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おっさんテイマー~趣味のキャンプ飯を間違ってダンジョンでやったら魔物に懐かれました〜  作者: Umi
第1章 焔が輝く狐火

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第104話 ゴブリン勇者 1

 視界を覆い尽くす真っ白な光。

 やがてそれも力を失い、視界が戻り始めた。そんな俺の視界に映るのは、先刻までなかったはずの大穴。その穴は終わりが見えず、何処までも続く闇が広がっている。


「多分、九階層程度までは開けられたぞ!」


 その言葉から察するに、モコモコの服を着ている男がこの大穴を開けたのだろう。

 あまりに規格外な力を前にし、頭が理解するまで時間が掛かってしまったが、この人たちはそんな時間もくれやしない。


「行くぞ」


 エリザベスの合図に合わせて、【先駆者】たちは大穴へとその身を投じた。麗華も続こうとしていたが、身動き取れずにいる俺たちのことを機に掛けてくれたようで、俺たちのことを氷に包んでから降りて行った。


「――ッ!!」


 麗華に遅れて、俺たちを包んだ氷の球が、大穴へと落下した。

 安全バーによって固定されているジェットコースターとは違い、俺たちは氷の球の中でシェイクされる。ダンジョン探索によって、身体の強度が上がっているため、痛みや怪我を負うことはなかったが、感じる恐怖は過去一だった。


「はぁはぁ、怖かった」


「悟くん、大丈夫かい?」


「なんとか……ってまいちゃんは平気そうだな」


 俺や凜々花、ゴン太たちも落下の恐怖で疲れている様子だが、戦闘を専門としていないはずのまいちゃんだけは、一切恐怖を感じていない様子だった。


「まあ何度か経験しているから……」


 何処か遠くを見つめながら言うまいちゃん。

 麗華と友達なら、何度か経験していても可笑しくない……いや、おかしいよな!?


 と一人でツッコんでみたものの、これ以上踏み込むことはできなかった。遠くを見ているということは、忘れたいことだろうし、思い出させるような真似はしたくなかったからだ。


 やがて俺たちを覆っていた氷も解け、【先駆者】たちの会話が耳へと張ってくるようになった。


「――は十階層のようだ」


「久しぶりのダンジョンで、テンションがノッていたみたいだな!」


 大穴を開けた張本人であるモコモコの服を着ている男は、自分の手をグーパーして、出力の感覚を確かめているようだ。

 俺からしたら、ダンジョンの階層をぶち抜くこと自体規格外の力で、それが九階層だろうが、十階層だろうが、誤差にしか感じられない。


「テンションを上げるのは良いが、魔物を引き寄せることは忘れるなよ」


「分かっているさ、江梨子。自分で引き寄せた分は責任を持つさ!」


 エリザベスが言ったように、ダンジョンに大穴を開ける程のエネルギーは、ダンジョン中に響き渡る轟音を鳴らす。

 当然、音に引き寄せられた魔物たちは、元凶を潰すため一斉に動き出している。


「この足音は、なんて魔物なんだ?」


「……確か十階層はゴブリンだった気がする」


「ゴブリン? 急に難易度が下がっていないか?」


「ただのゴブリンじゃない。ゴブリン勇者によって強化されたゴブリンの軍隊」


「ゴブリン勇者……」


 変な名前だな。

 ちなみにだが、魔物の名前は【鑑定】スキル持ちの人間が名前を調べた種類と、【鑑定】スキル持ちでは到底行くことができない下層にいる魔物に対して勝手に付けた名前が定着したものの二種類がある。


 ゴブリン勇者は……後者だと名付けた者のネーミングセンスを疑いたくなるが、前者も【鑑定】スキル持ちが調べられる階層に居るとは思えないし……センスが悪かったのか。


「悟さん」


「どうした凜々花?」


「人のセンスを疑うよりも先に、自分のセンスを磨いた方が良いと思います」


「急に辛口評価だな。確かに俺はネーミングセンスがないと思うが、ゴブリン勇者に比べれば、マシだろ」


「どう思います、まいちゃん?」


「ドッコイドッコイでしょ」


「――」


 ゴブリン勇者とネーミングセンスがドッコイドッコイだ、と!?

 流石にそこまで悪くないはずだと、麗華に確認を取りに行こうとしたが、地響きが近付いて来ていたため、俺のネーミングセンスの件は後回しになった。


「グギャ!」


 ゴブリンの群れの先頭に立つゴブリン。

 装備は純白な鎧に、光り輝く剣。これだけを聞けば勇者だと思えるが、着ているのが普通のゴブリンであり、背もそこまで通常個体と変わっていないため、ぶっちゃけ似合っていない。


「来るぞ」


 エリザベスの警告。

 刹那、突風が吹き荒れた。咄嗟に麗華が氷の壁を張ってくれたため、際限なく吹き飛ばされることはなかった。しかし俺たちを守る氷にはヒビが入り、あと数分もすれば破られてしまうだろう。


 その原因を探るため、前方に視線を向ける。そこには【先駆者】の一人である柳生と、互角に剣を合わせているゴブリン勇者の姿があった。


「やはり一筋縄ではいかないな」


「グギャ」


 ゴブリン勇者は柳生が認める実力者ということだ。

 そしてゴブリン勇者に率いられたゴブリンたちもまた、ある程度の強者ということ。


「動くぞ」


 ゴブリンの群れは、正規軍のような規律の取れた行進を始めた。

 まさにゴブリンの軍隊。数千にも数万にも思える大群が、こちらに狙いを定めて行進を行っている。


「【――】」


 しかし恐怖は感じていない。なぜならエリザベスが呪文を唱え始めたため、ゴブリンは一掃されるだろうと思っているからだ。



悟の想像通り行くのでしょうか?


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