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Second Earth Online  作者: ジャック
第2章
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アップデート1日目3

ピィーィィィ・・・


俺達は、北の森の中に来ていた。

加奈のレベルがだいぶ上がって来たので、草原では物足りなくなったのだ。


目の前に芋虫が現れた。

加奈に「やるか?」と目で合図すると、ぶんぶんと首を振っている。

そりゃそうだよな。こいつを素手で殴れるなら、これからの虫退治はすべて加奈に任せる。

虫は俺が焼き払い、加奈はウルフを倒していった。


ドロップアイテムが出やすいのは加奈だけかと思ったが、そうではない。

俺が倒しても、糸や毛皮が手に入った。

シビアなドロップ率は改善されたようだ。

ただし、俺はまだ一度もレアアイテムは手に入れてないが。


「う゛っ……」

加奈が背中からぶつかって来た。どうしたんだ?

振り返ると、どや顔をしているビートルと目が合った。


コイツに後ろから体当たりされたのか。

俺が一人で納得していると、「こんのー!」と言いながら、加奈がビートルを追いかけ始めた。

あのカブトムシは、殴れるようだ。


しばらくすると、「んふーっ!」と加奈が鼻息を荒くしながら帰ってきた。

無事倒せたらしい。


アオーンッ!!


近くでウルフの遠吠えが聞こえる。

前方をよく見ると、ウルフの群れが見えた。

でかい! 一番後方にいるウルフが、他の3倍以上の大きさがある。

フィールドボスだ!


これは俺と加奈だけでは対処できない。逃げよう!


「加奈、転移石だ。逃げよう!」

「転移石?」


そうだ! こいつ初心者だった。

今からアイテムを渡す時間は無い。追いつかれる方が先だ。


「俺が食い止めてるから、先、逃げろ!」

「え・・・うん、分かった!」


加奈はウルフと反対側の方向に走り出した。速い。

あれなら、運が良ければ逃げ切れるだろう。


俺は、自分がターゲットになるようにファイアーボールを撃ちながら、左の脇道へとウルフたちを誘導して行った。


・・・・・

『仁、大丈夫ー?』

「おう、今神殿にいるから、そっちへ向かうよ。どこだ?」

『北門のとこー。』


あの後、すぐにウルフ達に追いつかれて俺は倒された。

転移石を使う間もなかった。一瞬でHPバーが溶けた。

所持金が半分になっている。

ほとんどはギルドに預けてあるが、5000G近くを失った。トホホ……。


――北門へ向かうと、加奈が手を振っていた。

どうやら、きちんと逃げ切れたようだ。

冒険初日からあんな大量のウルフに噛まれたら、トラウマになりそうだからな。

逃げ切れてよかったよ。本当に。


「仁お兄ちゃん。ありがとうね。」

「ああ。加奈が無事でよかったよ。」

「くそー。あのワンコロめ。今度会ったら、とっちめてやる!」

「間違っても、フィールドボスに一人で突っ込むなよ。」


コイツなら、やりかねん。兄さんなら、やりきりそうだが。


「SEOは戦闘するだけが楽しみ方じゃない。他にも、釣りだとか、BBQ(バーベキュー)だとか・・・」

「BBQ・・・? 仁、誰かとBBQしたの?」


加奈が小首を傾(かし)げながら聞いてくる。

しまった! 兄さんに口止めされてたんだ!


「ああ、いや・・・うん、昔の知り合いとBBQしたんだよ。偶然出会ってね。」

「ふーん・・・」


加奈の目が半目になっている。

コイツ、妙に鋭い時があるからな。嘘をつくと、一発でばれる。

今回、嘘は言っていない。ただ、腑(ふ)に落ちてはいないようだ。


「そうだ! 今度、美味しいケーキ出す喫茶店に連れて行ってやるからさ。な。」

「・・・まぁ、いいけどね。」


何とか誤魔化せたか?

そういえば、リコにも同じようなこと言ったっけな。

一緒に連れてってみるか。年も近そうだしな。


そんなことを話していると、いい時間になったので、俺達はログアウトした。


・・・・・


「ただいまー。」


今日は、夜のバイトだった。

普段なら、もうリビングの明かりは消えているが、まだ点いている。

テレビの音もしているし、誰かいるようだ。


「ただいま。」

「おかえりなさい。」

「・・・おう、おかえり。遅かったな。」


父さんと母さんだった。

父さんの手元には、お酒の入ったグラスがある。

こんな時間まで飲んでるなんて、珍しい。


「今日仁(じん)はバイトで遅くなるって、さっき言ったでしょ?」

「ああ・・・そうだったかな。」


顔が赤い。父さん、どうやら大分(だいぶ)飲んでいるようだ。

テレビで、SEOのCMが流れだした。


「仁、最近流行っている、あの、ぶいあーるゲームとかいうの、面白いのか?」

「・・・うん。おもしろいよ。」


急にどうしたんだ? 父さん。


「今日なんかイベントがあったんだろ?会社の若い奴等が、前よりも大勢休み取っていてな。」

「ああ、うん。」


イベントというか。今日はアップデートの初日だ。

第2陣の人が増えたから、人数もいつもの10倍位(くらい)いた。


「今日は部長がいたから、大丈夫だと思ったんだ。そしたらあの人、今日午前だけの出勤だったみたいでな。俺は『こんな忙しい日にどうしたんですか?』って聞いたんだ。そしたら、どう答えたと思う?」

「うーん、全然分からないや。」

「『”屋台(やたい)”を買いに行く。』って言いだしたんだよ。屋台! いったい何をする気なんだ? あの人。」


どうやら父さんの会社の部長さんは、だいぶ破天荒な人らしい。

確かに屋台を買ってどうするんだろう? 父さんの会社って飲食店の経営もしてるのかな?


「この間は急に『釣りがしたい。』とか言い出すしさ! 道具引っ張り出すの大変だったよ。」

「家中(いえじゅう)、引っ掻き回してたわね。」


母さんは、父さんにお酒を継ぎ足している。

それ、もう飲ませない方がいいんじゃないか?


「・・・そういえば、仁。お前は釣りに連れてったことなかったな。今度行くか?」

「え!?」


釣りはこの間、SEOでやった。

結構楽しかったし、実際行けるんなら行きたい。


俺は黙って頷(うなず)く。


「よし、じゃぁ、次の日曜日にでも連れてってやるか!」

「あらあら、それじゃあ私は、家で魚が釣れるのを待ってますね。」


母さんは行かないらしい。


やった!

SEOで釣りまくった、俺の腕前見せてやるぜ!

俺のことを初心者だと思っている父さんを、驚かせてやろう。

俺は内心でほくそ笑む。


「朝4時に出発だからな。」

「え゛……。」

次回 ラーメンを食べる話の予定です。

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