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気味子さんの指問題

 

 カーテン問題も退路問題も片付いてないのに、原因が現れてしまった。


 それも朝日という後光を背に。

 大きさの割にゆっくり上がってくるからか、水音もおとなしめ。


 気持ち悪いけど神々しい。

 いや、神聖さは感じないけど。


 何か壮大。


 昨日結局、夜にベランダにちょっと腕を出しただけで終わった。


 気味子さんは目は確かに白目部分もあるが、目の回りのモヂャモヂャが汚黒というかなんというか。

 こう、黒っぽいので、夜だと発見しづらいのだ。


 だから様子をうかがってたけどわからず。


 身体全体でベランダ移動は怖すぎて、腕だけひょっ!と。


 何してんだろ。

 引きこもった割に混乱してたな。



 はあぁ。ため息。


 御大登場。


 しかも、指。


 あのグリングリンの魔物はやはり気味子さんらしい。


 海面から指立ってる。


 今。






 ……何これ、お披露目?


 この指でいつか必ずお前を食らう宣言?


 それとも爪こっち側に見えてるし実はそれ中指?



 本体(目)が海上にきた事すら『クララが立った』をドウデモヨキ1として、マイナス1万点くらいなのに。


 せめてもの救いは、ガラス戸をすでに閉めてた事だ。


 生身ムリ。


 そうこう固まってるうちに気味子(きみこ)さんは大きくなっていた。

 いや、何か近付いてきた!


 いやいやいや!

 アッチのみ〜ずはあーまいぞぉ、って

 ちょ、止まりなさい!


 ザザッと先程よりも音がして、って何か早くない?!


 滑るように視界いっぱいに気味子(きみこ)さんがきて最早ぶつかる、という時。


 バキン!

 と大きな音がして暗くなった。






 音の余韻もおさまり、少し静か。


 そうっと目を開ける。


 腕というのは自然と頭部を庇うらしい。

 このぷよぷよの腕にガラスの破片刺さるのも恐いけど。


 窓は割れていない、ように見える。


 薄暗くてわかりづらい。




 状況確認してたら妙な音がして、窓がブルルル震え出した。


 何この音?

 重低音のような獣の唸り声のような。

 音に高低差があって、やはり声のように聞こえる。


 ややあってベランダギリギリまで近付いていた気味子さんが、そろそろと後退する。


 デンキつけてないから日を遮られると見えない。


 さっきまで暗くしてたのはやはり気味子さん。

 の汚黒モヂャモヂャ。


 ベランダ分の日のさす余地があっても、目の前が真っ黒な上に、直前までキツく目を閉じていたから良く見えなかったようだ。

 ゆっくり目を開けたつもりだったが、複数の要因が重なると、意外と目はついていけないらしい。



 気味子さんは少し離れて止まり、また少し離れて止まりを何度かした。


 それから比較的出没率の高い辺りで止まり、海面からニュッと指を出した。



 さっきまでは黒モヂャが遠ざかってくのしか見てなかったな。

 指どこに収納してんだろ。 いや、知りたくない。

 今度は指の内側が見えた。 どっちもキモい。





 ……。





 え?はい。見た。






 え?何この時間。


 やっぱりお披露目なの?



 微妙〜なお披露目(?)を見て早く帰ってくれ、と念じてたら、また気味子さんは前進を開始した。


 先程と違い、指が大きく見えていく。


 モヂャモヂャで押し上げるように指を掲げて。


 だから!あのモヂャモヂャ結局何なの!

 触手なの、髪なの、身体なの?!


 モヂャモヂャに指は繋がってるようだが、モヂャモヂャが黒く、指が白いので台座に乗せて運んでるようにしか見えない。

 あと、黒だの白だの言ってるが、それがベースの色としか私が表現出来ないだけで、とても汚れて汚い色としか言えない。

 めちゃくちゃキモい。

 それだけはハッキリ言っておく。



 って主張を声高にしている(脳内で)うち、みるみる指が近付いてくる。


 いやいやいや、それで体当たりしてもアンタが強いから!

 ガラス割れる、来んな!


 また必死に念じてると、ビタッと止まった。


 ん?ビタッ?


 キモい指がある。

 うん。


 それが動いてる?と思ったら、何かに押し付いた。


 ??


 ベランダの辺りに、気味子さんの指があって、それがガラスに押し付けてるように、指の腹の色がちょっと違う。

 でも何も遮られるものは見えない。

 ガラスっていうのは勿論、透明の物のつもりで言ってるのだが。


 何だかわからないが、互いに動かないので、勇気(?)を出してベランダに出た。

 嫌だけど、凄く嫌だけど。


 カラカラとガラス戸を開け、ゆっくり近付く。

 そんなに広くないが。


 やはり何もないように見える。


 近くに来て不思議がってるのを理解しているかのように、気味子さんはゆっくり指を引き、またムニッと()()に当てた。


 何度か、ゆっくり押して離す。


 それは明らかに見えない壁か何かがカーサフクダの外壁にある事を示していた。


 気味子さんはコレがわかってたから、ある程度の距離があったのかな?


 目が合う頻度からして、1番は視認し易い距離だった、というのは間違いないと思うけど。



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