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おっさんテイマー~趣味のキャンプ飯を間違ってダンジョンでやったら魔物に懐かれました〜  作者: Umi
第1章 焔が輝く狐火

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第109話 エリザベスが語る黒過社

 凜々花の突進で死にかけたが、まいちゃんのお陰で痛みが尾を引くことなく、探索を続けることができた。


「私たちからすれば目も当てられない、下手な戦い方だが、冒険者になってから一年未満のルーキーにしては、よくやっている」


「あ、ありがとうございます」


 ルーキーだという話をした覚えはないが、相手はギルドのトップだ。日本最強の冒険者である麗華と組むにあたって、色々調べられているんだろうな。


 そもそも難関が故に未踏破ダンジョンとなっている【魔境群馬ダンジョン群】の探索に許可するのに、身辺を調べるのは当然のことだろう。


「従魔たちの実力は測れなかったが、いつかは知れるだろう」


 エリザベスの不敵な笑みに、身体の震えが止まらなくなった。

 その笑みを悪だくみをしている笑みだと思ったからではない、社畜として働いてきた時に、何度も見た表情と似ていたからだ。それは人を駒としか見ておらず、壊れるまで酷使する上司の笑みと瓜二つだった。


「……私は従魔たちのことを家族のように思っています」


「急にどうした……と言いたいところだが、君の生い立ちは知っているつもりだ。黒過(くろすぎ)社で終電ギリギリまで働き、朝は7時台の出勤を強要。罵声や暴力は当たり前、功績は上司のもので失敗は部下のもの……先ほど見せた私の笑みが、典型的なブラック企業で見てきた笑みと似ていたのだろう?」


「――ッ!!」


 想像以上に全てを知られていた。


 こんなご時世でもブラック企業であり続けられたのは、徹底的な情報統制によるものだ。だから労基に入られることは基本的になく、あったとしても隠し通せていた。

 そんな情報を隠す黒過社の牙城を崩し、情報を得られたなんて想像もしていなかった。


「私も徹底的に調べるつもりなど毛頭なかった。だから冒険者を秘密裏に雇い、徹底的に情報統制をおこなっていることも、証拠が出なければ不問とするつもりだった」


 そうだ。エリザベスの言う通り、黒過社は冒険者を雇って退職者などを脅すことにより、情報の流出を避けていた。そんな徹底的な会社が証拠なんて残すはずがない。


「しかし偶然の産物だが、【ダンジョン嫌悪派】との接触があることを知った」


「――ッ!?」


 【ダンジョン嫌悪派】との接触だと?

 確かに経営陣は、ダンジョンを嫌っているダンジョン嫌悪世代の人間が大多数を占めていたが、犯罪に手を染めるとは思っても――いや、違法労働万歳の真っ黒組織だったかもしれないな。


「その接触というのは、具体的にどんなのでしょうか?」


「資金提供、武器の密売、本社の地下を提供していたりと手を組んでいると言っても過言ではない」


「そこまで……」


 会社に勤めていたというのに、全く気付かなかった。いや、仕事があまりに忙し過ぎて、気付こうとしていなかっただけなのかもしれない。【ダンジョン嫌悪派】の人間とすれ違っていても可笑しくないということか。


「だからこの探索が終われば、このメンバーで黒過社の本社に襲撃を仕掛ける」


「そんなことして良いんですか!?」


「私たちは元官営の民間企業と言っても、日本政府以上の権限を持っている」


「なっ!?」


「そうでもしなければ、大量に発生したダンジョンの対処などできるはずがないからな」


 確かにこれまでも法律スレスレの対応がいくつもあった。

 違法社畜になれたせいで、普通だと思い込んでいたが、普通の会社がやっていれば解体は免れないような物ばかりだ。


「……私たちの話はもういいだろう。そろそろ進まなければ、ならない時間だ」


 エリザベスが歩き出すのに合わせて、他の【先駆者】たちも歩き始める。俺たちも遅れて歩き出すが、頭の中は古巣のことで一杯だった。

 いくらクソみたいな会社だったとはいえ、社員全員が悪かったわけではない。それどころか俺たち下っ端の間では、同志と呼び合って心が通じ合ってすらいた。

 

 もし【先駆者】たちによる襲撃が行われれば、被害者がゼロで済まないことは分かり切っている。

 ならどうするべきか……元同僚たちを守り切れるだけの、力を付ける。それしか道は残っていないだろう。


「どうしたの悟?」


「強くならないとな……って思っていたんだ」


「そうだね。悟はもっと強くなった方がいい」


「それはそれで、心が傷つくな」


「……面倒くさいよ、悟」


 麗華の言葉は、メンタルにグサリと刺さったが、止まっている暇なんて俺には残っていない。


 なぜなら既に【先駆者】たちに置いて行かれているからだ。これは力の話とかではなく、物理的な話のこと。


「――」


 駆ける。

 こんなところで置いて行かれれば、直ぐにアイアンゴーレムの糧となり、元同僚を守るなんて夢のまた夢だ。


 とにかく走り、先を行く【先駆者】たちの背中を追った。そこには凜々花やまいちゃんは当然のこと、ゴン太たちの姿もあった。


 ご主人を置いて行くことないじゃないか……


 俺の悲しい心の叫びがゴン太たちに届くことはなかった。



エリザベスの言葉通り、【魔境群馬ダンジョン群】を踏破することができたら、黒過社襲撃編(仮)が始まります。


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