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海の上

 


 早速参りましょう、と貝王様が言ってからも私がちょっともたついたりしたせいか、とっとと戻ることになった。


 貝王様の姿が広間から消えて、窓の外の海水の明るさが少し明るくなったかな?と思った。


 隣にいたイカさん先生は、やはり端の足でポンと私の腕に触れた。


 そちらを見るとウンウン、とうなずいている。

 いや……頷かれてもわかんないです。


 何ですか?


 イカさん先生は端の足をくるんくるんと回す。


 いや全然わかんないです。


 魔力で話しかけるのは一旦ストップらしい。


 と思ったら、すぐにシュっともっと明るくなった。


 明るいはずだ。


 私は一瞬で外に出たみたい。


 しかも海の上に立っていた。


 足元で波がちゃくちゃくしているという。


 スニーカーは全く濡れていない。


 どうやって立ってんの?

 きっと貝王様の魔法なんだろうけど。


 貝王様は海上に出ているわけではなさそうだったが、そばにいるのがわかった。


 これ何?城の屋上部分がなんか?


 はっきりと目には城は見えていない。


 見回してみるとイカさん先生は大きい元のサイズに戻って近くにいた。


 先生、……やっぱちっさい方がかわいいな。



 そう思ってると、何かゴーというすごい音がして、近くの海から己見子(きみこ)さんがバッシャーンと派手な音を立てて飛び出してきた。



 危深子(きみこ)さん怖いよ。

 どんな速度で上がってきたの。

 危ないよ?



 ふうやれやれ、と思っていると何か人の声のような、息遣いのようなものが聞こえた。


  えっ?と、驚いてよくよく見直してみると、大きな船ではなく大きな船からの接岸用か何かの小舟みたいなのがいた。


 そのボートみたいなのに乗って、主さんと白服と隅の人がいた。


  何してんの、あんたら。


 海賊の仲間か?

 別件か何だ?


  つーか、その舟、落ちるんじゃない?


  何で近くにいんの?

 何してんの本当に?



 しかし3人とも話さない。

 どうした。



 そうこうしていると貝王様の魔力を感じた。

 何かを促されている。


 え、何?と思ったがすぐにわかった。


 カーサフクダがさっきまで見えていたのに、白く光ってる。

 発光してるのかどうなのかわからないが、壁が白く光っているらしい。

 晴れの太陽光の反射ではない。


 いや、元々カーサフクダの壁は白いんだけども、その壁じゃなくって。

  バリアの方が。


 何かこう白い光に包まれてるっていうか、なんか今まで透明で見えなかったのに、みたいな。


 そうか、魔王が陸を作ると言っているんだから、そうなるんだ。



 それがどんどん光が強くなって、広がっていくようだ。






 お客様、強く陸を思い浮かべてください。


 魔力を使う時のような感覚です。







 要は頭の中にイメージしろってことかな?


 え?何これ!

 私の魔力でどうこうなるの?


 どういうこと?貝王様じゃなくって?





 向こうの世界の陸地を一部再現しようと考えるのが良いと思います。


 大きくは無理でしょうが、お客様の希望の沿う形に。


 向こうのものを排除しようとしてもおそらくはうまくいかないと思うのです。


 魔王キミコも力を注いでください。


  今ここにある壁は、拒絶しあって成立していたのです。

 それらを融合しなくてはなりません。

 おそらくは一番それが可能なのはお客様です。


 できるだけ緻密に思い浮かべてください。






 たいして魔力の使い方がわかっていないのに、こんな重要案件をぶっつけ本番なんだ!


 いや、試して失敗しても困るけれど。


 いきなりなんて言うか、世界と世界で反発してぐしゃっとか粉砕して消えてなくなっても困るんだけれども。


 ……あんまり変えればいいの?



 実家なんて年1、2回帰るぐらいだから結構、思い出せないかもよ。

 感覚的にはそっちの方が楽なのかな。

 生まれ育ったんだから、一番馴染んでるよね?

 でも戻れば馴染むが、思い浮かべるとぼんやりするのが実家というもの。



 やっぱりカーサフクダの周辺を思い浮かべた方が無難か?

 どっちがやりやすいかわからん。


 周り、どうしたらいいの?

 バス停とかだって絶対いらないでしょ。

 駐車場もいらないでしょ。


 えーえー?

 何もまともに思い浮かべられないでいると、光が増すうちに、建物が増えていた。

 はじめ、カーサフクダが白いので、反射して光ってんのかと思った。

 違った。


 これ、ファーストカーサフクダ。

 いかにも後からカーサフクダが出来たんだな、という名前。

 いや、後からの方をセカンドってつければいいだけだから、こっちが後から作ったの?

 ん?

 ま、いいか。

 割りとカーサフクダと似ていて、四角くて白い。


 細長くて、道路沿いの一階は大家さんのお店。

 二階が塾。

 奥がアパートだ。


 入った事ないけど懐かしい。

 おぉ!ちょっとうるっときちゃった。


 道路挟んで向かいにコンクリート壁を巡らせたデカイ民家。

 そんでその隣が、と次々思い出される。


 近くの緑地まで思い浮かび、これだ!と強くイメージする。


 み~どり緑、こいこい来い。

 お散歩コース、来いこいこい。

 あそこは散歩した事ないけどな。


 しかしなかなかの敷地で巨木が生い茂り、とても緑が濃い。


 こちらの気候で耐えられるのかはわからないけど。


 倒れてきても困るけど。


 だがしかし、来い!



 必死に思い浮かべていると、大きな木々の影のようなものが見える。


 大きく大きく影があり、あー、ちゃんと森みたいなあの場所、思い浮かべられてるんだ。


 このままでちゃんと、思い浮かべれて再現されてるんだな、と思う。


 蚊がいるのは困るんだけど。


 でもそろそろ涼しくなるはずなんだ。


 秋になっても虫の音が聞こえてこないなんて寂しすぎる。


 海のザバー、ザバーンしか聞こえなんて悲しすぎる。


 成功してるのかもしれないと思って安心したら、それらが消えてしまった。


 光が弱まって見えたのはただの砂が広がる砂漠だった。


 砂の中に白く、四角い建物が2つ。


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