ラーメン屋【竜馬】
『屋台開いたから、食べに来いよ。』
ユージ達と今日は何しようか話していたら、マサさんからチャットが来た。
とうとう屋台を手に入れたらしい。
「マサさん、屋台始めたんだな。食べに行くか?」
「うん。行きたい!」
ユージの提案に、リコは乗り気だ。
俺とテルも賛成である。決定だ。
マサさんの屋台は、商店街の近くにあるらしい。
・・・・・
「こんな所あったんだな・・・」
「多分、今回のアップデートで追加されたんじゃないか?」
「結構賑わってるね。」
マサさんから指定された場所は、商店街から横道に入った広場だった。
地面に芝が生えていて、周囲には木が植えてある。公園のようだ。
屋台は10店舗ほど開いていた。
周囲にはどの店にしようか選んでいる人や、買ってその場で食べたり、近くにある木の長椅子で座って食べたりしている人がいる。
クレープ屋、アイスクリーム屋、ハンバーガー屋、牛丼屋・・・
あっ! あのラーメン屋かな?
ラーメン屋の屋台は2台ある。
片方の屋台では、赤いパンダナを付けたオッサンが麺の湯切りをしていた。
「あれ、マサさんじゃないか?」
「多分、そうだね。」
「行ってみれば分かるだろ。」
赤い暖簾に【竜馬】と黒い文字で書いてある屋台に来た。
丸椅子が5つあり、店の前に2人客が並んでいる。
近くに行くと、ラーメン屋独特の醤油のようなスープの匂いがした。
料理していたのは、やはりマサさんだった。今、トッピングを乗せている所だ。
「マサさん。来ましたよ。」
「こんにちはー。」
「ちわーっす。」
「おう、よく来たな。今、他の客の料理作ってるから、少し待っててくれ。」
そう言ってから、マサさんはラーメンを仕上げ、お客に渡した。
「結構忙しそうだね。」
「うん、繁盛してるみたいだ。俺達、邪魔だったかな?」
「邪魔だったら、呼ばないだろ。」
「すまん。待たせたな。」
マサさんが、緑色の前掛けで手を拭きながら話しかけてきた。
VRだから、汚れはないと思うんだけど。癖かな?
「忙しそうですね。」
「ん? ああ、今の客か。NPCだよ。屋台を開けていると一定の時間で来てくれるんだ。お客が来ないと利益が出ないし、何よりつまらないだろ? だから、救済措置としてNPCが利用してくれるんだ。」
「それなら、高額にしたら儲かりませんか?」
原価の10倍か100倍で売れれば、すぐにお金がたまっていくだろう。
お客はプレイヤーではなく、NPCだ。
「あー、それは料理の腕と、料理自体の組み合せの評価が高ければ可能だがな。結構シビアでな。俺の今の料理だと、原価ギリギリでないと客は来てくれん。」
「そうなんですか。」
「現に、向こうのハンバーガー屋にまだ客は来てないぞ。高すぎるものを出したか、評価の低すぎるものを登録したかだな。ありゃ。」
お客が来ないか。それはそれで気になるな。後で見に行こう。
「マサさーん。話しはいいから、料理作って下さいよー。」
「おっと、そうだったな。メニューから選んでくれ。」
マサさんからメニューを渡される。
ラーメンは醤油、塩、味噌の3種類と、それらのミニチャーハン付きのセットメニューだ。
出来上がりの画像とカロリーが書いてある。カロリーって意味あるのか?
値段はラーメン単品が500G。セットメニューが800Gだ。
「すみません。このカロリーって何ですか?」
「ああ、それは料理の評価に影響するものでな。あまり気にしないでくれ。」
「そうですか・・・」
どうやら、リコはカロリーが気になるらしい。
育ち盛りだから、気にせず食べた方がいいと思うけどな。
ここで食べたカロリーは、意味ないけど。
俺は醤油ラーメンとミニチャーハンのセットを選んだ。
ユージとテルもセットメニューだ。
リコはカロリーの一番低い塩ラーメンを単品で頼んでいた。
すぐにマサさんが用意してくれる。
5分もたたずに全員分が出来上がった。
『いただきます。』
「プレイヤーに食べてもらうのは、初めてだからな。感想聞かせてくれよ。」
海苔とシャーチュー、ネギが入ったオーソドックスなラーメンだ。
味はあっさりしていて美味しい。チャーハンもぱらっとしている。
「美味しいですよ。」
「うん、ウマい。」
「そうか。良かった。となると、やっぱり評価を上げるには、レベルを上げるか品質の良い素材を・・・」
マサさんは嬉しそうだが、何やらぶつぶつと言い出した。
「そういえば、次の予定だがな。王都へ行かないか?」
「王都?」
「ああ、今回アップデートで追加された都市の1つだ。ここよりも色んな店や建物があるぞ。」
「へー。いいんじゃないかな。」
王都か。ログインの時に出てくる城下町かな?
此処だけでも十分店はあるけど、まだ始まりの町なんだよな。
行ってみたいな。装備も買い替えたいし。
「俺も行きたい。」
「ボクも。」
「よし、決まりだな。徒歩で行くのと馬車があるが、どうする?徒歩だと1時間位で着くけど、馬車なら20分位だな。1000Gかかるが。あと、徒歩だと山賊が出ることがあるらしい。」
「山賊!?」
穏やかじゃないな。
山賊ってNPCだよな。まだレッドプレイヤーって見かけたことないし・・・
「馬車がいいかな。」
「俺もそう思う。」
「だよな。西門の所に王都行きの馬車があるから、食べ終わったらそこ行くか。」
ユージは食べ終わったようだ。速い。
というよりも、俺以外、皆食べ終えている。俺が遅かっただけのようだ。
「おっ。何だ? 王都へ行くのか? 何か珍しい食材があったら、買ってきてくれよ。」
「分かりました。どんなのがいいですか?」
「うーん。キャビアとか、フカヒレとか・・・」
「屋台のラーメンで使うんですか? それ。」
帰りの途中にハンバーガー屋を見たら、バンズ(パン)の中身が黄色い直方体3個だった。
あれは、食べたくないな。
屋台のラーメンって、店内より美味しそうですよね。
次回 王都へ行く予定です。




