第96話 岡崎遠征
「りりちゃんが攫われたってことかぁ」
「ああ。【アニメックスダンジョン】で凜々花と別行動をしていたら、エイムズの襲撃にあって、何とか切り抜けて凜々花と合流しようとしたが、ダンジョンに彼女の姿はなかった」
「それで、エイムズが攫ったと思われる発言を残して、消えたというわけね」
「そうだ。奴が言うには【岡崎城ダンジョン】で待っているらしい」
「確実に罠だよ?」
麗華の警告は正論だ。
相手が待っているということは、確実に勝利のために準備をしていることに他ならない。準備もせず、敵を迎え撃つなどバカがすることで、奴らがそのバカである可能性はゼロに等しいだろう。
「罠だろうと、凜々花を救えるのであれば、俺は何処にだって行くさ。それが北海道だろうとな」
「……そうだね。悟はそういう人だよね」
俺が麗華と出会ったのだって、凜々花を眠りから目覚めさせるために、北海道へと向かったのが理由だったからな。
「私も手伝うよ」
「当然、私も手伝うから。りりちゃんは大切な仲間だからね」
俺らは予定を前倒しにして、以前北海道から京都へと移動した際に使用した麗華の飛行能力を使って岡崎へと向かう。
「エイムズが居ると仮定して、あいつへの勝ち筋を考えないといけないな」
「スキルの詳細が分からない以上、使用したことがない技で突破するしかないんだろうけど、竜馬くんの技は見せちゃったんでしょ?」
「ああ、そもそも竜馬の力は攻撃に向いていないから、そもそも無理だ」
「どうすればいいかなぁ……」
情報官の名に恥じぬ、情報収集能力と知識にある攻撃は通用しないという二つの力が合わさった結果、奴の防御性能はトップクラスに高い。何かカラクリがあるのだとしても、そのカラクリが分からない限り、防御性能が高いという結論に変わりない。
「私がエイムズの相手をする」
「でもれいちゃんに隠している能力なんてないでしょ?」
「ない。でも私が戦うのが、最も勝率が高い戦略」
「それはそうだけど……」
麗華の言ったように、俺や従魔たちが力を合わせて戦うよりも、麗華一人で戦った方が戦闘力は遥かに高い。まだ見せたことのない力があるのであれば、その限りではないが、今の俺たちに隠している力はないため、麗華一人で戦った方が勝率は高いだろう。
だが麗華一人で戦ったとしても、確実に勝てる保証はどこにもない。
「そもそもエイムズ一人で待ってるとは思えない」
「確かにそうだな」
エイムズが一人で待っていると思い込んでいたが、二度も【十聖】の襲撃を退けている俺たちに対して、同じ轍を踏むような襲撃をしてくるとは思えない。
であれば、最低でも【十聖】が一人……最悪の場合、複数の【十聖】が俺たちのことを待ち構えている可能性もあるか。
「だからエイムズには私が当たって、他の敵は悟やゴン太くんたちで倒すのが、私たちに残されている勝ち筋」
「……ああ、分かった。その作戦で行こう」
「悟くん!?」
「まいちゃん、言いたいことは分かる。麗華、作戦は作戦だ。現場では臨機応変に動くぞ」
「分かってる」
作戦会議が終わる頃には、既に岡崎上空へと辿り着いていた。
空から見た限り、【岡崎城ダンジョン】に異変が起きているようには思えないが、奴らは何かしらの罠を張っているだろう。
俺たちは【岡崎城ダンジョン】近くの開けた場所に着地し、周囲の警戒を始めた。
流石の【ダンジョン嫌悪派】でも、地上での襲撃はしてこないと思っているが、絶対ないとまでは言い切れないからな。
「地上での襲撃はなさそうだな」
「うん、【岡崎城ダンジョン】へ行こう」
俺たちは警戒心を強めたまま、【岡崎城ダンジョン】へと向かった。
ダンジョンの外観は、以前見た時と変わっていないように思える。多少の変化はあるかもしれないが、気付けない程度の微量な変化であれば、気にする必要はないだろう。
麗華が先陣を切って、地球とダンジョン内を隔てる門を潜った。
俺とまいちゃんも、麗華の背中を追って門を潜る。俺たちに遅れてゴン太たちも潜って来た。
全員揃ったのを確認すると、俺たちは凜々花探しを始める。
「凜々花が何処にいるか……そもそも居ないかもしれないが、声を出して探すしかないよな」
「うん、どんな拘束をしているか分からないけど、声が出せる状況だとしたら、声掛けは必須だろうね」
「その心配は無用だ」
「……エイムズ――ッ!?」
あっさりエイムズが姿を現した。
そしてその背後には、十字架に張り付けにされているような格好で、空中に浮かんでいる凜々花の姿がある。
「おっと、何度も言わせないで欲しいが、一度見た攻撃は効かない」
エイムズが姿を見せるのと同時に、麗華が氷の槍を地面から突き出して、エイムズのことを串刺しにしようとしていたが、突き刺さる寸前に砕け散っていた。
「それに、今日は私だけではない」
その言葉と共に、空間が歪む。
それは初めてエイムズが現れた時に起こった現象であり、人を瞬間移動させると思われる能力だ。
「お前はッ!!」
空間の歪みから姿を現れたのは、エイムズと同じような黒コートを身に付け、手に持った槍には見覚えがある。
方天画戟と呼ばれる創作物において中国の武将“呂布”がよく所有している槍を手に持っているそいつは、洞爺湖ダンジョンにて致命傷を負ったはずの男、【十聖】の一人である呂布だ。
「――ッ!?」
反射的に身体が動いたため、何とか防ぐことができたが、呂布の動きは目で追うことができなかった。
「ほう、これを止めるとは、だいぶ成長しているようだ」
呂布は俺に狙いを定めているようだ。
エイムズVS麗華 呂布VS悟&従魔たち
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