釣りしようぜ1
差出人 ユージ
題名 釣りしようぜ
本文 今度の日曜日10時にフロンティア北門に集合な。
テルとリコも来るぞ。
一昨日来たメールだ。「絶対行く」と返信しておいた。
俺は釣りをしたことが無い。初めての経験である。
とても楽しみだ。
――当日、俺達は北の森の湖に来ていた。
釣りをしている人がちらほら見られる。5人程度だろうか。
話し声が聞こえると、邪魔になるかもしれない。
少し離れた場所で、釣りをすることにした。
「よし!この辺でいいか。」
「泳いでいる魚が見えるね。」
「うん。ここでいいと思うよ。」
20m程離れた所に、小さな魚が群れて泳いでた。
遠くでは、何かが泳いでいる影が見える。
俺達は釣り具をセットし始めた。
今回俺が購入したのは、【万能竿】という竹でできた釣り竿である。
リール(釣り糸をくるくる巻くヤツ)とウキ(釣り針の目印に水面で浮かぶもの)とオモリ(水中での固定用の重石)が付いて、3000Gした。
今の俺には、大した負担ではない。
右隣を見ると、ユージとテルは黒い金属のような釣り竿を持っている。強そうだ。
左隣を見ると、リコは木でできた釣り竿を両手で持っている。和んだ。
餌を付ける。ワーム(ミミズ)だ。
現実なら絶対に触れないが、アイテム欄をクリックすると勝手にセットされた。
振りかぶって投げてみる――20m位飛んだが、大きく右にずれてしまった。
「おいおい。投げたい方向をよく見て投げろよ。振り方はこうだ、こう。」
ユージが実際に投げると、100m位先に真っ直ぐ飛んだ。
手慣れている。経験者なのだろう。
4,5回振ると段々真っ直ぐに飛ぶようになってきた。
ただ、距離は30m位しか飛ばない。
近くにいる小魚の群れに寄せてみた。
お、1匹近寄ってくる魚がいる!
くいっ! くいっ! とちょっとずつリールを巻き、おびき寄せる・・・来た!
ぐっ! と大きく釣り竿の穂先がしなる。
小さな魚だと思ったのに、すごい力だ!
懸命にリールを巻くと、少しずつ魚が寄って来た・・・今だ!
大きく振り上げると、魚を釣り上げることに成功した。
『フナを手に入れました。』
手のひらサイズだ。ぴちぴち跳ねている。
どうやって仕舞えばいいんだろう? と思っていると、魚が消えた。
アイテムストレージに入っている。
これ、結構楽しいかもしれない。
・・・・・
30分位の間に、5匹釣れた。
全て小魚だが、大漁だ。とても気分がいい。鼻歌を歌ってしまいそうだ。
リコも2匹釣っている。ユージとテルはデカい魚を釣っていた。
さっきユージが釣っていたのは、80cmくらいあった。
よく釣れるな、あんなでかいの。
こなれてきたので、リコに話しかけてみる。
「ここに来ると、前に泳いでたの思い出すよな。」
「あの時ジンク、ボクの事放り投げたよね。」
リコが、薄く笑いながら答える。
しまった!話題を間違えた!
「ごめんって。あの時、謝ったじゃないか。」
「今度は、ボクの事放り投げないでよね。」
「そんなことしたら、僕とユージで魚の餌にしてやるさ。」
右から、テルが口を出してきた。ひどい!
「ふふっ。まぁ、あれはあれで楽しかったけどね。」
え!? 俺、あんなに反省したのに・・・楽しかったの?
リコに耳打ちする。
「もう一回、投げた方がいい?」
「怒るよ?・・・・・!?」
リコの釣り竿の穂先が大きく歪む!大物のようだ!
「ジンク!手伝って!」
俺も後ろからリコの釣り竿を一緒になって引っ張る。すごく強い引きだ!
ユージとテルも駆けつける。
俺はユージと交代した。
テルは網をもって待機している。
少しすると、影が現れて来た。
四角い。魚ではない?
リコとユージが引き上げると、そこに現れたのは――木でできた宝箱だった。
「宝箱?」
「珍しいな。あけてみろよ。」
リコが宝箱を開けると、そこに入っていたのは本だった。
「本?」
「魔導書みたい・・・これ、【キュア】の魔導書だ!」
治癒術師の魔導書だったようだ。
釣りで魔導書が手に入ることがあるのか。
「なんか、釣りって雰囲気じゃなくなっちまったな・・・よっしゃあ!」
ユージが装備を外していき、ステテコ1枚になる。
どうしたんだ? 急に。男の裸なんか見たくないぞ。
ユージの右手には銛がある。銛?
ユージは銛を片手に湖へ走って行った。
そのまま湖の中に飛び込む。
3分くらいして、「とったぞー!」と言って、湖面から顔と銛に刺さった魚を出してくる。
面白そうだ! 俺もとったぞーしたい!
ユージが戻ってくると、次はテルに交代した。
テルも10分位で魚を捕ってくる。
次は、俺の番だ!
――とったぞーは、できなかった・・・
あいつ(魚)等、速すぎるんだよ。俺のAGIじゃ追いつけない。
くそっ! いつかリベンジしてやるからな!
リコは、やはり湖には入りたくないようだ。
銛を渡そうとしたら、断られた。
結構いい時間が経ってしまった。
もうそろそろ調理を開始しないと、食べる時間が無くなりそうだ。
「料理、どうしようか?」
俺達は料理人ではない。
料理のできる知り合いなんて・・・あ!




