ドールマスター・道彦
その瞬間、私は目の前の光景に吐き気を催した。
ドアが開いたことで光が差したが、それでも薄暗い部屋の中には、レミやアインといった攫われた人達が、操り人形のように手足に糸をくくりつけられて、壁や天井に吊されている。さながら使わない人形を部屋に飾っているような感じだ。
その下で、ドール愛好会のメンバーは床や椅子に座りながら、自分達が愛用している人形に愛を囁き、愛おしく撫でては気色の悪い笑みを浮かべている。
まさに、陰鬱で狂気に満ちた空間。その最奥の闇から、首謀者であるあいつが、尾形道彦がマリーを抱いて姿を現した。
「なんだい? 騒々しい……おや、これはこれは。誰かと思ったら岸川さん達か。ようこそ僕らの城に。今日はどういった用件で?」
まともに言葉を交わすのは久々だけど、ネチっこくて腹立つしゃべり方と性根は変わってないみたい。
「うっさい道キモ。白々しいっつーの。レミ達を返せ!」
「相変わらず汚い口だね。かわいくない。そんな君に比べたら、うちのマリーの方が何十倍もかわいい」
こっちの訴えなど意にも介さず、マリーの頭を撫でて愛でる人形ヲタクに、私は怒りを滲ませる。
そんな私を見て、道キモの思う壺になると思ったのか、コハクは私を制すると、冷静に話を聞いてくれた。
「して、道彦よ。なぜ、このようなマネをしておる?」
「知りたいかい? いいだろう。それは2つの壮大な目的のためさ」
「目的?」
「あぁ。1つは、来たる文化祭の時に、活動成果として披露するため。もう1つは、僕らの力で世界を手中に収め、この世をマリオネットパラダイスにするためさ! 生物を人形にするのはまだ実験段階だけど、卒業するまでには全ての生物を操れるようになる。そのためにはアラクネの糸と空狐の生命力が欲しい」
悪びれも偽りもせず、さも自分達こそ正義と言わんばかりに、道彦は最終目的である世界征服まで、高らかと自供する。その神経が理解できない私は激しく嫌悪する。
と、同時に、怒りも頂点に達した。ここには、異種族と共存するために、友達になるためにみんな通ってる。だけどこいつは、それをハナから踏みにじるつもりで入学し、在籍してる。そして何より許せないのが、そんな身勝手な理由でレミ達を拉致し、アレクシアと神狐先輩を付け狙ってること。それが何より許せない!
「あんた、前から思ってたけど、性根悪すぎ! そんなあんたなんかに、カスミン達を好きにさせてたまるかぁっ!」
私は爆発させた怒りに身を任せて、カスミン達を助け出そうと跳躍しようとした。




