夢
ん?あの大音量で、ひっくり返りもビリビリもしなかったぞ?
疑問に思っていると貝王様が、毅海子さんに話しかけた。
魔王キミコ、お客様の安全のために彼女は私の壁に包みました。
よろしいですね
危深子さんから垂れ流されていた怒りがピタリと止まった。
というか鬼水子さんが垂れ流しにしていた魔力が全て止まった。
多分。
私の感知できる限りは。
どういう事かと思ったら、知識が入ってくる。
貝王様が教えてくれてるのかもしれないが。
どうも魔力の壁を作るというのは、庇護下に入るという意味らしい。
壁、というのはあのバリアみたいなやつだ。
多分。
カーサフクダのも壁、という表現だったし。
イカさん先生が足リフトにつけて、いや、足エレベーターにつけてくれたやつ。
キラキラする透明壁。
割りと白寄り。
そんな白かったっけ?
貝王様の魔力の色にイメージが引きずられて。
え?さっきの事なのに記憶がぼやけるのはおかしい?
そんな事ないですよ、貝王様のインパクトが強すぎるんです。
ですます。
あの魔法の壁は、万能ね。
結界みたいなもの?
内側は守り、外側は弾く、みたいな。
カーサフクダも魔力で見ようとすると、壁があるために魔法瓶図解みたいな絵面になった。
説明されてから、自分でも思い浮かべれるようになったのだ。
でへん。
だだし残念ながら、今のところ、魔力で見えても妄想と区別はつけづらい。
ところで、イカさん先生がお使いで私を連れてきたのも、護衛とか、海に招くから私が死なないようにというだけでなく、貝王様の魔力壁で呼ぶのは障りがあったから、だろうか。
貝王様は多分、私が死なないように呼べたよね、魔力で。
イカさん先生がそこまで行動しなくても。
魔王が近くにいるのに、別の魔王が手出しするのは良いことでもダメか。
今までは忌視子さんと一緒いうことで遠慮していたみたいだ。
ほうほう。
勢力図みたいな感じか。
一応、断らなきゃいけなかったのか。
今まで花嫁と呼んでいた時には、身内の扱いとして教え諭そうしていたが、今は対等な魔王同士として話している。
そうしてくると当然、貝王様の方が格上だよね。
それはそうだよね。
己見子さんは何か違うぞ?って思ってんのかな?
それとも敵わなくてビビってんのかな?
まあ私の庇護っていう話をするのだったら、危見子さんはちょっとね。
実際彼女の声でひっくり返ってんだし。
声か?
口が出来たから声でいいのか。
口から音出てなかった気がするんだけど。
私はそういうの、あんまりわかんないからな。
声かけられたと思ったら、前方から声かけられてんで間違いなかった。
一人で振り返ったけど。
だって口元、あんまり動いたように見えなかったんだもん。
そういうことでよくあるよね?
私だけ? やっぱり。
よく見たら近くにいた小魚さんたちのすぐそばに、イカさん先生が浮いている。
小魚さん達は白い光に包まれていた。
これは貝王様かな?イカさん先生かな?
私がひっくり返るほどなら、彼らは粉々になっちゃうかもしれない。
気味子さんは、少なくともビビらせようとしたのか、抗議のつもりなのか。
大声出したけれども、声……もうめんどくさいから声でいいか、だいたい眼中にないであろう弱っちぃ人達しか被害を受けそうにない。
イカさん先生も貝王様もびくともしてない。
っていうか、その他の人たちのことも守ってるもん。
いや人は私だけだけど。
私は怖くてたまんないけど、私以外も怖いのかもしれないけど、肝心のイカさん先生と貝王様は、わりと本気で相手にしてない感じ。
気味子さん、やたらに先住の大型犬に吠えるチワワみたい。
違う。
チワワはまだ可愛いからいいけど、巨大一つ目キモい。
お話し合いを致しましょう。
お客様、陸地にお住まいになりたいですか?
「いいえ」
忌視子さんが静かな好機を逃さず、貝王様が本題を進める。
色々やりたい事はあるが、街に住むのはノーだ。
海賊に来られても困るけれども、海の方が陸地にいるよりは襲撃される可能性が少ないと思うんだ。
多分。
大海賊時代だったらともかく。
カコドの町って何、もしかして海賊の街?
船持つ商人って……紙一重?
いやいや、倭冦と廻船問屋は紙一重、って言ってるのと一緒でしょ?それ。
どんな乱暴な分別よ。
(ところで倭冦と廻船問屋って活動海域被ってるところ、ある?私、中学社会からわかってない?まさか小学校?)
でももっと魔力使いこなしたり、常識得るまでは止めとくべきだ。
怖いこわい。
熱中症になっただけで犯罪者してたしな。
土地が欲しいか、と聞かれた時は、まるで『そらやるゾ』風な話かと、勝手にトキメキもしたが。
……実は、ホントは。
庭の手入れとか、憧れはするんだ。
花咲く庭から収穫したものを食べて暮らしたり、
日が高くなる前に草取りとかして
「今日は〇〇の芽が出てた、良い1日になりそう」
とか言う日々をおくりたい。
なんて言うか、緑を育てる人になりたいというより、まめに丁寧に暮らせる人になりたい。
いや『丁寧な暮らし』が出来る人、になりたい。
一緒か。
本とかのイメージでこの言葉が出てくるだけで。
私だってまめにやりたい。
まめになりたい。
その忍耐力が欲しい。
好きでやる事だから、忍耐力は関係ないのかな?
計画して前のめりに楽しんで、自分の面倒を見るのを喜びたい。
そういう豊かさを持ちたい。
それはきっと、読み書きが出来るのと同じくらい世界が変わると思うんだ。
でもそんな細かなこと、めんどくさい、大っ嫌いっていう気持ちも確かにある。
これどうしたらいいの。
どっちも本音なんだけど。
私だって好きでガサツなんじゃない。
お気に入りのものを壊したいんじゃない。
(何故か、お気に入りほどよく、壊れる。使用頻度が高いから?)
でもめんどくさいのは嫌い。
大嫌い。
この相反する真実を、どう要望に落とし込んだらいいのだろう?
ここまで読んでもらってありがとうございます。
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2から5までも数字好きです。
めんどくさい方は無理しなくて大丈夫です。




