたいよ。なんかすみませんね。
そういえば毅満娘さんがいなくて、イカさん先生だけいるんだね。
って忌見子さんに来て欲しい、っていうわけじゃないけど。
いや本当に、永遠に現れなくなったらどうしたの?って思うかもしれないけど。
ちょっと彼女もやり方を変えてくれたらいいんだけどね。
そういうわけで、イカさん先生おはようございます、と普通に話し始める。
ちょっと疑問に思ったので、先生の方から用件を言うことはあまりないけど聞いてみる。
「先生、起きたのがわかるんですか」
ちょっと聞き返されるかな、と思ったけれども先生は頭を傾げることなく、「えっとね」という風に、端の足を自分の顔に当てたがすぐに話し始めた。
気配はいっぱい感じるんだけれども、どうしても魔力持ちの方が拾いやすい。
というよりも魔力持ちじゃないと、どこにいるかとかわからない。
でもそうすると、今度は遠くにいても、魔力持ちがどう動き出したか、なんていうのばっかり拾ってしまう。
だからどちらかというと、魔力持ちは寝ている時はやっぱり魔力が静かだから、起き出した時に位置を確認する。
そういう習慣があるんだよ。
へー、そうなんだ。
大きい体でぶつかったら困るからね。
なるほど。
先生特有の悩み。
いや違う、貝王様もか。
いやナガナガスクジラさん達もそういうものか。クジラさんたちは、魔力持ちではないけど。
なるほどね。
なんとなくで、魔力持ちの位置を把握しておいて、それが静かだと寝ている。
それがもぞも動き出したら、気にするという。 一定の波長があったら把握しようとする、みたいな感じ?
難しいかな?私も出来るようになるのかな?
そう先生に聞いてみたが、そもそも私の周囲に貝王様の魔力が溢れているし、忌満子さんもすぐへばりつこうとするから、ちょっと難しいかもしれないということだった。
それと、どうも見てると人間は反応しやすい感じがするから、そちらの感覚の方が鋭くなると魔力が感じにくいみたいだ。
逆に魔力の感じ方に没頭していると、生き物としての元々の感覚が鈍くなってしまう、それも危険なんだということだった。
ますます難しいね。
いつも通りと言うか何と言うか、単なる質問タイム、授業みたいになってしまったので、ついでに聞いてみることにした。
スーパーのことだ。
先生にスーパーの話をしても、変な顔をされるかな?と思ったけれども、一応スーパーの説明も一生懸命してみた。
こうこう、こういうところでご飯を買いに行くところで、いっぱいあって、どのくらいもつのかわかんないんだけれども新鮮で美味しくて、と。
するとイカさん先生はいつものように、ニコニコとしてウンウンとうなずく。
安定の感じ。
そして良かったね、と言った。
うん。それは良かったんです。
すごく笑顔ですね、先生。
全然違和感感じないんだ。
スーパーなんて、海の中にないだろうに。
いや、海の中にもスーパーみたいな場所あるのかしら。
ここに新鮮な食べ物がいつも流れ着きます、みたいな。
いや、行ってみたいとか特別思わないけども。
ちょっとは行きたいけど。
食料奪いに行くつもりはないけど、面白そう。
でも、いつも満腹になるまで食べる人間が行くのもね。
海の生き物なんて私みたいに、食べ過ぎたりしないだろうし。
いや、どうなんだろう。
陸地だと、カエルを丸呑みして消化出来ずに死んだヘビ、とか図鑑に載ってたな。
先生はニコニコ、ニコニコしたまんま、
一生懸命食べ物のこと考えてたもんね
良かったね、とおっしゃった。
どいうことじゃね?
「食べ物のこと考えてた、ってどういうことですか?」
そう、質問する。
先生はえ?という顔をした。
この陸地を作る時だよ。
先生、私は陸地を作る時は一生懸命、緑の中を散歩できますように、ってそうやって願いましたよ。
そうやって考えてたから貝王様が、陸地が欲しいですか?って聞いたんだと思ってたんですけど。
すると先生は、え?という顔をした。
目がキョロッと見開かれ頭を傾げている。
え、どういうこと?
どうして頭を傾げるの?




