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BREAK!! (龍輝×薫)Reboot  作者: AKIRA


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8/8

Act5 邂逅__光と影

 ジュニア異種格闘技選手権大会、中等部の部。

圧倒的な速さで対戦相手を「無力化」し、優勝を決めた樹 希は、表彰式の喧騒を逃れて会場裏の非常階段で一人、溜息を吐いていた。


「……また、やっちゃった」


 自分の拳を見つめる希の表情は暗い。勝った喜びよりも、全力で振るえば相手を壊してしまうという恐怖。そして、全力で戦える相手が何処にもいないという、贅沢で孤独な虚無感。


「素晴らしい正拳突きだったわね……純粋な『武』は嫌いじゃないわ。樹 希さん」


不意に頭上から降ってきた凛とした声に、希は弾かれたように顔を上げた。そこには、制服の上から高級なコートを羽織り、取り巻きも連れずに一人で立つ姫神 薫がいた。


「……誰?関係者以外、ここは立ち入り禁止だよ」


希は警戒して立ち上がるが、薫の瞳を見た瞬間、その言葉を飲み込んだ。自分とは正反対の、透き通るような白い肌と優雅な立ち居振る舞い。けれど、その瞳の奥には、希が抱えているものと同じ「周囲との断絶」があった。


「私は姫神 薫。……希さん、貴方の試合は、小学生の頃から欠かさず拝見していたわ。ずっと、貴方に声を掛けたいと思っていたの」

「へっ、あたしの試合を?……ずっと……何で?」


希は驚愕した。自分を「化け物」を見るような目で見る観客席の中に、これほど美しく、自分を肯定するような眼差しを向けていた人間がいたのかと。


「貴方の力は、この狭いコートの上で終わるべきではないわね。……ねえ、希さん、貴方のその拳にもっと相応しい舞台があるとしたら、興味はないかしら?」

「舞台……?それって、プロになるとか、そういうこと?」

「いいえ。もっと残酷で、もっと……そう、私たちの自由を勝ち取るための場所よ。希さん、私の通う学園へ来てくれないかしら?そこには、貴方が全力で拳を振るい、誰かを救うための理由が溢れているわ」


薫は階段を降り、希の目の前に立った。薫からほのかに漂ういい匂いに、希は毒気を抜かれたように立ち尽くす。


「うーんと……じいちゃんが、なんて言うかな?……結構ガミガミ五月蠅いし……一筋縄ではいかないよ?」

「樹 厳三郎さん……貴方のおじい様だったわよね。おじい様なら、私が説得してみせるわ……希さん、私には、あなたが必要だわ。私の隣で、共に笑って共に道を切り拓いてくれる……私の『光』になって欲しいの」


薫はそっと希の手に触れる。希はその冷たいはずの掌に、不思議な熱を感じていた。

これまで、誰も自分にはそんな「期待」をかけてはくれなかった。皆、希の力を恐れるか、期待しすぎるかのどちらかだったから。


「薫さんてば……なんだか魔法使いみたいだね。……あたし、勉強も苦手だし、お行儀も良くないよ?」

「ふふ、……構わないわ。貴方は周りを明るくしてくれる……そこにいるだけで学園も少しは明るくなるはずだわ」

「……明るくね……あたしは照明器具じゃないんだけどさ」


希は苦笑する。


「……分かった。薫さんがそこまで言うなら、あたしも頑張ってみるよ。じいちゃんを説得出来たら、あたし、薫さんの学校に行ってもいいよ」


希が満面の笑みで答えると、薫は満足げに、そしてどこか切なそうに目を言細めた。

これが、厳三郎との密約よりも前。二人の少女が交わした、本当の意味での「最初の契約」だった。


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