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トモダチ

 


 気味子さんはアッチ、コッチと指をつけたり、覗いたりを繰り返した。


 いちいちデカくて怖い。


 それがわかっているのか、動きはソフトに感じられる。

 ……いや、わかってたらあんな速度で近寄らんだろ。




 そして1つ目に色んな角度見せられても。


 レイヤーなの?アイドルなの?


 自分で試してるのか、私に見せてるのか。

 もしくはその両方か。




 色々やって満足したのか、また指を私の前に持ってきた。



 ジッと見てる。


 こっち見てる。


 目が合ってる。






 え?



 指の向こうから目がこっちミテル。




 モジャモジャは伸縮自在なのか、モジャを伸ばして自分(目)は合うように、距離とってる。


 通じたな?


 と言わんばかりに(被害妄想?)指が再び透明壁にビタッとついた。






 待つ。



 ジッと待つ。……私を。








 ”何流されてんの!“とか

 ”お前どこに向かうつもり?“とか

 ただの悲鳴とか、私の中で色々聞こえたけど。


 怖いけど怖いけど怖いけど。



 だってこっち見てるよ、待ってるよ、私も困るよ。





 お帰りあれーー、と祈りを込めて、人差し指を準備する。


 ひー、ヤダー。



 一歩また一歩近付いて、目を合わせないようにして、


 ……決意つかん。



 さっき気味子さんがひょっひょ動いてるうちに自分でも透明壁に触っとけば良かった。

 ああ、後悔。


 触りたくねー。


 何故私には流れを撥ね退ける能力がないんだ。



 仕方なしに、へにょんと曲がった指を伸ばし、気味子さんの指の辺りの壁に当ててみる。


 断じて気味子さんには触ってない。




 何か壁の感触があるのか、頭の片隅でチラッと考えたが、ガラスに触ってるのと変わらなかった。


 そして残念ながら、気味子さんのものであろう冷たさを見えない壁の向こうから感じた。


 うぅ、リアル夏の海の怪談……。


 何このE・T。


 何ひとつ生み出さない出会い。






 気味子さんは下がって行った。



 満足した? 私はゲンナリした。


 ゲームやったことないから正確ではないと思うけど、多分ヒットポイント削られた。

 もしくは「私のライフはゼロよ」状態になった。


 ゲーム知識ないから正確にはわかんないけど多分。


 とりあえず、私の本日の気味子さん耐久ポイント、マイナス2000点です。



 もう、トボトボ帰宅する以外出来ないくらい消耗を感じてると、また気味子さんは止まった。





 ……お客様、本日はもう閉店してしまいました。




 ピッと、止まって、また指を立てた。



 ……だから?


 そしてゆっくりモジャモジャで押し上げる。


 指を高く掲げてどうした?


 それ何のアピールなの?




 ……。


 …………。


 え?


 まさか


 トモダチ……?




 私達、トモダチなの?


 さっきのまさか、ハイタッチなの?


 久々に足元から震えがきた。



 私の恐怖とは裏腹に、満足したのか気味子さんは海に消えた。






 とりあえず、泣けた。


 ええ。

 こんな海上生活でも建設的行動に出なかったズボラの私にも、涙は残っていたようです。



 サチコ、もう閉店です。もう充分に残業しました。



 時間としては何故かな、朝なんだけどね。






 カーテンがっつり閉めて、エアコンつけて籠もります。



 え?暗いと鬱々とするんじゃなかったのか?って?


 もうオヤスミだから良いんです。

 ひっそり休む必要があります。

 最大限リラックスして休養しなければ。


 べ、別に必死になってなんかいませんよ。

 もう、ツンデレみたいな事言わせないでください。




 ……サチコー!サチオー、誰か助けてよー!

 何でツッコミ現れないの、私誰に語ればいいの?


 ってか何で気味子さんの時は私1人なんじゃー!


 “いや、最初っからお前1人だから”

 労り声の早知雄(さちお)である。



 ウッウっ。

 何も考えないでケ・セラ・セラしたい時には、私の中なのに私らしからぬ真面目なツッコミが入るのに。


 本も携帯もいじれないから何も癒やされないよー。


 癒やされたい。

 癒やしが必要なのに。


 それなのに!


 シル○ニア○☆ミリーと、○☆っこ○らしのふわふわ抱き枕とご飯とお風呂しか私に残されてないよ!


 ”じゃあ、要らねーんじゃね?“


 いる!


 “あとお前、掃除しろよ”



 携帯、アンタいい加減にしなさいよ?


 電話出来ないならせめて私にネットと動画と写真と漫画見せなさいよ!


 海上初日と同じように、携帯持って睨みつける。


 一応、しっかり充電はしてるのだ。


 でも電源落ちてる。何でだ?


 ボタン長押しして立ち上げた。


 何かこんな画面だったっけ?


 みたいのを経て。


 携帯、復活しました。


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