第十章 神頼み
友希は車のキーを開ける
後部座席にワタルと真守が座る
助手席はふたばが乗り込む
友希「ドアちゃんと閉めて!シートベルトちゃんと付けた?ふたば〜もう少しシート下ろしてくれない?サイドミラーが曲がってる…」
どうも神経質な友希であった
ふたば「私が運転しようか?それとも私の車で行く?」
友希「大丈夫、ただ基本を唱えてるだけ。1人で運転してる時もさ、指差し確認しない?」
ふたば「私はしないね…あっごめん、友希のルーチンなんだね、そうそう、私の車友希の家に駐めておいて良いの?」
友希「うん、それはさっきママのLINEに入れておいたよ。ふたばが来て私の車に乗って出かけるって」
ふたば「お兄さんの事は伝えて無いよね?」
友希「うん…勿論…何だかね〜」
真守「キンザンカを釣りに行くんだ…」
真守は身を乗り出している…
ワタル「さぁ、早速出発しよう!」
友希は発進した
暫く進む…
ふたば「そういえば、友希の車に乗って出かけた事って今まで無いよね?」
友希「えっ?覚えて無いの?よく飲み会へ行った時私が帰り道運転して家まで乗せてってあげてたのに」
ふたば「そうだったっけ?ああ、飲み会って私は電車から向かっていたからね。その帰りって友希の運転だったんだ!友希はお酒飲まないんだっけ?」
友希「呑まないんじゃ無くて、呑めないの。アレルギーが出ちゃうみたいで」
ふたば「アレルギーが出ちゃう人って初めて聞いた
じゃあ採血もアルコール消毒は出来無いよね?」
友希「うん、それとこれとは違うかもしれないって思うけど…聞かれる時はアルコールじゃ無いのにして貰ってるね」
ふたば「そうなんだね」
友希「お兄ちゃんを乗せての運転が今まで無かったんだけど…まさかね、まさかこんな状況で乗せてあげるなんてさ…悲しいよ」
ふたば「どんな状況であれお兄さんを乗せて出かけられたって良い方向で考えてさ」
友希「……あっ、彼処にケーキ屋さんがあるから入るね、ちょっと待ってて」
友希はケーキ屋さんへ駐車し1人で店内へ入って行くのであった
数分間沈黙が続く…
ふたば「真守お兄さんのお友達さん、あの島へは行って来たのですか?」
ワタル「はい…まさか使われて居ないトンネルから異世界へと向かえるとは思っていませんでしたが、真守に発見された時は熱で朦朧としていて、真守が住んでいる部屋に身を潜めてただけなので島という島を全く見られずに終わりましたよ」
ふたば「そうなんですね。島へのルートって一箇所しか無いって思っていたんですがもしかすると数カ所存在するのかもしれないですね…」
ワタル「偶然にも真守と入った場所が一緒だったってだけで…何箇所も存在しているなら有名になると思いますが、そこまで有名では無い感じですよね‥」
ふたば「真守お兄さんとはどんなお知り合いなんですか」
ワタル「それは…仕事仲間。あっ、だったっていうかな。今は会社は辞めたけど真守は連絡だけはいつもしてくれていたっけ?仕事終わればたまには飲みへ行ったり、休みの日はたまにツーリングしてたよ」
ふたば「そうなんですね。島に友希のお兄さんが居るって聞いた時にはお兄さんに会え無くて…実は恥ずかしながらお兄さんと会うの今が初めてなんです」
ワタル「ふたばちゃんも初めてばかりだね、僕と会うのも初めて出し…友希ちゃんの車に乗るのも初めてだし」
ふたば「友希の車は私は初めてじゃ無かったんですよね。今聞いて驚きましたよ、、もしかするとお兄さんに会ったのも初めてじゃ無かったのかもしれません…」
真守「まだ着かないの?」
すると買い物を終えて友希が戻って来た
友希「…ごめんなさ〜い、これ、神主さん家族に渡すケーキ。ふたば悪いけど落とさないようにしっかり持ってて。後はお兄ちゃんがここのケーキ屋さんで大好物だったチーズケーキと、私達にエクレア買って来たよ〜」
ふたば「やったぁ!エクレア大好きなんだよね。でも溶けない?」
友希「そうなるかと思ってさ、保冷剤多めに貰っておいたからきっと大丈夫」
ふたば「じゃあ神社でお祓いが終わったら皆で食べよう」
友希「そうだね!では、出発〜」
友希は神社でお祓いをすれば解決すると思っていた
しかし、それが予想外な結末になろうとは3人は思ってもいなかった
漸く剛角神社へ着く
歩いて来た時は気付いて居なかったが、大きな看板に剛角神社Pあり
5台程駐められる様だ
友希は車をバッグで入れる
空を見ればもう夜
薄暗くなった神社の駐車場はドキドキするものがある
駐車場から4人は100メートル程歩く…一面の麦畑が風に揺られて揺ら揺らと流れる音を聴きながら
突然後ろから声をあげて飛びたつカラスの声にびっくりするふたばと友希
車は然程通らないので、ケーキを持ったふたばを先頭に、真守を両サイドで友希とワタルは軽く抑えながら進んで行った
神社の鳥居を潜り抜け階段を上る
そしてふたばは、大きな岩に座ろうとしたけれど前回神主に言われた通り座らず鶏小屋の先にある神主さんの自宅へと向かって行った
ピンポーン
友希「こんばんは〜」
登坂伊太郎「こんばんは、さっきは悪かったね…電話に出られ無くって、で用って何かな?」
友希「兄が、島へ行って戻って来たのですが、熱で朦朧としてて熱が下がってから私と兄の友達の記憶を無くしたみたいです」
伊太郎「そうなんだ…記憶を無くしたって事情はわからないけど、私に出来る事ならなんでもしてあげるよ」
友希「ありがとうございます!では早速ですが、お祓いをして貰いたいんです!お祓い料はちゃんと払います、あっ、後こちら皆さんで食べてください」
ふたばは伊太郎へケーキを渡す
伊太郎「あぁ、ふたばちゃんも一緒だったんだね。友希ちゃんケーキありがとう!
じゃあ、本殿に向かって貰って良いかな?準備があるからちょっと待ってて」
友希「はーい」
4人は再び鶏小屋の先の階段へ向けて歩いて行く…
すると真守は鶏小屋の傍の池に向かって突然走り出す…
真守「キンザンカ…」
そして池に入り込むと池の鯉を手掴みで取ろうとする
友希「お兄ちゃん…」
すぐさまワタルは追いかけ真守を捕まえる
ワタル「マモン、違うよ。ここは池だよ、海じゃ無いよ」
濡れた靴、靴下、ズボン…
ふたばはふとその先の鶏小屋に目が入った
小屋の扉の先に1本の光があるのが見えていた…
そして4人は本殿で伊太郎を待つ事に
数分後正装をした伊太郎が本殿へ到着
友希「神主さん、兄が池に入ってしまい濡れてしまって…」
伊太郎「あらま、相当病んでるみたいだね…ちょっと待ってて‥」伊太郎は妻、郁代へ電話を掛ける
伊太郎「妻に変えの服を持って来てくれるよう電話を掛けたから…」
友希「お手数おかけします」
数分後
登坂郁代は変えの服を持参する
真守は着替えると早速
4人は祭壇へ入るのであった
友希とワタルと後ろにふたばが入り真守を囲んで座り込む
伊太郎は30分間お経を唱えながらお祓いをした
ふたばはお経を唱えて貰った事で引っかかる気持がスッキリするような気分になった
ワタルも心地良さを感じている様だ
友希はというと内心お祓いで解決出来るのかと不安を感じていた
真守はさっさと漁に出たい気持で立ち上がろうとするが3人の抑え込む力が強い為、必死にもがいている様だ
伊太郎「終了です。どうかな?」
真守「漁に出ないと…」
友希「お兄ちゃん、私だよ、友希だよ!思い出してよ」
真守「…思い出せない…」
友希「ダメだね…」
友希は下を向いて俯いている
伊太郎「私のお祓いは効かなかったって事かぁ~…残念、、友希ちゃん…私が云うのも…だけど。お兄さんを元の場所に連れて行ってあげるしか無いと思うんだよね。」
ふたば「それは、ヒドイですよ!」
ワタル「友希ちゃん、ふたばちゃんもだけど、仕方無いと思うんだ。友人の僕が云うのもどうかしてるけど…僕も神主さんの意見に同調するよ」
友希「……島へ行ったら一生戻って来れないって事なの?」
ワタル「いや、いつかは思い出してくれる事を願うしか無いよ。僕が島に行った時、真守は仕事に夢中になってたから…今の真守が過ごす場所はあの島でしか無いよ」
伊太郎「私の母が行方不明でも、その島に住んでいるっていう情報を2人から聞いた事で救われた気持ちになった。島に居るって事実があるのだから遠くから見守ってあげるしか無いかもしれない」
友希「グスッ…グスッ…お兄ちゃんと会えたのに会え無くなるなんて…」
ふたば「……」
ワタル「友希ちゃん、仕方無い…今回も僕が真守を連れて行くから」
友希「せめて、せめてチーズケーキをお兄ちゃんには食べて貰いたい…」
ふたば「私からも何かしてあげたい…。大通りの食べ放題屋さんで皆で食事会でも…」
真守「何だか皆に優しくして貰って…ごめんなさい。島に戻る事でしか頭には無くて…君達との関係は本当に思い出せないんだ」
真守は理性を少し取り戻した様子だった
ふたば「真守さん、友希とは血の繋がった兄弟なんです‥今まで2人で築いて来た絆が真守さんにはわからないだろうけど友希ならいくつでも答えられます。島へ行く事を考えるより…もう一度思い出せるよう考えて貰え無いですか?」
真守「……元の場所に戻らなくてはいけない。仲間達が待っているんだ…」
友希「お兄ちゃん…わかった。今お兄ちゃんが過ごしたい場所があるのに止めてしまうのは何だか間違ってるって思う…だから島へ行く事を許すよ」
伊太郎「家族との記憶を忘れても、島を忘れ無いって言うのは真守くんにとってはかけがえの無い場所なのかもしれないね」
ワタル「僕は真守に助けられたから、次は僕が真守にの意思に応えてあげるしか無い‥」
ふたば「鶏小屋…鶏小屋からもしかすると島へ繋がってるかもしれないよ」
伊太郎「ふたばちゃんはやっぱり扉の先が怪しいと?」
ふたば「多可祢さんが出入りしてたって聞いたし扉から出れば向かえると思うんですよね」
ワタル「うん、それならそこから向かってみるよ」
伊太郎「出発する前に家に寄って友希ちゃんが買って来てくれたケーキを食べよう!郁代がカレーを作ってくれているから。実は着替えを連絡した時に郁代からふたばちゃんと友希ちゃんへのお礼が出来て居ないって話になって私が作るよう声をかけておいたんだ」
友希「ありがとうございます…」
じゃあ、皆家へおいで〜
4人は伊太郎の後をついていく
郁代「こんばんは、皆さんお入りください。カレーライスとサラダを用意してます、子ども達と皆で頂きましょう!」
ダイニングへ郁代へ誘導された4人、座り切れ無いからとリビングへ掛ける様声掛けし麦茶とサラダとカレーライスを1人1人に運ばれる
郁代「こんな物だけど…おかわりもあるので沢山食べてね」
友希「ありがとうございます…何だかかえってすみません」
真守「ありがとうございます!こんな料理見た事無い。頂きます」
ふたば「ありがとうございます…」
ワタル「ご馳走になれるなんて…思ってもいませんでした!改心します!」
4人は黙々と食べ続けていた
伊太郎「で、これからどうするんだっけ?あっ…(子ども達が居る前だな)」
ワタル「僕、この数日間で人の温かさを充分気付かされたと言うか…とても幸せな気持になりました。これから新しい職について一から出直そうと思っています」
伊太郎「理由は聞かないけど、また改心出来たって気持は素晴らしいよ!実は、今人手を募集している所で…住職は興味は無いかな?ふたばちゃん達に掃除をして貰ってからさ、私達も改心したって言うか…もっと世の中の人達が元気になって欲しいって気持になってね、働いてくれていた人達が辞めていき、1人で切り盛りするのは大変なんだよ。もちろんタダでとは言わないよ。仕事が決まれば辞めてくれても良いし」
ワタル「ありがとうございます!ちょっと両親へ相談してみます。後2人兄弟がいて、僕は3番目なんで自由に生きていましたが、勝手な判断で街を離れた時両親はとても心配していたようです。両親には今後は所在を伝える事が役割だって思うんですよ」
伊太郎「そうなんだね、良い報告が聞ける事を楽しみにしてるよ!」
友希「人手に悩んでいるんですね!私達に何か出来る事があれば何でも言って下さい、ねっふたば」
ふたば「ん?あっうんうん」
伊太郎「7月に剛角祭りがあるんだけど、巫女さんを募集しようかなって思っていたんだ。2人に是非やって貰えると良いなと思ってたんだけど…」
ふたば「巫女さんになれるんですね!私はやってみたいです!でも、仕事のスケジュールを調整して貰えば大丈夫です」
友希「私も、その日は大切な予定があると調整して貰います!」
伊太郎「では、採用だね!でも簡単には出来無い仕事だから、予定を合わせて指導したいから郁代、連絡先教えてあげて」
郁代「あら、2人が手伝ってくれるのは頼もしい、よろしくね〜」
こうして暫し団欒後、伊太郎は鶏小屋へと4人と向かった‥
ワタル「お世話になりました。真守を送ったらまた戻って来ますのでドアは開けておいて下さい」
友希「兄を…よろしくお願いします」
真守「お世話になりました…ありがとう」
伊太郎は鶏小屋を開ける、鶏達がバタバタしているが
伊太郎が餌で誘導している。それをふたばに託す伊太郎
そして…鉄格子のドアを開けると2人は旅立つのであった。




