Gravity - 012 - 青年たちが引かれ合う話
夢を見ていた。
ひとりで、真っ暗な宇宙にぽつんと浮かんでいる。
宇宙服の酸素はもうほとんど残っていなくて、このままでは消え去ってしまう。ヘルメットの中に警告音が鳴り響く。
それなのに、どんなにもがいても何も起こらない。
進むことも、つかむこともできずにいる。
すると、どこからか小さな宇宙船が現れた。
ぼろぼろに傷ついた宇宙船だ。
中からひとり、男が出てくる。
手を差し伸べられたので、強く握り返した。
絶対に、この手を離してはいけないと思った。
宇宙船を離れ、引いたり引かれたりしながら宇宙をさまよう。息苦しさを感じたが、どこか安心している。きっとこのままで大丈夫だ。
不意に遠くに明かりが灯った。
男と目を合わせ、その光の方へじたばたともがく。
男の手をさらに強く握ると、やさしく力がこもる。
あ、と思うと身体が動いた。
どちらが引いたのか、わからない。
ただ、ふたりで同じ方向に進んでいた。
気づくと、ふたりで地面に立っていた。
足元に、たしかな重力を感じた。
そこで目が覚めた。
随分具体的な夢を見た気がするが、もうところどころしか思い出せなかった。
ただ、どこかやさしくて、愛おしい気持ちになるような夢だったことは覚えている。
今日は指輪を買いに行こうと約束していた。
普通は婚姻届の前だろうと、ふたりして笑ってしまった。
自分たちは、それくらいでいいのだ。
「じゃあ、行くか」
「はい、そうですね」
玄関のドアを開け、まぶしいくらいの晴天の中を、ふたりは歩き出した。




