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地蔵さまは親方が
『梅の花』をあじわっていた年寄はお茶で口をながすと、おやかたが、とうなずいた。
「 ―― 親方がね、ひきとっていったようで、お地蔵さんもよろこんでるだろう」
「親方が?」
眉をひそめたヒコイチに、そうかヒコは知らないのか、とセイベイが背をのばす。
「お地蔵さまも、はじめご神木といっしょにお寺におさめられたんだがね、毎晩、ひどくさわいだようでね」
「・・・・・『さわいだ』?・・・なにが?」
ヒコイチの横の猫が、『ヒコはよお』とがさついた声をだしながら顔をあげた。
『 ―― あの、人足の男を、なんだと思ってんだ?どうしてセイベイのとこにきたと思うよ?』
「ああ?そりゃあ、あれだろよ。あのひとは、ダイキチさんがひろめた通り、ご神木の化身なんだろう?」
それはわかってんだというようにヒコイチはもちあげてかじりとっていた残りの『梅の花』を口へほうりこんだ。




