調子にのるから
いや指に見えるだけ?!
生気のない青白く、私の体ほどの太さもある巨大な人差し指、
……みたいなもの。
生えてるんじゃなく、よく見たら畑の中に白木の枠みたいのがあって、そこから突き出ている。
よく見たくないが!
いや、何で!?
爪は真っ青で、でも青は青なりに青から群青にグラデーションがかっている。(細かく見たくないが)
キラキラ光る物が混じっていたり全然キレイじゃない物が引っ付いていたが、全体も全く綺麗じゃなく、グロさと気持ち悪さの具現化のようだった。
それが、ぐりんぐりん、と激しく動き出す。
若かった頃も自分にあんな早さで階段を駆け上がれると思えないから、記憶は不確かかもしれないが。
覚えてる限り、人生で1番早く階段を上がり、部屋の鍵をかけ、窓とカーテンを閉めまくりその日、2度と出なかった。
当たり前である。
巨目仮さん、通称巨目さんは、
巨目子さんだった!!
ネイルかなんか知らないけど女性だった!
雌? 女性?
知らんし!
つーか、
そんなんどうでもいいし!
入んの?
ここに?
アパートの下はスーカスーカ通ってたけど!
あんな出っ張り(地下1階畑)あったらつっかかるだろ!
あんなヒラヒラすいすい、下通れんじゃろ!
どうなってんのさ!
中に侵入できるの?!
ちょっと、……
やや慣れた風、装ってたけど、接触出来ないと思ってたからだからね!
絶対ムリ。
平穏な日常なんて一瞬で木っ端微塵になるものだ。
大きくて指しか入れないのかは、よくわからないが、何故か部屋は安全だと思って(願望?)1人会議を始める。
今まで目とモジャモジャしか見なかったが、アレは巨目さん……改め巨目子さんだと私は疑っていない。
あんなん、いっぱいいてたまるか。
これから指がもっと増えて、摘まんで食べられたちゃうの?
今まではアパートの中にいたから丸飲み出来ずに見てたってこと?
口があるのか見たことないけどさ。
目しかないから巨目さんだったんだし。
あの指、目の周りのモジャモジャの先に生えてるの?
どーなんてんだってば。
いや、巨目子さんの場合、存在そのものが、か。
……いや、浮いてるアパートも謎だ。
いやいや、今そこじゃない。
和平共存の道を進めるか、だ。
1人会議は深夜まで及んだ。
恐怖に震えて頭を支配されてるのも同然な1日目よりずっと、真剣に、キョメコさんについて。
こんなに集中して他者について向き合って考えた事ないかもしれない。
(妄想は別です、オタクですから)
途中で、ご飯作ったり食べたり脳が消耗した分を補うためにデザート食べたりお茶飲んだり風呂入ったり爪切ったりしたけど。
脳内でずっと
巨目子さん
と呼んでいたところ、
いつの間に
きみこさん、
に変化していた。
きめこにいくとこじゃないのかと、後日思ったが。
きゃりーぱ〇ぱ〇が言えない私ですから。
1人なので声に出さないからか、何日も気付かなかった。
何故きみこ。
しかし時すでに遅し。
定着していた。私の中に。
私しか呼ばないけどね。
きみこさんは
気味『悪』子さんだから。
ホントキモいから。
こんなん言ってて信じてたのに!とかも違うけど、まさかアパート内部に入れるなんて。
“……あれ、アパート内部なの?”
さちこ、黙ってて。誰か知らんけど。
私の平穏は崩れた。
ビビりですから。




