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ある日の事、
「ねえ、母ちゃん、ハインツたちをうちに呼んでいい?」
「母上な、別にいいけど、いつ?」
「母上の都合の良き日でなる早でお願い」
ということで3日後にうちにまた皆が集合した。
「おばちゃん、久しぶり」
「お、ハインツ君久しぶり、もうじき結婚するって?おめでとう」
「あ、はは、まあ、ありがとうございます」
「まあ座って座って」
やがてぽつぽつと人が集まり、ようやく全員集合した。
それぞれ持ち寄った食事と、今日はアルコール無しの飲み物だ。
「俺、彼女とこのまま結婚していいのかな」
ハインツがぽつりとそうつぶやいた。
皆どうやって会話を始めようかと探りながらどうでもいい話をしていたため、ようやく話を始められそうだ。
「ハインツ、マリアさんの事どう思ってる?」
「はじめは明るくてかわいい子だと思ったよ。
少し我儘だけどそこが可愛いっていうか、守ってあげたいと思ってさ。
今は・・・わからない」
「わからないってどんなところが?」
「う~ん、なんていうのか本当に俺の事を好きなのかな?って思うことがたまにあって」
「好意を感じられないってこと?」
「俺っていうより、騎士の俺が好きなんじゃないかと・・・」
「あ~、地位が目当てか、それってハインツ君が騎士辞めたら振られちゃうのか」
「母ちゃん、はっきり言いすぎ」
「あ、ごめん」
「いや、多分そうだと思う」
ごめん、はっきり言いすぎてしまった。
しょんぼりしたハインツ君に私はお詫びに手羽先を温めて渡した。
「俺は本気だったんだけど、付き合っていくうちにだんだんモヤっとするっていうか、なんか違和感?みたいなものを感じて・・」
ふむふむ
「それでモヤモヤしていたらマリアが皆に連絡してるって話を聞いたんだ」
「本当に知らなかったんだよな、ハインツ」
「うん、まさか騎士仲間にも個別に連絡とり合ってたり、二人きりで会っていたりしたなんて、俺全然知らなかったよ。
誰も俺にそんなこと教えてくれなかったし」
「皆遠慮して言えなかったんだと思うよ」
「そうそう、変な気はなかったと思うよ」
「変な気のやつもいたりして」
「母ちゃん!!!」
「いたっ」
なんとダンが私の頭にどこからか転移させたたらいを落としてきた。
「ごめんって、ちょっとからかっただけだって、ごめんハインツ君」
「あはは、いいよ、なんかちょっと笑えて力抜けた、ありがとうおばちゃん」
「まったく母ちゃんにはデリカシーがないんだから!しかも思ったことすぐに口に出ちゃうんだから」
「むう」
息子に叱られてしまった。
「このまま結婚しないといけないのかな」
「延期したらいいじゃない」
「それが、父が騎士団長に立会人をお願いしてしまって・・・」
「スケジュール組んでもらったんですよ、親父さんがお願いして」
「ああ、騎士団長と同級生だったんだっけ?」
「筋肉で語り合った仲らしいです」
「うは、筋肉同志~」
「だから結婚式を延期するのはちょっと難しいというか。
俺も母ももう少し彼女の事を理解してからにしたいって言ったんですけど、知らないうちに団長に話をつけてしまってて」
「ありゃま、無駄に行動力のある脳筋だ」
「マルクからもマリアと結婚したら距離を置かせてもらうことになるかもしれないって話してもらって。
それを聞いて俺、マリアよりもマルク達とこれからも一緒にいたいと思ってしまったんす」
「あ~、マリアって娘の事まだそこまでの気持ちになってなかったってことか」
「そうなんだろうな、皆と話した後、はっと目が覚めた気がしたんだそう思った」
「ハインツの目が覚めて俺はうれしいよ。よかった」
「僕らもうれしいよ」
うんうんとうなずき合うダンたちを見ていたアリシアが声をかけた。
「よかったよかった、でどうすんの?」
「「「「・・・・・」」」」
「無策?」
全員がしょぼん顔になってしまった。
「ねえアリーおばさん、なんかいい考えない?」
「母ちゃん、なんとかアイディア絞り出してくれない?」
「おばさんだけが最後の頼みの綱なんだよ」
息子を始め全員が両手を握ってこちらをウルウルした目で見つめてくる。
(ちょ、そんな目で見ないで~、そんなに期待しないで~)
「わかった、わかったから」
「本当?ありがとうおばさん」
「すぐには考えつかないからちょっと待ってよね」
「母ちゃんなら悪知恵満載だろ?ちょちょっとひねり出し、イタっ!」
「は・は・う・え!!!誰が腹黒だ」
「腹黒なんて言ってないっ、ごめんって母上!イタ、ごめんて」
「むう」
「ちょっと考えてみるけど、あのさ、ハインツ君、お母様はあまり賛成してないってことでいい?」
「うん、母はマリアの事ちょっと苦手だし、せめてもう少しマナーを学んでから結婚した方がいいって言ってたっす」
「ふ~ん、じゃ、ハインツ君のお母様と連絡とってみるからちょっと時間ちょうだい」
「母上、あまり時間がない・・・」
「うん、わかってる、ちょっとマルク君にも連絡することがあると思うんだけど、いいかな?」
「じゃあアリーおばさん、この伝言鳥に魔力流してコレを使って連絡してくれる?」
「ありがとう、なんか高貴な顔してる気がする~」
「普通だから」
「いや、俺らに渡してくれてる専用鳥も高貴な顔してるぞ」
「そうそう」
「気のせいだってば」
その後はわちゃわちゃと最近の仕事の事や、研究の事などを話して楽しく過ごした。




