表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

65/263

自分の国をつくる

 案内されるままに広場に出た。


 広大な草原。

 遠くには校舎やその他の施設が薄く望むことができる。


 アルスが言うには、この草原までもが学園の敷地内らしい。さすがはエリートだけが集う学園だ。この設備だけでも相当の人員と金を使用したのだろうとシュンは思った。


 新入生は全員で二百人近くいるらしい。

 それを四つのグループに分け、ひとりひとり順番にデッドスライムと闘っていく形式のようだ。


 ここでのグループ分けは単なる入学式の席順であり、特に意図はない。よって、シュンとロニンはここでも同じグループに属することになったのだが。


「…………」

 ロニンはさっきからまったく喋ろうとしない。入学式の会場からこの草原に至るまで、終始うつむいていた。


 シュンにも彼女の気持ちはよくわかった。

 ロニンにしてみれば、自分の仲間を手にかけるようなもの。

 人間が殺人を忌避するように、モンスターも同種族を殺害することに抵抗があって当然だ。


 それは生物として当たり前の本能だから。


「……これが、人間の考え方、なんだね」


 ロニンは小さく言った。


「人間はモンスターをとことん嫌ってる。これじゃ……どうやったって、戦いは避けられないじゃない……」


「…………」


 シュンはなにも言えなかった。

 人間とモンスター。

 この種族間で争いが絶えないならば、新たな国をつくるしかない。すなわち、人間とモンスターが共存する、夢のような国を。


 ーーでも、そんなことできるわけねえよな……

 シュンはぼさぼさと後頭部を掻いた。一昨日からどうも、こんな面倒くさい考えが抜けない。


 暗い考えに浸っていると、勇者アルスが声を張った。


「ではこれより試験を執り行う! 各グループの新入生は構え!」


 その声によって、指名されたグループごとの生徒たちが一歩前に出る。彼らには前もって、銅で作成された剣が貸し出されている。


 四人の生徒たちが、緊張した面持ちで、なにもない空間へと剣を構える。

 すると。

 それぞれ生徒たちの眼前の地面に、幾何学模様が浮かび上がった。

 それは空に向けて筒状の光を発しーー生徒たちが瞬きした後には、そこにモンスターが現れていた。


 デッドスライム。

 その名の通り死にかけのスライムだ。


 両目のうち片目には大きな穴が穿たれ、体色も色ずんだ灰色。モンスターのなかでは、ゴブリンに匹敵するくらい弱いとされている。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ