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ArcanaReWrite  作者: 上月琴葉
第四部 嵐は黄昏を連れて
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序章 楽園に沈むもの

 東華区の退魔道術には陰と陽の概念がある。


 退魔道士たちは陰の気を持つ魔物を陽の術で祓い、またその逆の符をもって陽の気を持つ魔物を祓う。


 「ああ、今日も、穏やかだ」


 漣と戯れながら珊瑚の角を持つ龍は呟く。


 東華区の南方、波南。手つかずの密林と洞窟、朽ちた謎の古代遺跡。


 対照的に海上に浮かぶ豪華なリゾートホテルや劇場と遊園地、そこへ渡るための港町。


「喜びをもって悲しみを封じる。人が集い、踏み固めるということは、陽の気が集まるということじゃ。


 そしてそれは同時に、その場所に強い陰の気が沈んでいるということでもある、ってレイは言っていた」


 珊瑚龍は辰砂龍が消えた後に生まれたまだ若い龍。だからこそ詳しくは知らないのだが。


「波南には王国があった。そして、四凶との戦いでその王国と龍も滅びた……」


 珊瑚の卵は滅びた王国の地下でずっと守られていたらしい。珊瑚龍は親を知らない。


 雷龍であるレイは何も言わない。長く生きているならば、何かを知っていそうなのにと珊瑚龍は思うが、どこか悲しそうな瞳になるレイを見ていると聞く勇気が持てなかった。


「……ああっ、もうこんな時間!」


 珊瑚龍は人間の姿に変わると、砂浜をあとにして港へと駆けだした。


 ――そうだ、これから船でレイとリエと、お客さんが来るんだ。迎えに行かなきゃ。


 


 見慣れた町並み、潮風の匂い。屋台の喧騒に、波の音。


 強い日差しに影は伸びて、日陰で猫がにゃあと鳴く。


 ハイビスカスにブーゲンビリア。南国の花は鮮やかに。


 


 ――そんな穏やかな日々がずっと続くと、信じていた。積乱雲の向こうに潜む、嵐の気配から目を背けたまま。



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