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烈日王に極光の歌  作者: ジョシュア
剣の歌
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ドヴェルグの炉(3)

 それからノォトが連れてこられたのは、ドヴェルグの工房だった。細長い路地に、たくさんの炉が並び、職人たるドヴェルグがところ狭しと作業をしていた。

 あちこちから鉄を、青銅を叩く音が聞こえる。熱した鉄を冷やす音、炎が薪を割る音。喧々囂々と響くのはドヴェルグたちの掛け声。熱気が凄まじく、ノォトでさえ汗ばんできた。


「すごい工房だ。そして、ここにいる者すべてが鍛冶師であるというのか」

「そうだ。俺たちは剣の一本を鍛えて、ようやく一人前だと認められる。どいつもこいつも、戦士であり鍛冶師だ」


 エイトリは言った。ノォトは思わず、息を飲む。己もまた鍛冶師だからわかる。ここにいる者たちは皆、並大抵の鍛冶師ではない。長年、この道一本を貫いてきた者たちだ。これほどの鍛冶の腕を持つ者は、養父を含めて片手で数えるほどしか知らなかった。


「それで、魔剣の再生だったか」

「ああ」


 ノォトは頷く。エイトリはふむ、と顎に手をあてた。


「おおよそ、神々の武具をこしらえたのは我らドヴェルグだが、その技術を継承しているのはこの俺と兄貴、そして俺の息子たちくらいなものだ」


 名と共に継承するんだ。エイトリはそう言った。このエイトリは何番目なのだろうか、など考えてしまう。

 二人は一番奥にある炉に着いた。その炉は、ノォトの知っているものとはどこか違うように見受けられたが、細かい違いはわからない。粘土で盛られた山に、細長い溝がある。その下部からは炎がごうごうと盛っていた。尋常ではない熱で、ノォトと養父ブロムが使っているものの比ではないことが伺える。


「さて、 剣を再生させるってのはまずこの炉じゃなきゃできないわけなんだが、その理由はわかるか?」

「折れた剣をつなげることはできない。仮に熱してつなげられたとしても、以前のような強度はまるで失われてしまう。だが、この炉ならどう違うかはわからない」


 かつてノォトも試したことがあった。戦場に出て折ってしまった剣を、どうにか繋げて使うことができないかと考えたのだ。その結果は悲惨なものだった。一振りをした後、相手を斬ることもできずに折れてしまったのだ。


「そうだ。剣は折れてしまえば、元の姿に戻すことはできない。それは絶対だ」


 だが、とエイトリは言った。


「剣は折れても、死にはしねえんだ。この炉を使って、まずはそいつを塊に戻す」

「鉄塊にか? そんなことができるのか……!?」

「ああ。お前たちの炉じゃあ、ぬるくてそんなことできないだろうがな。こいつ、第参魔焔炉ならできる。わざわざ灼熱の国(ムスペルヘイム)から取り寄せた炎を使ってるんだぜ。魔銀だろうがなんだろうが、溶かしてやるよ」


 がはは、と自慢げにエイトリは言った。ノォトは驚きを隠すことができなかった。

 金属を溶かす、それも魔力を帯びたものを。それがいかに不可能なことなのか、鍛冶師でもあるノォトは知っている。そしてこの炉がいかに優れたものか、ノォトには計り知れなかった。


「だが、溶かして固めたままじゃあいかん。そのままじゃ軟らかすぎて、武器としては使い物にならんのだ。それからいろいろと処理をするんだが、そこは俺がやろう。お前が手を加えるのはそいつを形にするところからだ」


 エイトリは言った。おそらく、そこからは自分の知っている剣の製法と同じということだろう。


「なにからなにまで、世話になる」

「一番大切なところはお前がやるんだ。それに、その剣を振るうところまでな」


 そうエイトリは言った。巨人という共通の敵に備えて、人とドヴェルグはいま、結託をしなければならない。己で剣を鍛える変わり者の王子と王は、固く握手をした。


「ノォト、人の王子よ、お前に託そう。あのエルフの嬢ちゃんも口にはしないが、あんたにたくさんのものを託しているはずだ」


 ノォトは頷く。きっとそうなのだろうと思った。大切なことを口にしない彼女は、なんでも自分でやろうとする彼女は、最後という最後をノォトに託しているのだ。それは冷静に考えれば彼女らしくない。けれども、そうするだけの覚悟があるのだろう。

 エイトリはノォトから離れると、剣を作るための材料を集めるべく、周りの者たちに指示を飛ばす。


「根暗野郎共、一世一代の大仕事だ。かつて祖先が神々へ献上した宝を、いまここによみがえらせるぞ!」


 応、と声が響いた。喝采とともに、彼らは各々の仕事を始めた。

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