14.村の地図
食堂でのランチが終わり、大川さんは村役場へ、医者は診療所へ帰ることとなった。
「診療時間が終わったら、入口の扉は鍵を掛けますので、それ以降は裏口にお回りください。インターフォンを鳴らしていただければ、中にいる者が対応します」
「ありがとうございます。お世話になります」
「では、お先に失礼します」
医者は診療所へ徒歩で帰っていった。ここからは歩いて10分程度で着くという。
オレは大川さんと共に村役場へ行くこととした。この村の地図を貰うためである。ここから村役場は車で1分程度。歩いても3分ほどだという。説明を聞いている間に村役場の駐車場に到着した。
村役場に入ると、大川さんはA4サイズの紙を持ってきた。
「こんなものしかなくて」
鉛筆で描いたであろう手書きの簡易的な地図をコピーしたものである。そこには村役場の場所、村の小中学校、郵便局、商店、食堂、米屋、診療所、電気屋、保育所、神社、寺の場所と曲がり角の目印が描かれているだけだった。
オレが苦笑いしているのを見て、大川さんは安心させるように言った。
「歩いてみると、この程度でも十分だと分かるかと思います」
「五十嵐が倒れていた場所はどこなのですか?」
「それは、この神社の境内になります」
地図には小中学校、郵便局、商店、食堂、米屋、診療所、電気屋、保育所は1つずつしかないが、神社は5箇所、寺は9箇所あった。5箇所のうち、村のはずれにある1社に大川さんは赤丸を付け、ついでのように村役場、診療所、食堂にも丸を付けた。
「寺と神社多いんですね」
「そうですね。村の規模の割に多いかもしれないです。この村は今でこそ人口が400人程度の小さな村ですが、江戸時代は駿州往還という街道に繋がる道沿いだったこともあって、今より人も多く住んでいたようです。旅の途中で亡くなる方を弔うこともあったことから、主要な宗派のお寺が揃っているんですよ。いくつかのお寺は、寺子屋の役割もしていたようです」
「駿州往還というのがあるんですね」
「富士からの身延線を使用されたということですが、身延線が通っているのも駿州往還の一部なんですよ。神社が多いのも、おそらく旅の安全を祈願した名残かと思います」
「へえ」
オレは大川さんに礼を言い、五十嵐が倒れていたという神社に向かうことにした。徒歩で30分くらいだという。「結構遠いな…」と心の中でつぶやいた。




