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優しさを増した頭ぽんぽん

 ――ロニンよ。

 ――勇者アルスを倒してこい。

 ――さすれば、きっと多くの者がそなたの実力を認めるであろう――




「無理です。お父様。私には……」


 自分の寝言で目が覚めた。


 はっと意識が覚醒し、周囲を見渡す。

 ふかふかのベッドの上でロニンは眠っていた。


 ーー寝ちゃってたんだ……

 憂鬱な気分を振り払い、窓の外を見やる。


 もう真っ暗だった。

 出歩いている村人はどこにもいない。

 おのおのが自分の家に帰り、明日へ向けて休息を取っているのだろう。


 ーーなのに、お兄ちゃんはどこにいったの……


 やっぱり、彼の言ってた《ちょっとした用》って嘘だったんだろう。


 それにしては長すぎるし、そもそもお兄ちゃんに家族以外の知り合いなんていないはず。


 もしかして、とロニンは思った。

 私に心配をかけさせないために、ひとりでモンスターと戦いにいってない……よね。


 本来であれば、それは私は撒いた種だ。

 父親に命を狙われるのだって、お兄ちゃんには関係ない。


 すべて私の責任だ。

 父親の溺愛に甘えて、鍛錬を怠ったから。

 自分の立場に甘えて、遊んでばかりいたから。

 だからモンスターたちに反感を買われてしまったんだ。


 全部私の責任。なのに、もしかしたら……


 次の瞬間。


 玄関の扉が開かれる音がして、ロニンは反射的に自室から飛び出した。

 そうして来訪者の姿を見たとき、ロニンは心臓が止まるかと思った。


 来訪者は二人いた。

 シュンと……そして、彼に背負われているディスト。


「あ……あ……」


 ロニンは立ち尽くしたまま、なにも言えなかった。

 ーーやっぱりそうだったんだ。


 出来損ないの私を始末するために、ディストはこの村まで……。

 お兄ちゃんは、彼を退治するために……


 しかしながら、当のシュンはなにも言わず、ぽんとロニンの頭に手を乗せた。


「あ……」


 思わず囁いてしまう。

 その手に、さっきまでとは違う優しさを感じたから。


「腹減ったよ。おまえ、メシは作れるのか?」


「う、うん、それくらいは……」


「悪いが頼んでもいいかね。菓子じゃ満足できないくらい腹減った」


「う……うん……」


 返事をしながら、ロニンは背負われたディストを見やる。

 かつての側近は、シュンの背の上ですやすやと寝息を立てていた。


「あー、この馬鹿、話すこと話したら眠りやがったんだよ。このことは追々(おいおい)話すから、とりあえずメシにしようぜ」


「わ、わかった!」


 あのディストが、よもや人間におんぶされたまま寝てしまうとは。

 よほどのことがあったんだろう。

 ロニンは急ぎ足でキッチンに向かい、調理を始めるのだった。


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