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ダンたちと連絡先を交換したマリアは、グループではなく個別に連絡をよこすようになってきた。
内容も
「ハイ君のことで相談がある」
「ハイ君についての悩みを聞いてほしい」
「ハイ君へのプレゼントを悩んでいるので一緒に選んでほしい」
などなど、ハインツに関することだったことから返信するしかなかった。
そのうちハインツが仕事で遠征に行ったり夜勤当番の日は「ハイ君と連絡が取れなくて寂しいから話し相手になって」夜に伝言鳥で長話の相手までさせられる始末。
「僕の所にも来てたよ」
「まさか王子の所にまで・・・」
「まあ、身分隠してるから、単なるハインツの友達枠なんだろうけどね」
「あの子認識阻害のマルクの姿を陰キャだと思ってるみたいだったしな」
「で?相手してあげたの?公務も忙しいんでしょ?」
「まさか!相手してたのは僕になりすました影だよ。
内容は後から教えてもらったけど、なかなか面白かったよ」
「うぉ~何それ、めちゃくちゃ聞きたいんだけど」
「母ちゃん、食いつくところが変だって」
「母上と呼べ、マルク君、今度再生してよ」
「うん、今度聞かせるよ、今日はないからさ」
「話続けるよ」
ダンたちには影が付いていないため、当然本人が相手をするのだが、面倒くさくて断ったり、そっけない態度をとっていたのだが、
ハインツにウルウルとした目でせまり、
「ハイ君の事をもっと知りたかっただけなのに、意地悪される」
そういって訴えかける。
もちろんハインツはみんなが意地悪をするはずがないと思うのだが、
「マリアはほかの女の子よりもちょっと繊細だからもう少し優しくしてやってほしい」
などと頓珍漢なお願いをしてダンたちをあきれさせていた。
「あんたたち、気が長いのねぇ。
私なら速攻で雷撃お見舞いしちゃうわ」
「いやいや、さすがに友達の彼女をそんなに無下にはできないって」
「伝言鳥に雷仕込んで返すとかならばれないんじゃない?」
「ばれるわ!」
「おばさん、そんな魔法も開発してんのかよ」
「構築は結構難しかったんだけどね、割と使えるわよ。
でもさ、恋は盲目っていうけど、ハインツ君はまっすぐな筋肉だからねぇ、
しょうがないのかな」
「まっすぐな筋肉ってなんだよ」
「脳みそマッスルに花咲いてるってことよ」
「わかんねー」
「アリーおばさん独特すぎてわかんないって」
そんなハインツだが、なんとデート中にハインツの父に会ったことが発端になってどんどん結婚の話が進んでいったという。
「え?マジで??そんなのが妻でいいの??」
「そんなのって、母ちゃん、言い方・・・」
「俺たちもそう思ってるよ」
とある日、ハインツとマリアは街を歩いてデートしていた。
「これ可愛い~マリアこれほしい~」
そういってマリアは店の中でバックをおねだりしている。
「え、でもさっきもドレスをオーダーしてたよね?」
「うん、ハイ君マリアによく似合うよ~って誉めてくれたでしょ?
だから、マリアそれに似あう小物もあったらいいな~って思ったの。
すごくいい考えでしょ?」
「あ、ああ、うん、まあ」
「よかった~、どっちの色にしようかな?」
(さっきも既製品は体に合わないからってオーダーにしたけど、オプション付けたら結構な額になったんだよな)
ちょっぴり財布の中身が機になるハインツだったが、マリアのキラキラした笑顔が可愛くてついおねだりに負けてしまう。
今まで彼女もおらず、趣味は筋トレ、自宅住み、そして騎士は危険手当もつくので貯金もかなりある。
多少の散財では困ることはないのだが、なんとなく、なんとな~くモヤモヤしている。
そんなマリアの散財に付き合い、夕飯を食べるために予約のレストランに向かおうと魔道車を呼ぼうとした時、
「おい、ハインツ」
後ろから声をかけてきたのがハインツの父親だった。
「あ、父上」
「お、なんだデート中か?」
「ああ、今から夕食に行こうと思っててさ」
「ほお、初めまして、私はハインツの父です」
「あの、は、初めましてマリアです。
ハイ君のパパですか?素敵~」
そういって抱き着いた。
「ちょ、マリア!」
「あ、いっけな~い、マリアちょっと人との距離感がおかしくて~。
ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」
そういってハインツ父に抱き着きながら泣き始めた。
「おい、ハインツ、大したことじゃないんだからそんなに怒るなよ。
可愛い子じゃないか。
マリアちゃん、そんなに気にしないでいいんだよ、な、ハインツ」
優しくマリアの背中をポンポンとたたきながらハインツ父はそういった。
そして泣いてるマリアの肩をそっと押してハインツに渡してきた。
「ああ、マリア、そんなに怒ってないから」
「本当?よかったぁ、ハイ君のパパ優しい~、ありがとう」
「ハハハ、おいハインツこんなかわいくてけなげな子なかなかいないぞ。
マリアちゃんを大事にしてやるんだぞ」
「もちろん」
それからマリアの事を気に入ったハインツの父は早く結婚するように言うようになってきたという。
「あんないい子を逃したらいけないから」だそうだ。
「あの筋肉父か、息子の結婚の時期なんて勝手に決めんなっての」
「でもハインツも親が気に入ってくれてるならって結婚することになったんだよ」
「ふ~ん、で、ここまでの話で私に何を判断してほしいの?」
「俺たちはハインツの友達だからどうしてもハインツよりになっちゃうだろ?
あの彼女は変だと思うんだけど、第3者から見てどう思うか知りたくてさ」
「それに、アリーおばさんの所なら防音魔法かかってるし、安全にも配慮されてるから面倒くさくないでしょ?
ってことで僕がダンにお願いしたんだ」
「そうそう、おばさんなら忖度もしないし、思ってること言っちゃうしね」
「誉めてんの?」
ぱりっ
「「「「当然です!!!!」」」」
 




