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梅の花
「ほお、これはまたみごとな」
「 ええ。 こんどのお堀さらいのことで、お上のほうから来たかたが、なんだか、ダイキチさんの正夢のおかげでこちらは目が覚めたとかなんとか、ずいぶんおそれいったみたいで」
こんなりっぱな練りきりあんの『梅の花』をくださったんですよ、と懐紙にのせた上品な赤い菓子をほめた。
そんなもの、はじめてみたヒコイチは、こりゃなんですかい?と自分のまえにおかれた丸い『梅の花』をにらむ。
『 あんこだな 』
こたえたのは、ヒコイチの横でまるくなっていた黒猫だった。




