あっちとこっちのズレ
たまり始めたマナがそちらの世界のものと結合し合っています。
どのような結果になるかは分かりません。
壁を入れている限り外部からの攻撃はないとは思うのですが、内部でどうなるのかがわからないのです。
私達はお客様の世界のことを知りません。
どのような事が起こるのか、予測がつかないのです。
貝王様の説明にビビる私。
確かにスマ子みたいなのがいっぱい出来上がったらどうなるんだかわからない。
あっちの世界でもこっちの世界でもただの謎の物体だ。
魔法具って言っちゃいえばスマ子自体はなんとかなるのかもしれないけどさ。
謎を越えてるよね。
っていうかさ、音出してないはずなのにさ、サイレントモードのはずなのにさ、何であんなに喋ってんのかな。
あんまり家電が変質し始めると私、暮らしてけなくなるんだけど。
海上にいる生活は、電気ガス水道が命である。
それなかったらまず絶対、暮らしていけない。
家電に暴走されたらアウト。
飢えて死んでくだけ。
絶対無理。
やっぱり土地、もらっといた方がいいのかな?
疑問に思ったところで、また貝王様が続ける。
たまったマナが、いつ暴走するか分かりませんので、陸地を作れるか試みてみましょう。
その方が黙っているよりも安全だと思うのです。
魔王キミコはお客様のいる壁の内側から、異世界のものを引っ張り出して吸収していますので、こちらのマナとあちらのものと魔力とを結びつけるのに最適でしょう。
力を貸してくれるはずです。
あれ?
貝王様、結構強制的にやらせる話になったね?
ナチュラルに流れるようにやったねすごいね。
何かがとっても流れてったぞ?
これ毅海子さん勝手に使われてるけど大丈夫なの?
と思って、飢深子さんを見た。
いや私のためにやってくれてんだけど。
暴れ出さないかな?
どうなんだろう?理解してんのかな?
気味子さんは浮いていた場所から降り始めていた。
そして降り切ったところで私が見ているからか、疑問に思っているからか、話の内容がわかっているのかいないのか、ふと体を曲げた。
イカさん先生ならまだ、長さがあるから曲がっちゃいるけれども、ほとんど顔と口、要は顔とうねうね汚黒髪しかない忌視子さんがやると、全体が45度傾いただけに見える。
可愛くないからね。
あざといって言わないからね。
ちなみに指の時と同じく、水掻き手はウネ汚髪に隠れている。
魔王キミコも賛成しているようですね。
早速、参りましょう。
海上に何かあります。
また人間かもしれません。
お客様にとって安全だと良いのですが、どうなっているか確認のためにも我々も一緒に参りましょう。
海賊、おかわりは嫌だ。
断固、拒否。
何さっき海の中に潜った時に、残骸が全然ないとか、海賊いないと思ったけど。
どっかで再結成してきてるの?
残骸から船を再構築する星でもあるの?
木材が残ってるれば船がすぐにできる星とかあったらさ、海賊に最適だけどさ。
マジで。
海の中の方が、なんか安全になってきたんですけど。
私のビビリを察したのか、貝王様が言った。
一緒に参りますので大丈夫です。
それから先ほどお客様を襲撃していた人間たちの方は、陸地の方へと流しましたので心配ありません。
彼に確認してもらいました。
彼と言うと一人しか思い浮かばない。
振り返ろうとすると、イカさん先生は真横にきていた。
端の足をハーイと返事のように持ち上げる。
先生、お世話になってます。
そう流れてたの、海賊。
どんぶらこしたの。
生きてんだか死んでんだか知らないけど。
海苔の影で岩のザリザリを味わう魔王から、人間たちが無事に流れ着いたとありますね。
今海上にいるらしい人間たちは別件でしょう。
ん? 何だって貝王様、なんて言った?
何の魔王だって?
脳内で貝王様に突っ込む私。
だって、何か今。
海苔の影で岩のザリザリを味わう魔王、です。
ん?
「え?」
貝王様、これ笑ったほうがいいです?
どうしたらいいかわからず、隣を見るがイカさん先生はキョトーん?と傾いだだけだった。
「そ、その『海苔の影で岩のザリザリを味わう魔王』というのは、お名前なんですか?
に、人間ととっては変わったお名前に聞こえるんですけど?」
尊敬する上司のギャグが滑りすぎて動揺する部下って、こんな気分だろうか。
名前というか、そういったものが元々我々にはないのです。
魔王というのも、長く人間にそう呼ばれることが一般的でしたので、我々の中でも区別のように使われているというだけです。
そういうことが正解、というわけではありません。
我々も生まれ落ちて魔王と自認しているわけではありません。
人間の言葉にするばそれが通りが良いというだけです。
特にこの海域の近く、陸地に近い方の海に住まう魔王は孤独を好みます。
いえ、他者と交わることを好まないという方が正解かもしれません。
ですが普段、海に流れ着かないものをこちらから押し流しましたので、そちらに行くとだけ伝えてあったのです。
沈んできても彼にとっては迷惑でしょうから。
彼にとっては魔王というのは、そう呼ばれることが多いというだけの認識であり、それは我々もそうではありますが、彼が自ら発する部分は『会話を好まず、海苔の影で岩のザリザリを楽しむ、それを好む』というだけです。
当者の意思を尊重し区別すればそういった呼び方になった、それくらいですね。
侮辱を込めれば別問題ですが、呼び方にはこれといった重みはありません。
「そうですか」
それでいいんだ。
カイオウ、貝王はまだマシか、それなら。




