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おっさんテイマー~趣味のキャンプ飯を間違ってダンジョンでやったら魔物に懐かれました〜  作者: Umi
第1章 焔が輝く狐火

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第53話 切り抜けた先

「……温存とか言ってられないな」


 俺は剣を抜く。

 凜々花の武器である【長谷部】を抜き、囲うゴブリンキングの下へと駆ける。しかし無駄に突っ込むつもりはない。

 急停止、そして剣先が届かない位置で剣を振り抜き、飛ぶ斬撃を発生させる。斬撃は一体のゴブリンキングを襲い、身体に大きな傷を刻み込む。


「はぁはぁ……やっぱり一回使うだけで消耗が凄いな」


 【剣術】スキルがないと、【長谷部】を上手く使いこなすことができなくて、凜々花以上に消耗が激しくなってしまう。

 今の俺が使える回数は、多分四回が限界だ。それ以上に使おうとすれば、疲労で動けなくなってしまうはずだ。


「ゴン太!」


「コン!」


 ゴン太の“狐火”がゴブリンキングへと射出された。

 数秒溜めたことで、その威力は数段も強くなっており、ゴブリンキングを一撃で魔石へと変える。だが開いた突破口は直ぐに別の個体によって塞がれてしまい、全ての個体を殲滅しない限り、抜けられそうにない。


「どうやって抜けようか……」


 全力で当たれば、ここを抜けることはできるだろうが、その次が無理になるだろう。複数ダンジョンでのスタンピードが確実である以上、ゴブリン程度に消耗を強いられていたら、この先で生き残ることはほぼ不可能だ。


「“シンクロ・狐火”」


 俺は【シンクロ】を使い、掌をゴブリンたちの方へと向ける。

 ゴン太の力を借り受け、生み出した“狐火”。サイズは圧倒的に劣っているが、ホブゴブリンを屠るには足る大きさだ。


 “狐火”が掌から離れる。一瞬にして加速した“狐火”は、ホブゴブリンへと着弾した。複数体のホブゴブリンを魔石へと変え、残る敵をゴブリンキングのみにすることができた。


「はぁはぁ」


 俺ができる攻撃手段は疲労度が高すぎる。

 疲労度の少ない攻撃手段は、普通の斬撃くらいしかないが、それではゴブリンキングを倒すことはできない。


「あと……十体のゴブリンキングか」


「カメェ」


「そういえば、亀之助の攻撃方法を見てなかったな。頼めるか?」


「カメェ」


 すると亀之助は口を開く。

 水流カッターでも使うのかと思ったが、口から出てきたのは霧状の水分。しかし出て来ている量と環境に与えている影響に差がある。そこからただの霧ではなく、スキルによる霧だと言うことが分かった。


 刹那、ゴブリンキングたちが意味不明な動きを見せた。何もないところへと剣を振り下ろし、何も成していないのに喜んでいる。


「これは……幻術か?」


「カメ!」


 その幻術は、俺らに有利な状況を引き寄せた。

 幻術に魅入られたゴブリンキングたちが、同士討ちを始める。剣をぶつけ合い、身体を斬り裂き、斬り裂かれを繰り返し、やがて一体のゴブリンキングを残して魔石へと変わった。


「終わりだ」


 未だ幻術に嵌っているゴブリンキングの首へと剣を振り抜く。飛ぶ斬撃は発生させていないため、疲労は体力の消耗だけで済んだ。


「……進もう」


「コン」


「ポン」


「ニャン」


「カメ」


 俺たちに勝利を喜んでいられる余裕はない。

 まだまだ“函館ギルド”は遠い。そしてそこまでの道中にいくつかダンジョンがあった。つまり地上に出てきている魔物も多い場所だ。


「できるだけ接敵を避けていくぞ」


 息を殺し、人が居なくなった街を進む。

 鼻に香る血の匂いは、既に感じなくなった。慣れたくない匂いだが、人とは慣れるものだ。


「……ダンジョン前だってのに、魔物が居ねぇ」


 ダンジョンを遠巻きに見てみたが、魔物が居なかった。

 スタンピードが起きているのであれば、ダンジョン前にうじゃうじゃと、たむろしていてもおかしくないはずだ。それなのに魔物が居ないなんて――。


「これは貴方が引き起こしたの?」


「――っっっ!!!?」


 背中から聞こえて来た声。

 全身に鳥肌が立つ。生まれたての小鹿のように身体が震え、立っていることすらままならない。俺は腰が抜けて、地面に座り込んでしまう。


「答えないのなら、肯定だと受け取るよ」


「――」


 震えて口が動かない俺は、全力で首を横に振って、否定の意を伝えようとする。


「……」


「――」


 見つめて来る。

 俺はその顔に見覚えがある。


 【日本最強の冒険者】の名を冠する女性冒険者。

 Sランク冒険者、“絶氷の薔薇姫(ぜっひょうのばらひめ)西園寺(さいおんじ)麗華(れいか)だ。


 西洋人形かと勘違いしてしまうほどに浮世離れした美しい顔、ピンッとした背筋、白銀の軽鎧、腰に差した細剣(レイピア)


 姫騎士、俺はそう思った。あまりに実力が乖離し過ぎて、逆に冷静になって来た。



「……嘘じゃないみたい」


「はぁはぁ」


 西園寺が創り出していた張り詰めた空気が霧散する。

 俺は呼吸を止めていたようで、慌てて酸素を取り込む。


「その子たちは、君の仲間?」


「……」


 西園寺は子供のように首を傾げている。

 可愛い。状況に合わず、そんな場違いな感想を(いだ)いてしまった。


「あ、ああそうだ。俺の従魔たちだ」


「そう……撫でてもいい?」


「ゴン太たちが良ければ」


 俺に否定できる胆力はない。

 そしてゴン太たちも生物的に格上である西園寺のお願いを拒否することはできない。済まない、頼りないご主人で済まないな。


 西園寺は膝を曲げ、ゴン太たちに目線を合わせて聞いていた。ゴン太たちは首を縦に振り、自分たちから近付いている。


「くーん」


 あれ、結構懐いてないか?

 もしかしてビビっているのは俺だけか……なんかビビっているのが馬鹿らしくなってきた。


「――西園寺さんですよね」


「……そうだよ」


 西園寺はゴン太たちを撫で続けて、こちらを一向に見ようとしない。


「やっぱりギルドから要請を受けて?」


「魔物と触れ合うために、ダンジョンに潜っていただけだよ」


「……じゃあ知らないんですか?」


「???」


「今北海道全域で、複数ダンジョンのスタンピードが起きているんですよ」


「――」


 ……知らない野良のSランク冒険者だったみたいだ。



【第22話 上位の冒険者】で少し登場したSランク冒険者さんです。


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